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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【2】王子様とおじさんの日常※ その1
しおりを挟むなんでもやる課というのは、文字通りなんでも引き受けるという意味だ。ただし犯罪に関わることは除外であるし、コウジが本当に困っている案件を見極めるという条件付きだが。
つまりは御手伝いするのはおじさんのきまぐれということになる。
「しっかし、開いてみたものの。誰も相談者がいないんだな。これが」
「初日はただ机に座っているだけだったぜ」とコウジがぼやけば「当たり前よ!」とシオンが呆れたように腕を胸の前で組む。
「誰が序列2位の“英雄”の“盟友”に子猫探しの“雑用”なんて頼めるのよ!」
英雄とはジークのことで、彼は災厄を倒して三王子と呼ばれる前から、辺境に出没するマモノを退治して回っていた。“辺境の英雄”と呼ばれていた不遇の第9王子は、いまや序列2位の国の英雄だ。
そして、そのパートナーであるコウジもまた“英雄の盟友”と呼ばれていた。可憐な魔法少女ではないおじさんには、たしかに運命の王子様のパートナーよりこっちのほうがしっくり来る。
「みんな遠慮しなくていいのにな。おじさんは親しみやすいキャラクターなのに」
「あなたのどこが親しみやすいのよ!」
キレ続けるシオンに「お茶の時間ですよ」とワゴンをおしてやってきたのはマイアだ。ピート王子の慈善活動を手伝うかたわら、彼女はこうしてコウジの助手?のようなこともしてくれていた。昨日もそれで一緒に街に出たのだが。
執務机の前にあるちょっとした応接セットのテーブルにマイアがお茶とお菓子を並べる。「さあ、シオンちゃんも」とうながされて、コウジの座る執務机の前に仁王立ちだった彼女は、そちらに移動する。
ツンデレ少女のシオンだが、明るく朗らかでちょっと天然なマイアの言うことにはわりあいにしたがうのだ。彼女の嫌みも、マイアのニコニコ顔に拍子抜けするというのもあるだろうが。
コウジも執務机から、ソファーに移動してピンクのマカロンをつまみながら。
「しかたねぇから、街へ直接行って困ってることはないかと聞いた訳よ」
「……それで昨日の子猫の保護?」
シオンが香り高いお茶を一口のんで、じとりと目の前のコウジを見る。
「ああ、ピィピィ泣いてる少年に尋ねたら、子猫ちゃんが木の上から一晩降りてこねぇって言うから」
「そのまえは大荷物を抱えて立ち往生していたお婆さんを、家に送ったんだったわね」
「おじさん、細いけど意外に力持ちなんでな」
「そのさらに前日は、たしか詰まった煙突を直したんでしたっけ?」
「ああ、じいさんが夜はまだまだ冷えるから寒くて仕方ねぇってな。
驚いたことになんと煙突には、小物のマモノが詰まっていたんだぜ。災厄が祓われたとはいえ、ああいう小さいのはまだまだ残っているからなあ」
「おかげでスーツ一つ真っ黒にしてダメにして、ケントンさんに怒られたんだよなあ」とコウジはぼやく。
ケントンとはジークの館の老執事のことだ。コウジのスーツやシャツをいくらしっかりアイロンがけしても、コウジが着た途端にくたびれることをいつも嘆いている。すまん、いくら凄腕の執事でも、おじさんのスーツがくたっとなるのは仕様だ。仕様。
「スーツのことなんてどうだっていいわよ!だいたい、コウジさん、あなたどうしてまだその真っ黒なスーツのままなのよ!」
災厄を打ち倒したいまシオンもマイアも、魔法少女のミニドレスを脱いで、こちらの世界の服を着ている。が、コウジは確かに黒いスーツのままだった。
「俺にこちらの世界のお貴族様のぴらぴらの服が似合うと思うか?」
「ジーク・ロゥ殿下とそろいの軍服はどうしたのよ?」
「あんなの日常的に着るもんじゃない。おじさんぐらいの歳になると肩こりが酷いの」
そこに空気を読まないマイアが「シオンちゃん、このお芋のプリン美味しいです」と言う。シオンも一口食べて「確かに美味しいわね」と答えて、ハッ!と目を見開き。
「だから、今はスーツやプリンの話じゃないの!
