異世界へはロイヤルカーペットにのって

志麻友紀

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【9】なんで先にそれを言わないんですか!

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「なんと年上だったのか! 俺はてっきり年下だと」

 日本人は童顔に見えるという。
 それを言うなら、リョウはシャルムダーンのことは若いと思っていたが、せいぜい自分と同じぐらいか、二十五歳ぐらいか? と思っていた。
 そこは引き分けというべきか。なにも勝負はしてないけど。

「僕のことをいくつだと思っていたんですか?」
「せいぜい、十五か、十六、十七か」
「はい?」

 いや、それ未成年じゃないか? 手を出せば淫行罪って、この世界じゃ関係ないか。日本だって昔は十二歳とかとんでない歳で嫁入りしたんだし。
 いや、自分は嫁入りしないけど。

「あ、私も救世主様にして王の運命の花嫁様のことを、それぐらいのお歳と思っていました」

 さらにノワルで手をあげて、リョウに追い打ちをかける。
 訂正、日本人は童顔に見えるというけど、冴えないリョウはさらに、それに輪をかけて童顔だった。
 いまいち冴えない自分がモテない理由、その二を思いだした。

『リョウ君といると弟といるみたいなのよね』

 いいなと思っていた可愛い同僚の残酷なひと言よ。彼女は年上のダンディな上司と結婚しましたけど、なにか? 

「残念でしたね。僕はこう見えても、あと三年でもうじき三十の年増ですよ。年増」

 年増を強調して言う。けして、年上のお姉様方をそう思っているわけではない。あしからず。

「いや、リョウは愛らしいしかわいらしい。なにより、俺の最愛なのだ。歳など関係ない!」
「そうです。そうです。年上の妻は金のサンダルを履いても探せという、先達の言葉もあります」

 慌てるシャルムダーンにノワルが援護する。へえ、こっちにもそんなことわざがあるのかと、リョウは思う。
 年上の女房は金の草鞋を履いても捜せ。
 ま、今どきの頼りない日本男児諸君には、強くなった女性がいいのかもしれない。が、そういう強い女性は一人でも生きていけるし、むしろお一人様を満喫していたりするんだよな。

「それで、我が国であるが未曾有の危機にある」
「それはすでにお聞きしました」
「危急の時だ」
「それも数度お聞きしました」
「いや、本当に危急の時なのだ」
「?」

 こほんと咳払いしてシャルムダーンは口を開いた。

「猛り狂った巨大な獣が暴走し、巨大な砂嵐となって、じりじりとオアシスの一つに迫っているのだ。襲われれば被害は絶大だ」
「なんで早く言わないんですか!」

 リョウは立ち上がった。

「ここでのんきにお茶してる場合じゃない。いや、そもそも決闘もさせられましたよね? あれも時間の無駄です!」

 災害? 時には迅速に動き、住民達の安全を確保せねばならない! 獣だから獣害になるのか? いや、砂嵐だから災害だろうか? 

「このノワル相手の犬の決闘が無駄だとおっしゃるのですか? 救世主様にして王の運命の……」
「今は無駄! その長ったらしい呼び方も、急いでいるときには無駄です!」

 ぴしりとリョウが言えば、三白眼の真っ黒な戦士は両手を絨毯について「こ、この私の戦士の誇り高い誓いが……無駄」なんてつぶやいている。
 その姿は哀れだが、今は戦士のプライドよりも、大切なものがある。

「そのオアシスには住民がいるんですか?」
「ああ、キャラバンの中継地の小さな町であるが」

 リョウの問いにシャルムダーンが答える。リョウはさらに表情を険しくして。

「大きかろうと小さかろうと関係ありません。まず住民の安全が最優先です。」
「もちろん民は近くの岩山の洞穴に避難させたと、あの町の神官より水鏡にて報告は受けた」
「命だけではありません。次に彼らの財産も守らねばなりません。町が災害に破壊されたなら、生活の再建だって大変になります」
「今は近隣の神官達や兵士達、魔力の強い住民達総出で結界を張り、砂嵐を留めて時間を稼いでいる」
「だからって、悠長にお茶飲んでいていい理由にはなりません。いますぐに現場に向かいましょう!」

 災害救助は迅速にだ! 

「このノワル、今、猛烈に感激しております!」

 四つん這いで落ちこんでいたノワルが、いきなりガバリと顔をあげて、リョウに向かい叫んだ。黒い眼帯の男がその三白眼のキラキラした瞳で自分見るのは、どうにも違和感ばりばりだ。

「この世界に招かれたばかりだというのに、民を思う慈愛あふれる御心。たしかにそれに比べればこのノワルの矜持などちっぽけなものでした! 救世主様にして王の……」
「だから、今は急いでいるんだ! 長い!」
「はい、リョウ様!」
「それでいい!」

 いや、様付けなのは慣れないけど、また呼び名を訂正する時間だって惜しい。

「民を救うため、さっそく行ってくれるのか! リョウよ!」

 シャルムダーンの言葉にリョウはうなずいて。

「さっそくどころか、遅すぎるぐらいですよ!」

 そう返した。





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