どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【23】卵はないない! その2

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「逆に国民や兵からの絶大なる人気を誇るお前を王にせずに、他の者が王となったとする。
 そうなるとお前の扱いは大変難しいものになるぞ。民にとっては王を凌ぐ英雄だが、貴族の石頭どもは逆にお前を邪魔者扱いし、常に陰謀をたくらむ馬鹿が出てくる」

 その言葉にジークが口を開こうとしたところでフィルナンド王は先を制して。

「お前のことだ。コウジとともに辺境にて隠遁生活をおくってもよいとか、なんならば国外に出てもいいと思っているのだろう」

 「そんな簡単に行くものか。自分が欲がないからと他人までそうだと思っている、馬鹿者め!」とフィルナンド王はジークを叱りつけ。

「国民や軍は、王と宮廷と貴族達が“英雄”を追い出したとみるだろう。王家の権威は失墜し、馬鹿貴族共はお前を追放したと浮かれ騒ぐだろうが、そんな姿を見れば、民や兵士達の反発はますます強くなる。
 最悪、叛乱さえ起こりかねん」

 そこまで言われるとコウジもすとんと胸に落ちるものがある。隣のジークも沈黙し考えこんでいるようだ。
 いつだって、どこでも二人でいれば生きていけると思っていたが、違うようだと気付く。自分達が去ったあとのフォートリオンのことなんて考えたこともなかった。

 コウジの脳裏に思い浮かんだのは、ジークの屋敷の人々だ。執事のケントン以下。ジークと自分を信じて、あの屋敷を守り続けてくれた。
 自分達の家を。
 それにふらふらと歩いた王都ですっかりとなじみになった本屋の主人に、カフェの親父や通りかかると声をかけてくる人々の顔が浮かんだ。

 この世界におじさんなのに魔法少女として呼ばれて、ずいぶんと馴染んだものだと思う。

「それでどうなのだ?」

 返事を聞かせろとフィルナンド王が自分を見ているのに、ジークではなくなんで俺? とコウジは思う。

 が、そのジークが自分をじっと見ていることに気付いた。
 そうだった。この男の行動はコウジが基準なのだ。

 おそらくコウジがここで王様の相棒なんて柄じゃないと断ったら、ジークは周りがいくら勧めようと王にはならないだろう。
 自分の返事一つってそれってどうなんだよ? お前のやりたいことをやれよとジークに言いたいが、コウジがおじさんだろうとミジンコだろうと構わない男の妄執だ。もう、これは最後まで付き合うしかない。

────俺が腹をくくるしかないのか。

 婚約のときだってそうだった。ガラじゃないとごまかそうとなんだろうと、この剃刀色の真っ直ぐな瞳にいつだって負けるのだ。ま、勝ち負けじゃない。結局自分だって、この相棒にとって一番よい道を選びたいのだ。

 それは。

「ジーク、俺もな。お前が王様になればよい王様になると思っているぞ」

 「だからな、最後まで付き合ってやるよ」と笑う。

「そなたもな。この場合は王妃ではなく、王配ということになるか」
 そうフィルナンド王に言われて、コウジは「本当、ガラじゃないですけどね」と苦笑する。
「しかし、いきなりの譲位とはお貴族様達がうるさいでしょ?」
「だから、今なのだ。奴らは王都から民を押しのけて我先にと逃げようとした体たらくだぞ。この民の盛りあがりにはさすがに文句の一つも言えまい」

 なるほど、たしかにフィルナンド王が「好きにしろ」と言ったとはいえ、彼らは我先にと王も国も守らずに逃げ出したのだ。貴族として王と国に対しての義務もはたさずだ。
 それがわかっていて「好きにしろ」と言った王も人が大変悪いが。

「まあ奴らには、ジーク・ロゥが王配たるコウジだけだと神前に誓った。一代限りの王ということで、勝手に期待を持たせておけばよい」

 フィルナンド王がニヤリと笑う。たしかにジークはコウジ以外の準妃や愛妾を迎えるつもりはこれっぽっちもないだろう。

 当然、次の王はコンラッドかピートの子ということになる。コンラッドが一番有力であるが、こればっかりは授かりものだ。わからない。
 とはいえ、血統主義の貴族達はコンラッドの子が王となれば、フォートリオン王の系図は本流に戻ると、そこで納得させておけばいいだろう。

 しかし、そこでフィルナンド王はなにかに気付いたように軽く目を見開いた。

「そういえば御使い殿よ。そなた、その背に翼があるように見た目が男であるが、まさかジークとの卵を産めるなどということは……」
「ありません! 俺は正真正銘のオスですし、人間の身体なんだから、卵を産むわけありません!」

 なんだ、ジーク。お前まで期待の目で見るな! 



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



「あのさ、ケントンさん。このマント重くないか?」
「何度も衣装合わせなされてわかっていたはずでございますよ。それにこの日ばかりは我慢なされてください」

 いつものごとく無精髭をそられ、髪もうしろに流されて“整えられた”コウジは、これまたいつものごとく、その両手に白い子羊の皮手袋をはめられて言われた。

「それから御髪をいじるのは我慢なされてくださいね」

 それも今日一日の我慢だ。
 フィルナンド王の退位が発表され、同時にジークが次代の王となることと、コウジとの結婚式と戴冠式が同時に行われるとの知らせに、王都は一気に祝祭ムードに包まれたことはいうまでもない。

 ジークの住居もまた王都郊外から、この宮廷へと移された。王となるのだから当然だが、ケントン達との別れは寂しいとコウジが思っていたら、なんと彼らはそのまま王の使用人として、この宮殿にくっついてきた。
 そんなわけで住居は変わったが、周りの人々は変わらずコウジは宮殿の生活になじむ……というより前と変わらず自由気ままにやっている。

 しかし、今日は違う。
 そう、戴冠式と結婚式の日だ。





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