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俺のかわいい年上兎の垂れたお耳には羽が生えている【カルマン×ブリー編】
年下俺様王子と年上平凡茶兎のずっと幸せな結婚※
しおりを挟む祝典の日に相応しい晴れ渡った青空が広がる日。
カルマンとブリーの結婚式が行われた。
十八となったカルマンは威風堂々、兄シルヴァどころか、父ノクトの背丈も追い越し見事な体躯の美丈夫となった。赤いくせ毛に赤銅色の瞳。野性味ある顔つきだが、目元が少し垂れていて笑うと愛嬌がある。
穏やかで真摯な近衛長のシルヴァも人気ではあるが、こちらのやんちゃな遊撃隊隊長もまた、宮廷の若い娘達の間で人気があるのだ。
宮廷騎士団の正装の一つである赤い軍服の儀典副に身を包んだカルマンは、見惚れるほどの男ぶりであった。
しかし、それより本日、神殿にての結婚式のあと、宮廷の大広間にて開かれた夜会の主役は、そのカルマンの横に寄りそう、茶色の兎の姿だった。
いつもは控えめで目立たない、さらには十五も年上の婚約者だか、マダム・ヴァイオレットの最新作であるあわい黄色の盛装姿は大変可愛らしかった。ところどころにあしらわれたデイジーの造花も、その愛らしさにぴったりだった。
垂れたお耳の両方にもデイジーの造花の髪飾りか、さらに左耳には大粒のイエローダイヤモンドのピアスが揺れる。もちろん今日のためにカルマンがブリーに贈ったものだ。尻尾のリングも。
兎族は二十歳前後で年をとらなくなるというが、本日の花嫁は十八の若々しいカルマンと同年代どころか、さらに幼いようにさえ見えた。広間につどった他種族の貴婦人達は改めて、兎族恐ろしい……と思ったものだ。
横の偉丈夫の新郎に話しかけられて、たれたお耳、茶水晶の大きな瞳できょとりと彼をみあげて、はにかんで微笑む姿は、とても三十三の年増には見えない。さながら、その身を飾る花咲くデイジーのよう。
そして、バーデキン伯爵と呼ばれるようになったカルマンと、バーデキン伯爵配となったブリーとのダンス。お披露目の夜会にて、新婚の二人のみで最初のダンスを踊るのは、どこの国でも儀式の一つとなっている。
実はここでブリーをよく知るみんなが心配したのは、はたして歩いていてもなにもないところで転ぶ、ぽんやり兎さんがダンスを踊れるのか? ということだった。いや、そもそも簡単なステップの踊りさえ、あのスノゥが教えるのを諦めたほどである。
が、カルマンは「大丈夫」とあっさりいった。
「俺がブリーを抱いて回ってりゃいいだろう?」
実際、カルマンはブリーを向かいあわせで片腕にのせて抱きあげて、くるりくるりと回った。最初人々は「え?」とばかり怪訝な顔となったのだが、カルマンは堂々と一曲踊りきって、ブリーをそっと床に降ろして、胸に手をあてて人々に一礼をした。夫に片手をとられたままのブリーも、膝を軽くおって人々に礼をする。
カルマンは堂々と、ブリーはそれが当たり前とばかり受け入れているので、以来、この二人のダンスはこれということになってしまった。赤毛の遊撃隊特攻隊長は、番をつねに腕に囲っておきたいぐらい溺愛してるのだと。
実は妻がスッ転ばないように……なんて誰も知らない。まあ、溺愛は半分以上あたっている。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
そして、初夜。
バーデキン伯爵となったカルマンは大公邸より独立して、王都の貴族街に小さな屋敷を構えた。若夫妻がすむには十分なものだ。子供が増えてきたならば、また考えればよいと。
王侯貴族の夫婦は寝室も別が普通だが、こちらも大公家の両親にならって、夫婦の寝室は一つしかない。ケンカをしても同じベッドで……の伝統はこうして受け継がれる。
さて新婚の初夜でケンカもなにもなく、二人はこの日の特別なまっ白なカーテンにまっ白なシーツにレースにリボンに飾られた寝台で向かいあっていた。唯一の色といえば、寝台の枕元に添えられていた、黄色のデイジーの花束だろうか? 寝台に花を添えるのは、これからの夫婦の幸福を願ってのことだ。
「ブリー」
「は、はい! カルマン様! しょ、初夜です!」
ブリーの声は元気よくひっくり返っていた。とても初夜の雰囲気ではない。
これもマダム・ヴァイオレット特製の、ほんのり黄色でレースとリボンのパジャマに身を包んだ姿は大変可愛かったけれど。垂れたお耳の左の片方にも揺れるピアスとともに、デイジーのお花の造花とリボンが揺れる。
そう、ぴるぴる揺れている。カルマンを見上げる茶水晶の瞳もまた、うるうるしている。
「怖いか?」
「こ、怖くありません!」
「……キスするか」
「は、はひっ……んんっ!」
青年の力強い腕がブリーの細い肩をそっと包みこむように抱き寄せて口づける。最初はその唇をついばむようにして、さいごに深く、絡まる舌に一瞬大きく目をブリーは目を見開いてしまう。もう、何回かしているのにまだ慣れないのだ。
「あ…ぅ…んん……」
それでもブリーはカルマンのやることを拒むことはない。だってこの赤狼はこの茶兎にいつだって優しいからだ。それは最初に出会ったときよりずっと。
彼が手を引っぱってくれるなら、臆病自分でもどこまでもいける気がする。
それは今も。
「え……あ? そこ舐める……の……です……か? きゃっ!」
キスは唇だけじゃなくて以前から、ひたいや頬やまなじりにされていたけど、それが首筋から下へとおりて、夜着の前を開かれて胸へと、さらに乳首に吸い付かれて驚いた。な、なんかくすぐったい。
