異世界へはロイヤルカーペットにのって

志麻友紀

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【13】ようこそ! ニューカマー!

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 あまりにもまばゆい輝きに、しばらくリョウは目を開くことが出来なかった。

「え?」

 だが、開いた瞬間にさらに大きく目を見開いた。
 目の前にいるシャルムダーンもまた呆然と、自分の身体のあちこちを見ていた。

「これは? 熱いのか冷たいのか分からないほどの痛みが消えてなくなっている?」
「え? え? 傷! 背中の大火傷見せて!」

 背中に回り込んで、シャルムダーンが素肌にまとっていたジレをぐいと引く。そのたくましい肩をむき出しに、布の隙間から背中を見ても、赤銅色の輝く理想の美しい筋肉がついた背中しか見えない。
 というか、この立派な金糸銀糸の刺繍がされたジレも焼け焦げていた。頭にまいた白のターバンもいうに及ばず。その金色の見事なたてがみのような髪だって、半分焼けて無残だったのに。

「綺麗さっぱり傷が治ってる……」
「リョウ、やはりお前は救世主だ!」
「わあっ!」

 ぎゅっと抱きしめられて声があがる。リョウもまた自然にシャルムダーンの背中に手を回して抱きついていた。

「シャルムダーン! よかった! 生きてる!」
「そなたのおかげだ! そなたの口づけから広がった光で、俺は助かった」
「え? え? あれは僕が起こしたの? うんっ!」

 戸惑うリョウの唇をシャルムダーンの情熱的な唇が塞ぐ。だけでなく、いきなり舌を絡められて吸い上げられて、クラクラした。
 二十七歳童貞。ファストキスもただいまならば、舌を絡めるようなディープなのも、初めてだ。相手はいずれも、筋骨隆々な砂漠の王様で男。
 でも、なんかいいかな? と思う。
 シャルムダーンの命が助かったんだし。
 ふわふわしてキスは気持ちいいし。
 こっちの世界に来てから着たきりのワイシャツの中に手を入れられて、背中のくぼみをなぞられて、なんかゾクゾクしちゃって。

「あ……」

 なんて声をあげてしまった。そこにシャルムダーンが、ワイシャツを脱がそうとして、小さなボタンに苛ついて、ばりばりと前を引き裂いて、白いプラのボタンがとんでいったけど。
 それも真っ平らな胸を大きな手が撫でるのに目を細めて。
 ま、いいか……と。

『なにすんのよ! この若造ガキ! あたしのほうが、攻めタチに決まってるんでしょうがぁああああああ』

 突然頭の中に響いた声に、リョウは我に返った。そこにシャルムダーンが自分の乳首に吸い付こうとしているのが見えて、ぐいとその端正な顔を押しのけた。

「男の乳首吸ってどこが楽しいんですか!」
「男ではなく、リョウの美しい乳首だ!」
「美しくありません!」
「なにをいう! この果実のように輝いている乳首をお前は否定するのか!」
「乳首、乳首、連発するなぁああ! このたわけぇえええ!」

 リョウの手に閃光ともに現れた黄金のハリセンで、馬鹿殿じゃない馬鹿王の頭を張り飛ばした。馬鹿王はキラキラ金色のたてがみみたいな髪をなびかせながら吹っ飛んでいった。

『もう! なんでよ! ちょっとイイ子とイイ雰囲気になったと思っていたのはアタシだけで、酷い裏切りにあって闇堕ちして、光が見えて正気に戻ったら、ちょっとどころかど真ん中好みのガチムチイイ子がいて、大好きって言ったら、相手も大好きって言ってくれたのに、なんで押し倒されているのよぉおお!』

 と自分を正気? に戻してくれた、さっきから頭の中に響く声。さらにこの状況を見事に説明口調で話してくれている相手にずんずんとリョウは歩み寄る。
 イスラフェに押し倒されている。闇のブレスで黒焦げになった金竜の傷は、シャルムダーンと同じく綺麗に治っていた。
 そして、押し倒されている相手もまた。闇をまとった正体不明の姿ではない。
 キラキラ輝く、美しい。

『だっからぁ、首を噛まないでよ! それは雄竜が雌竜にする求愛行動じゃない! あたしは、ガチムチの子を押し倒してヒンヒン啼かせるのが趣味なのよ! だから逆、だから逆なのに! ……ああっ! くやしい、くやしいけど、お首を噛まれて感じちゃう!』

 オネェ口調の銀竜だった。

「いくら好きだからといって、嫌がる子を押し倒すのはいけません!」

 リョウはシャルムダーンと同じ、金色の目をギラギラ輝かせているイスラフェルの頭を、金色のハリセンでぶっ叩いた。
 するとイスラフェルの巨体もシャルムダーンと同じ方向に吹っ飛んでいった。
 金色のハリセンの威力は絶大だ! 
 リョウが「成敗……」とつぶやければ、黄金のハリセンは役目を終えたとばかり消えた。
 たぶん、これも聖剣? の一つなんだろう。ハリセンなんで聖剣なんだろうか? 聖なるお道具? 
 聖なるが精なるだったら、お道具って、や~ん卑猥! 
 なんてリョウは口には出さない。自分の品格が疑われそうだ。
 そして、頭の中で今も。

『ひどい、ひどい、ひどいわぁ』

 なんて響いている声の影響をちょっと受けて、自分もオネェ口調になってしまった。
 銀竜はリョウの足元に跪くように、頭を垂れた。

『主! 主! 主! あなたの光が見えたから、あたし、正気に戻ることが出来たの! あたしの名は、アズラエル! あなたの竜よ!』

 オネェの銀竜はそう名乗った。




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