どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

文字の大きさ
102 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【20】決戦 その2

しおりを挟む
   



 相変わらず、双方一歩も譲らず、攻防はめまぐるしく移り変わる。コロシアムを縦横無尽に駆け、宙へと飛ぶ。上空で槍と槍の獲物が交わる。雷光と闇の閃光が衝突した爆発が起こり、二人ともがその衝撃で跳ね飛ばされてコロシアムの壁に激突した。
 それにシオンとマイアが息を呑んでジークを見つめるが、コウジは涼しい顔で壁にめり込んだ双方を眺める。けろりとした顔で二人とも飛び出して石畳の床に着地すると、槍を今度は剣にもどして再び戦い始めた。

「ダイヤモンドより硬い結界の鎧を双方まとっているんだ。あの程度へいちゃらだよ」

 青くなってるお嬢ちゃん二人に解説でもないが、コウジは話す。
 逆にヤバいのは壁に二つ穴の空いたコロシアムをこれまた一瞬で修復したアンドルだろう。肩で息をしている彼にアルタナ女神が、ちらりと冷ややかな視線を向ける。これぐらいでへたばっているの? と言いたいのだろう。

 だが、コロシアムに修復出来ない大穴が開く前に決着はつくだろうとと、コウジは見ていた。
 相変わらず目にも止まらぬ剣戟を繰り広げる勇者と魔王の攻防は平行線に見える。が、コウジにはわかっていた。

 わずかにジークの光の力が、フィラースの闇を上回り始めている。

 始めに光があったのか闇があったのか。光があるからその影として闇があるのか……なんて中二病の文句だが、なるほど光の勇者に魔王は必ず敗北するはずだと思う。
 なぜなら光は闇を切り裂くが、闇は光を覆い隠すことは出来ない。ならばどれほど魔王の力が強かろうと、勇者の光は魔王を最後には必ず貫く。

 その強大な勇者の光が魔王を倒した瞬間に、内包する絶望を思い出して一気に暗転して闇へと変わると……そこまで企んだそのときの神の考えの底意地悪さには腹が立つが……それはそれとして。
 フィラースも自身の闇が、ジークの光に少しずつ圧され始めたことに気がついたのだろう。その剣の筋にわずかな焦りが出た。

 そして、それを逃すジークではない。
 黒い聖剣が深紅の魔剣を弾き飛ばし、フィラースのそののど元に、切っ先が突きつけられる。

 激しい勝負は一瞬にしてついた。一瞬、時が止まったようになったコロシアムに、フィラースの声が響く。

「どうした? トドメを刺さないのか?」

 勇者たるジークが魔王であるフィラースを倒せば、今度はジークが次の魔王となるための、長い眠りにつく。
 次の魔王の眠りとともに、魔界はこの世界を離れて次元の海を漂う。次の世界に巡りつくのはまた百年以上の月日がいるだろう。
 そこでまた召喚された勇者に魔王は倒される。

「勇者が魔王を倒し、勇者が魔王となる。その堂々巡りの繰り返しを俺達はするつもりはねぇよ」

 無言でフィラースに剣を向けるジークに変わって、コウジが口を開く。

「それで、一騎打ちに負けた私に大人しく、この世界から手を引けと?」
「そう願いたいものだけどなぁ」

 のど元に剣を突きつけられてなお、余裕で微笑むフィラースに、コウジもまた煙草をくゆらせて、口の片端をつり上げる。その顔をじっと見つめてフィラースが口を開こうとした、そのとき。

 上空に浮かぶ魔王城から、ギラリと何かが光った。

 あれは……と思う。モルガナの大神殿を一瞬にして炎に包んだ魔道兵器だ。いきなり上空に現れた黒い城から放たれたそれは一撃で国の中枢たる宮殿や大神殿を破壊してきたのだろう。
 モルガナの神殿の最後を聞いたフィルナンド王はだから王都から人々を避難させたわけだが。

 さすがにフィラースを巻き込むわけにはいかないのだろう。砲撃の規模は小さいがコロシアムの半分は吹っ飛ぶだろうとコウジは瞬時に計算した。
 ジークのみならず後ろの観客席にいるフィルナンド王達に直撃だ。その彼らを守ろうと、フィラースが跳んで離れたように、ジークもまた同時に跳んでフィルナンド王達の前に立つ。己のまとう鎧の結界で、この砲撃の直撃を耐えようというのだろう。

 が、そのジークの前に“飛んで”飛び出したのはコウジだ。あの魔王城の玉座の間と同じく、両手を広げて自分の身体で砲撃から、後ろの彼らを守ろうとする。

「コウジ!」

 ジークが叫んでその“浮かぶ”コウジの腹に手を回す。抱きしめる。
 直後、業火の砲撃が彼らを襲う。深紅の炎が二人を一瞬包むが、それは光と闇の螺旋が渦巻く柱によって拡散する。その渦が天を貫く。

 あまりのまばゆい閃光に、後ろにかばわれたフィルナンド王達は目を思わず細めて、そして光が消えたその一瞬後。

「ジーク・ロゥ! コウジ……?」

 フィルナンド王の呼びかけの語尾が疑問形になったのは仕方ない。

 自分達に背を向けるジークに後ろから抱かれたコウジの背には、漆黒の翼があった。黒でありながら、キラキラと黄金の光を放つ。
 そして、振り返ったコウジは。

「は、恥ずかしい!」

 背中の翼をばさばさ言わせながら、コウジは叫び、ジークの胸にぐりぐりと頭を押しつけながら。

「こんなおじさんの背中に翼があるだなんて、秘密がみんなにバレちまった!」
「大丈夫だ。あなたも翼も綺麗だ」
「それが慰めになるか! それに俺に関してお前の目は節穴どころか、鍋に空いた大穴だからな!」

 「お前は俺がミジンコだっていいんだから!」コロシアムに響き渡る痴話ゲンカ? の声。緊迫した決戦から一転してのこの空気に、フィルナンド王以下の者達のみならず、少し離れた場所で見ている魔王フィラースも呆然としているようだった。

「えーと、お取り込み中、申し訳ないんだけどね」

 そこに間延びした声が上空から響いた。
 いつものごとくの重役机に社長の椅子に腰掛けて、顔が見えない。やっぱりこの神様はこれがワンセットなのか? の。

「ああ、どうも。“御使い”コウジのやってきた世界の神です」

 神様はとっても軽く自己紹介した。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。