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【4】今すぐ結婚って!?
なにが“めでたい”のか。バカから解放されたのは、たしかにめでたいのかもしれないが。
「そこであなたにあらためて申し込みたい、アラン・リゥ。私と結婚の契約を結んでいただけせんか? あなたの婚約者として名乗りをあげたい」
「はぁ?」
これにアランは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。婚約“解消”された直後に、求婚されるなんて普通思わないだろう?
さらに“天敵”だと思っていた、この鋼鉄宰相に。
そういえば、この若き宰相はいまだ結婚してないのだった。顔の表情筋が死んでいるのはともかく、顔も血筋も家柄も、地位も財産も申し分ないというのに。
「婚約を“破棄”された身のわたくしを“拾い上げて”くださるなんてずいぶんと御奇特ですこと。
ですが、その婚約も一旦“お預かり”になっておいて、また“解消”されるのではないのですか?」
アランとしてはグレームが自分の身を“預かる”といった言葉にひっかけた嫌みだった。
いや、そうとしか思えない。
この場はバカ王子ギャスパーの暴走と尻拭いのためにアラン・リゥとの婚約を“形式上”したうえで、ほとぼりが冷めた頃になんやかやと理由をつけて婚約解消するつもりだろう。
どう考えたって、この鉄仮面宰相が自分に本気で求婚してるなんて思えない。
アランの言葉に父のピエールも気付いたのだろう。「そ、それは困りますぞ!」と声をあげる。
「二度もの婚約解消など、うちの息子にが……」
まあバカ王子とはいえ王太子殿下との婚約解消だって、アランにとっては大きな“疵”なのだ。グレンヴィル侯爵家の息子としては、少しでもよい相手と婚姻を結びたい。
それからすればこの王国の王太子は申し分ない“身分”であったのだが、いかんせんバカすぎてアランとの相性は最悪だった。
それからすると、目の前の男も申し分ない条件ではある。王族である公爵であり、この国の宰相だ。
ただし、その求婚が本気なら……であるが。
「では婚約ではなく、いますぐにでも結婚いたしましょう」
「「「はぁ!?」」」とアランだけでなく、今回は父ピエールに、ギョーム王もまた同じ驚愕の声をあげた。鋼鉄宰相はニコリともせずにいった。
「王宮の聖堂をお貸しいただけるならば、みなさまの目前でいますぐでも永遠の誓いを立てましょう」
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
“婚約破棄”ではなく“婚約解消”でうやむやにしたいギョーム王と父ピエールと、なにを考えているかわからない宰相グレームの利害? は一致した。さっさとこのやっかいごとを片付けてしまうおうとばかり、アランは即刻グレームと結婚することになった。
家長の権限が強い貴族社会だ。父ピエールが承知したうえに、国王ギョームの命令とあらばアランには逆らいようもない。
結婚式のための白の盛装に身を包む余裕などなく、夜会服のままアランは黄金の祭壇前に、グレームと並んで立っていた。夜ということで水晶のシャンデリアに照らし出される聖堂の雰囲気だけは幻想的なものだ。
夜会に参加していた高位の貴族達が参列の席に居並ぶ。その最前列には国王ギョームに父ピエール。それについさっきまで婚約者であった、ギャスパーの姿もあった。
腕にくっつけていたジル男爵令息の姿はない。さすがに男爵令息は聖堂に入れなかったのだ。さっき入り口で「ジルにもあの冷血の首に結婚というの輪がはめられるのを見せてやるのだ!」とバカ王子が騒いではいたが。
夜会に参加していた副神官長が婚姻の儀式の主祭を執り行うこととなった。公爵である宰相グレームと侯爵令息であるアランとの婚姻の儀式となれば、本来ならば神官長が行うところだが、彼は高齢のためにとっくに就寝の時間である。ここでご老体をたたき起こすのは忍びない。
シャンパンとワインですっかり赤ら顔の副神官長の顔が、蝋燭のゆらゆら揺れるあかりに照らし出される。祭壇の前での文言を告げるが、そのかかる息が酒臭いのにはいささか参った。それでも涼しい顔で誓約書にグレームの署名の横へ同じく自分の名を書く。
グレームの署名は力強く美しく、本人の教養と深い知性が感じられた。その横にアランの流麗な署名が並ぶ様は、文字だけならば満足できるものだった。
ここにあのバカ王子のひょろひょろとした、ミミズののたくったような署名が並ぶのを考えれば、それだけでもこの茶番のような結婚式のほうがマシに思えた。
「では誓いの口付けを」
副神官長の言葉にアランは我に返った。
そうだ。これがあった……と。
「そこであなたにあらためて申し込みたい、アラン・リゥ。私と結婚の契約を結んでいただけせんか? あなたの婚約者として名乗りをあげたい」
「はぁ?」
これにアランは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。婚約“解消”された直後に、求婚されるなんて普通思わないだろう?