「本当は、前からブリーの全身を舐めて吸って噛みたかった」
「……カルマン様のお好きなよう…に……あ、でも噛むって……痛い…のは……」
「痛くないぐらいだ。これぐらい……」
「ふ…ぁ……これぐらい…な…ら……きゃ……う……」
「くそっ、可愛い声だな。乱暴にしたくないのに」
「……カルマン様なら……なにをなされ…て……も……」
「だから、煽らないでくれ」
カルマンの唇があちこちに吸い付くたびに、ブリーはわけがわからなくなっていった。さすがにペニスに触れられたときはびっくりしたし、それが自分の身体なのに、普段は目にしたことのない固さでそそりたっていたのに驚いたけど。
「……ブリーの身体はおかしくなったの……でしょ…うか?」
「安心しろ、閨の営みならこれが正常だ」
「あ、あ……思いだ…し……ました。生き物の男性器……は……んぁ……」
「さすがにここで、お前の講義は聴きたくねぇ。ことが終わったあとで、お空の話でもなんでもしていいから」
そのあともそこを舐められてさらにびっくりし、口に含まれて泣きじゃくり、さらには昂ぶって解放してしまったそれをごっくんされたときには。
「は、吐いてください!」
「するか! お前のだから俺のものだ!」
混乱のうちに、さらにおくのとんでもない場所を指でなぞられて、え? どうしてそんなところ? と思ううちに、ベッドサイドのテーブルに誰が用意したのか。たぶん大公邸から、この伯爵邸にやってきた古参のメイドだろう。そこに用意された香油瓶にひたしたカルマンの指がぬるりぬるりと撫でて、さらにつぶりといれられた。
「ひゃっ」とか「きゃっ」とかいいながらやはりブリーは拒むことはなかった。どんなにとんでもないことでも、それはカルマンのすることだ。
信じている。
「ここから先は少し……いや、結構痛いかもしれねえ。ゆっくりやるから我慢出来るか?」
「はい……カルマン様……なら……いい…です……」
「うん、ブリー愛しているぞ」
「ブリーも大好きで…す……」
たしかにちょっぴり……いや結構に痛かったのだが、カルマンがずっと抱きしめてくれて「もう、ちょっとだからな」とひたいや頬に口づけてくれたので、怖いとか不安だとかはなかった。
それからゆらゆら小舟みたいに揺さぶられて、最後の方には痛くなくなって、なんだかわからなくなっていたと思う。
初夜あけの朝は、恥ずかしくてなかなかお布団から顔を出せなかったブリーだが、それも布団ごとカルマンに抱きしめられて、さらに顔中にキスされて恥ずかしいのはどっかに行ってしまった。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
結婚してからもブリーのぼんやりさんは変わらず。
結婚から三月たって、なんだか食欲があまりないな……どころか、スープの匂いにも気分が悪くなって吐いてしまい、愛しい番が病気だと真っ青になってブリーを抱きしめるカルマンに、大公家からついてきた古参のメイドが告げた。
「あの旦那様、奥様はおめでたではないでしょうか?」
番が病気だと呼ばれた医者もまた「おめでとうございます」とカルマンに告げたのだった。
そして、例の恒例行事。
二人の小さな新居では産屋は建てられないと、ブリーは大公邸に里帰り? して、スノゥも使った伝統のそこで出産することになった。
この里帰り? はスノゥがカルマンにいったのだ。
「お前の馬鹿父ちゃんも俺の腹がデカくなるたびに心配性が炸裂して大変迷惑だった。お前のことだ。身籠もったブリーを常に抱っこして移動するなんて、ほざきかねん」
「え? 母上? そのつもりだけど?」
「馬鹿者! 妊夫には適度な運動が必要だ」
そんなこんなでブリーの身柄は大公邸で預かることとなった。当然、カルマンも毎日大公邸に帰ってきていたが。
そしてブリーが産気付いたそのときに、カルマンが運悪く? その場にいた。
「ブリーの腹が割ける!」
普段は部下の遊撃隊の兵士たちに大号令を下す、その絶叫が大公邸に響きわたった。
スノゥはそんな馬鹿息子の頭をひっぱたき、苦しむブリーを抱いて産屋に移動するように命じた。
本来産室から夫は追い出させるはずだが、スノゥは「もう、あの二人はそのままでいい」と医者と産婆に告げた。
「カルマンの奴が産屋の寝台にかじりついてはなれなさそうだしな。ブリーにもあいつのムキムキの腕にすがりついておけ……といったしなあ」
実際ブリーは出産の未知の痛みにぴるぴる、うるうるしながら「カル…マン…様……ブリーは……死ん……でしまう…の……でしょ……か?」と途切れ途切れに訊ね。「大丈夫だ。出産では死なないって母上がいっていた」とカルマンが答えるのに、こくこく頷く。
「で、でも……死ぬ……ほど……痛いで…す」
「なにかで気を紛らせ。ほら数式を考えろ」
「い、痛すぎて……これで計算でき…たら……世界の真理が……わかるような……気が……しますっ!」
「わかった、世界の謎を解いてくれ!」
「が、がんばり……ます……でも、痛い……です……」
そんなやりとりのうちに世界の真理はとけなかったが、元気な赤毛の純血の狼はうまれた。
これが最初の一人目でのちに九人まで男の、しかも赤毛の純血種の狼が続くなんて、誰も予想がつかなかった。
その九人が紅蓮の遊撃騎士隊として、名をとどろかせることもだ。
そして、最後に生まれたのは、母親そっくりの茶兎で……。
溺愛する父親と九人の兄達が、その茶兎の恋の最大の障害となったのだった。
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