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番外編 嵐のロイヤルファミリー
【8】地雷系王女
ダランベルの戴冠一周年とアルバ誕生一歳の祝祭の前日。
王宮内にある転送の間にて、準礼装をまとったダランベルにハル、それにアルパの三人は賓客を迎えていた。
ハルは身重ということで椅子に座っていたが、その事情はよくわかっている来賓達は、口々に第二子の懐妊を言祝ぎ、大勢の人に会っても物怖じ為ずに、無邪気な姿をみせるアルパに目を細めていた。
「こちらが神童と名高い王子ですな」
「小賢者様お目にかかれて光栄ですわ」
紳士も淑女もみなアルパに丁寧に挨拶をしてくれる。そのことにハルもまた嬉しかった。
転送の予定は昼過ぎ。
そのあとに歓迎を兼ねてのお茶会となるはずだった。
さきに来賓は茶会の会場である中庭へと案内されて、軽食に菓子を楽しんでもらっている。
だが、ダランベルとハルは転送門を移動することが出来なかった。
賓客が一組遅れているのだ。すでにすべての招待客は茶会の会場に移動している。
ただこの一組が、隣国のガルティア王国であった。ウェルテア王国としても無視出来ない相手だ。
そこにようやく、転送門が光って一行が現れた。
護衛の騎士に侍女達に囲まれるようにして、現れた姿にハルは思わず目を見開いた。
「とんでもなく遅れて申し訳ありません。陛下が今朝、急に病を発しまして、急遽、王女であるわたくし、ティアが代理にて参りました」
ふわふわ巻き毛のストロベリーブロンドのお姫様は、可愛らしく小首を傾げてそう言った。声といいポーズといい、なにかあざとく感じるのは気のせいだろうか?
そしてその髪もドレスもリボンとレース一杯のパステルカラーもまぶしいものだった。外交の場でまとうならばもう少し落ち着いた色調にするべきだろう。
つまりは場違い。
「大変な中ようこそいらしてくださった、ティア王女。サイラス王のご容態は?」
差し出されたピンク髪の姫の手に、ダランベルが恭しく口づけるふりをする。騎士の礼をする。
唇はけっして触れさせない。それが最上級の礼儀だというのに、なぜかティア王女が軽く不満げに唇を一瞬尖らせた。
ようにハルには見えた。
「いえ、父はただの食あたりですわ。今日という大事な日があるのに、好物の牡蠣をつい食べ過ぎたようで、本当に呆れたお父様」
ティア王女はわざとらしく肩をすくめる。公の場、まして隣国の王相手ならば、父親といえど陛下と呼ぶべきなのに『お父様』とは。
砕けた態度で親しみを持たせようというのもあるかもしれないが、初対面でこれはあまりに礼儀がなってない。
「大公殿下におかれてもご機嫌麗しゅうございます」
ティア王女はハルに向き直ると、背筋を伸ばし軽く膝を折る見事な貴婦人の礼を見せた。その表情はダランベルに見せていた朗らかなものではなく、口許からも笑顔が消えていた。
「ティア王女、国王陛下の代理としてよく参られた。身重ゆえ、このように座ったままで失礼する」
ハルが答えたが、ティア王女は腕の中のアルバを一瞥もせず、挨拶もしなかった。アルバも他の来賓達にはニコニコしていたのに、ティア王女が来たとたんそっぽを向いて無視していたのだから。
「あら! わたくしったら、本当に大変な遅刻をしてしまって、もう皆様居ませんわ」
ティア王女はたった今、気付いたとばかり自分達一行以外、誰もいない転送門の間の広い空間を見回した。
「皆様もう、お茶会の会場にいらっしゃいますわね。陛下もわたくしと御一緒に……」
そう言って、ティア王女はダランベルの腕に手を掛けようとした。ダランベルはそれをさりげなくすいっと避けた。
「ティア王女をご案内しろ」
近くに控えていた侍従に命じる。同時にダランベルは椅子に座るハルに手を差し出す。ハルはそばに控えていた乳母の手にアルバを預けて、ダランベルの手をとった。
ティア王女はその様子を不服そうに見ていたが「こちらへ」と案内の侍従達に促されて、茶会の会場へと向かっていった。
「やれやれ、わざと遅刻してやってきておいて、勇者王の印象に残り、さらにはこの後のお茶会も一緒に入場するつもりだったか。なかなか計算高い姫君だな」
ティア王女の姿が見えなくなったあと、ハルが告げる。あの分だと父王の病気も本当かどうか疑わしい。
「そのわりには、ずいぶんとわざとらしいな」
ダランベルが不快そうに眉をひそめる。
「可愛らしい姫君ではないか?」
ああいうあざといのが良いっていう男も多いことを、ハルは社会経験で知っていた。
正確には顔さえ可愛ければ、騙される愚か者共がなんと多いことか。
「あなたは、あの王女が可愛らしいというのか?」
ダランベルは明らかに気分を害したという表情だ。いや、これは嫉妬だな。誰に対してって、ハルがティア姫を褒めたことに対してだ。
「顔と声だけはな。だが、俺もああいうわざとらしいのはゴメンだ」
とっくに思い出の彼方ではあるが、どことなく死んだ大妃の若い頃を思い出させる。自分の容姿と男を惹き付ける可愛らしい態度が武器になると、わかっている女だ。
「私にとっては、あなたが一番可愛らしい」
「だから、お前の目は節穴だっていうの」
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