さらに“天敵”だと思っていた、この鋼鉄宰相に。
そういえば、この若き宰相はいまだ結婚してないのだった。顔の表情筋が死んでいるのはともかく、顔も血筋も家柄も、地位も財産も申し分ないというのに。
「婚約を“破棄”された身のわたくしを“拾い上げて”くださるなんてずいぶんと御奇特ですこと。
ですが、その婚約も一旦“お預かり”になっておいて、また“解消”されるのではないのですか?」
アランとしてはグレームが自分の身を“預かる”といった言葉にひっかけた嫌みだった。
いや、そうとしか思えない。
この場はバカ王子ギャスパーの暴走と尻拭いのためにアラン・リゥとの婚約を“形式上”したうえで、ほとぼりが冷めた頃になんやかやと理由をつけて婚約解消するつもりだろう。
どう考えたって、この鉄仮面宰相が自分に本気で求婚してるなんて思えない。
アランの言葉に父のピエールも気付いたのだろう。「そ、それは困りますぞ!」と声をあげる。
「二度もの婚約解消など、うちの息子にが……」
まあバカ王子とはいえ王太子殿下との婚約解消だって、アランにとっては大きな“疵”なのだ。グレンヴィル侯爵家の息子としては、少しでもよい相手と婚姻を結びたい。
それからすればこの王国の王太子は申し分ない“身分”であったのだが、いかんせんバカすぎてアランとの相性は最悪だった。
それからすると、目の前の男も申し分ない条件ではある。王族である公爵であり、この国の宰相だ。
ただし、その求婚が本気なら……であるが。
「では婚約ではなく、いますぐにでも結婚いたしましょう」
「「「はぁ!?」」」とアランだけでなく、今回は父ピエールに、ギョーム王もまた同じ驚愕の声をあげた。鋼鉄宰相はニコリともせずにいった。
「王宮の聖堂をお貸しいただけるならば、みなさまの目前でいますぐでも永遠の誓いを立てましょう」
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
“婚約破棄”ではなく“婚約解消”でうやむやにしたいギョーム王と父ピエールと、なにを考えているかわからない宰相グレームの利害? は一致した。さっさとこのやっかいごとを片付けてしまうおうとばかり、アランは即刻グレームと結婚することになった。
家長の権限が強い貴族社会だ。父ピエールが承知したうえに、国王ギョームの命令とあらばアランには逆らいようもない。
結婚式のための白の盛装に身を包む余裕などなく、夜会服のままアランは黄金の祭壇前に、グレームと並んで立っていた。夜ということで水晶のシャンデリアに照らし出される聖堂の雰囲気だけは幻想的なものだ。
夜会に参加していた高位の貴族達が参列の席に居並ぶ。その最前列には国王ギョームに父ピエール。それについさっきまで婚約者であった、ギャスパーの姿もあった。
腕にくっつけていたジル男爵令息の姿はない。さすがに男爵令息は聖堂に入れなかったのだ。さっき入り口で「ジルにもあの冷血の首に結婚というの輪がはめられるのを見せてやるのだ!」とバカ王子が騒いではいたが。
夜会に参加していた副神官長が婚姻の儀式の主祭を執り行うこととなった。公爵である宰相グレームと侯爵令息であるアランとの婚姻の儀式となれば、本来ならば神官長が行うところだが、彼は高齢のためにとっくに就寝の時間である。ここでご老体をたたき起こすのは忍びない。
シャンパンとワインですっかり赤ら顔の副神官長の顔が、蝋燭のゆらゆら揺れるあかりに照らし出される。祭壇の前での文言を告げるが、そのかかる息が酒臭いのにはいささか参った。それでも涼しい顔で誓約書にグレームの署名の横へ同じく自分の名を書く。
グレームの署名は力強く美しく、本人の教養と深い知性が感じられた。その横にアランの流麗な署名が並ぶ様は、文字だけならば満足できるものだった。
ここにあのバカ王子のひょろひょろとした、ミミズののたくったような署名が並ぶのを考えれば、それだけでもこの茶番のような結婚式のほうがマシに思えた。
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副神官長の言葉にアランは我に返った。
そうだ。これがあった……と。
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