コウジさん!あなたは三王子のパートナーで、国の英雄と呼ばれるジーク・ロゥ殿下の盟友と呼ばれる人なのよ!
その自覚を持ってちょうだい!」
ぴしりと鼻先に指をさされて、告げられたのだった。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「『自覚を持て』って言われてもなぁ……」
くわえ煙草でぱっかぱっか……とコウジは馬を歩かせる。隣で同じ黒い馬の首を並べているのは、ジークだ。
馬に乗ろうが椅子に座ろうが猫背気味のコウジに対して、こちらはぴんと姿勢正しく端正だ。見慣れているはずなのに、結構な確率で黒の銀の飾りのその軍服姿に見とれてしまう。
「では、私の仕事を手伝うか?」
「シオンちゃんやマイアちゃんみたいにか?お前のお仕事ってのは軍人相手だろう?」
シオンのパートナーの王子であるコンラッドが行政執行官。ピートが慈善事業を受け持っているように、ジークは現在、軍事最高顧問として軍の采配を受け持っている。災厄が倒された今、辺境のマモノが凶悪化したという知らせなく平和そのものではあるが。
「ロンベラス将軍や将校達とも毎日会うな」
ロンベラスはこのフォートリオンの国軍のトップに立つ将軍だ。国の防衛の仕事となれば、そりゃ軍のお偉方とだって話をするだろう。と、いうより彼らが仕事仲間だ。
「そんななか、俺だけ一人、スーツ姿って訳にはいかないだろう?」
シオンやマイアが足を隠すロングスカートやドレスをまとっているように……だ。魔法少女の足を出すミニドレスは魔法少女だから許されるのであって、現代日本よりは時代が遅れているこの世界では、淑女は足を隠すのが普通だ。
それからすると別に軍人さんに囲まれても、おじさんはスーツ姿でもいいのか?と思うが。
「私と揃いの軍服はあなたに似合っているのに」
「肩が凝るから毎日は嫌だ」
コウジは馬の背でプィ……とそっぽを向く。軍服が嫌だから、なんでもやる課を作ったなんて聞いたら、シオンはよけい目を剥くだろうか?
「それにまあ、俺は軍にはあんまり関わりあいたくない」
これはおじさんの設定だ。特務部隊の傭兵あがりって、おいおい平和な現代日本だぞ!と思いたいが、なにしろこのおじさんの生きてきた世界の中目黒は修羅の国だったので。
しがないコンビニのバイトだった二十二歳の男の記憶はあいまいなのに、戦場の記憶は鮮烈って神様はどんな調整したんだよ!と思うが。
しかし、そっちの経験のほうがいまやコウジの血と肉と骨を成しているようなものだ。
だから、あまりお偉い軍人には関わり合いたくない。奴らは机に座ったまんま、兵士を死地に送るのが仕事だ。
それをいうなら、いまやそれを指揮しているジークはどうなんだ?となるが、だからこそ自分が内側からではなく外側から見る目が必要だとコウジは思っている。
ジークが道を誤るなんて思ってないが、それでもこのおじさんの意見が必要な時もあるだろう。
さて、ジークはその軍のお仕事を、コウジはなんでもやる課で今日も机に座って茶菓子を摘まむのみだったが、宮殿から邸宅の行き帰りは、このところ馬車ではなく馬だ。
ひょいと乗ってみた馬にコウジが意外と乗れたことがある。それに馬車の箱に押し込められて外をみるより、こちらのほうが性に合っている。
もちろん用心のための護衛の魔法騎士が二人、後ろからついてきてはいるが。
そもそも、最強の魔法騎士たるジークとその盟友を襲う馬鹿がこの国にいるのか?と思いたいが。
王宮の敷地をぬけて、王都郊外の邸宅へと続く、真っ直ぐな石畳の並木道にさしかかったとき、ちりりと首の後ろあたりにコウジは視線を感じて、無言で目配せすると、ジークもこちらを剃刀色の瞳でちらりと見た。
後ろで護衛している魔法騎士達はまったく気づいていない。それほどの気配だ。これはその手の間諜だなと、コウジは思う。
それもこのところ毎日だ。
しかし、そんなことをおくびも出さず、コウジは「今日の夕飯はなんかな?」とジークに話しかけたのだった。
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