落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~

志麻友紀

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【11】シティにて その5

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「“中型犬”? “狼”ではなく?」
「ああ、それから一晩で“巨狼”に進化したと記録にある」
「…………」

 アニマルはセンチネルやガイドの能力と成長を現すものだ。だから、一気に幻想生物に成長するのはおかしい話ではないけど……。

「そして、それに伴う性格の変貌だ」
「変貌?」
「ああ、学問に真面目で“気弱”な三男坊が、粗暴と思えるほど尊大になったとな」
「…………」
「とはいえ、それも自分のアニマルが幻想種となった。その若さゆえの“おごり”ととらえられないわけではない」

 たしかに幻想種のアニマルは貴重だし力も強い。実際、スコルは新入生でありながら、大演習でウォーダンに次ぐ成績をあげたわけだし。
 とはいえ、得点の高い魔獣が出るのがわかっているかのようなあの動きには、疑問が残るけど。

「ネラとは中等部から一緒だと聞きましたけど、知っていたんですか?」
「顔と名前ぐらいはね。彼は男爵位を持つ貴族で、ベーメン商会の当主だ」
「へえ、ベーメン商会」

 大陸全土に広がる貿易会社だ。シティにも大きな建物がある。

「え? 当主って?」
「そうだ。先代当主が早世してな。彼は三年前に当主となってる。もっとも経営は幹部達が代行してるようだが」
「…………」
「それから一年前に、彼のアニマルもただの黒猫から猫又に変わったという」

 たしかにネラの黒猫もまた幻想種の猫又だ。

「もう一つ、当主となったばかりはまだ若年で、成績優秀ではあったが、いささか“気弱”で商会の経営に関しても幹部達のいうがままだったという。それが最近は経営にも口を出す、強気でしたたかな性格になったともな」
「……それってスコルと似てません?」

 アニマルの幻想種への成長と、そのマスターの性格の豹変。
 「いずれにしてもあの二人の動きには要注意だな」とウォーダンの言葉に、フェリックスはうなずいた。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 毎夜の習慣となっている、プリンセスの塔の転送陣まで、ウォーダンがフェリックスを送る。ごく自然におやすみのキスをフェリックスの丸い頬へとして、彼がいつまでも慣れない態度ではにかんだ笑顔で「おやすみなさい」と手を振って、転送陣の向こうに消えるのをウォーダンが見送った。
 フェリックスが消えたあとに、彼の後ろに二つの人陰があらわれる。ハートリーとメディだ。

「スコルとネラの監視を強めますか?」

 と訊ねたのはハートリー。メディは「元からつけてありますけどね」と答える。

「とはいえ、巨狼のセンチネル相手では難しい」

 センチネルは五感に優れている。監視の目も近づきすぎれば感づかれるということだ。さらに幻想生物持ちの高い能力値では、その難易度はあがる。

「ならばガイドのネラを……となりますが、こちらのほう色々やらかすスコルと違って用心深い」

 ふう……と息をつくメディに「すまない」とウォーダンが謝る。

「キングがいたならば、この学園をすべて見渡す“目”で真実をすぐさまに暴いただろうに。ここにいるのは不完全なプリンスだ」

 「それはあなたのせいではありません!」とメディが強く言う。それにハートリーが「ご自分をお責めになるのはおやめください」と告げる。

「今はなきキングもクイーンも、少しも後悔などしてらっしゃいません。すべては生まれながらのプリンスたる、あなたに未来を託すため」
「……調査を続けてくれ。演習でSS級の魔獣が現れたことも、いまだ原因不明のままだ。どうにも学園が騒がしい」

 ウォーダンの言葉に二人が去る。誰もいない転送の部屋に「生まれながらのプリンスか……」とウォーダンの声が響く。

「なにが生まれながらなものか……俺は……」

 そんなウォータンの足に無言でロンユンがすり寄る。それに彼は「お前のせいじゃないよ」と苦笑する。

「“雛”のままなのは、君のチィオだけじゃないんだ……フェリ……」



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