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第21話 僕は初めてを迎える
しおりを挟む最近よく話していた知っている人が死んだと知って、少なからずショックを受けていた。
茫然として、ストンと椅子に腰を落とす。
あまりにも現実感がない。
「本当に死んだの……?」
日本でも、お爺ちゃんやお祖母ちゃんは生きていた。毎年お正月になるとお年玉も貰っていたし、お母さんやお父さんも事故とか事件に巻き込まれることなく、普通に元気に過ごしていた。
兄弟はいないけれど、いとこたちも元気で、身内に死んだ人はいない。
そりゃもちろん曾お祖母ちゃんまで行くと死んでいるけれど、僕が生まれてすぐの頃に死んでしまって、面識がない。
知らない他人も同然だ。
だけど、知っている人が、死んだ。
もう会えない。戦場で死んだなら、死体が綺麗な状態で残っているかどうかもわからない。最後に交わした言葉はなんだっただろう。
特別な言葉じゃなかった。
至って普通で、日常の中にあった。
現実感がなさすぎて、涙も出ない。
これまで考えないようにしてきたことが、ふと頭の片隅に蘇る。
「日本で私は死んだのかな……」
これまでに帰りたいと思ったりすることはなかった。
だけど、無性にお母さん、お父さんに会いたくなった。
大学から帰ると、パート帰りのお母さんがスーパーに寄って食材を買い、意外と重い荷物を持って家に帰っていて。自室で女装の勉強とかしていたら、お母さんがご飯の準備をしている中、夜の8時にはお父さんが帰ってくる。
お父さんが帰って来ると晩御飯を食べ、そのあとは順番にお風呂に入っていた。
湯舟に浸かって、ゆったりできる時間だった。
――帰りたい。
けれど、それは叶わない。
方法もわからないし、いま帰えればたくさんの人に迷惑をかける。
「姉ちゃん?」
扉が開き、レンが入ってきた。心配そうな顔で僕の顔を覗き込む。
「な、なんだ、何かあったのか?」
「何もないよ。なんでもない」
笑いかけると、レンが悔しそうに唇を噛んだ。
「姉ちゃん……俺をさ、俺のこと頼りにならないかもしれないけどさ、もっと頼ってくれよ。姉ちゃんが苦しんでんのに、笑っていられないよ。話、聞くから」
「レン……」
「姉ちゃんの力になりたいんだ。どんなことだっていい。姉ちゃんの気持ちが軽くなるなら、俺、どんなことだってやる」
「……ありがとう」
僕はレンの優しさに甘えて、自分のこと、それからヒルゼンさんが死んだことを話した。
レンに話しただけで、心が少し軽くなった。
レンにもう一度お礼を言うと、レンが顔を赤くして僕のことをチラチラと横目で見始めた。
「どうしたの? 困ったことがあるなら聞くよ。話を聞いてもらったばかりだし、みんなのことは私が守るからね」
「お、おう。えっと、だな。姉ちゃんは、つまり、その、優しくされたくて、でも奴隷……性奴隷になりたいってことか?」
「概ねそうだね」
改めて人から言われると、頭がおかしい願いだ。
なんだ、性奴隷になりたいって。
でも、なりたいのだ。
最終目標はそこにある。
「で、でも、いまはまだ関係を持つのは、その、ムタってやつだけなんだよな?」
恐る恐る問いかけてくるレンに、そうだよ、と頷いた。
「なら、姉ちゃんはまだまだ満足してないってことだよな……?」
「そうだね」
「お、俺でよければ、やってもいい、よ?」
「あー……」
なるほど。
「ね、姉ちゃんが嫌ならいいんだ! でも、姉ちゃんが望むなら、お、俺も嬉しいし、その」
「ちょっと早いかなー」
レンはまだ中学生くらいだ。
いや、早い子なら中学生でもそういうことはする。
でもやっぱり早い……?
うーん。
「そ、そっか。いや、いいんだ。姉ちゃんが嫌なら……」
「嫌、っていうわけでは、ないんだけど」
言ってみれば、僕は処女を捧げるわけだ。
身長が150cmほどしかない僕より背が低く、まだ少し肉付きがよくない体を見る。
やっぱり、相手がレンっていうのは、なんか違う。
例えば、そう、ちょっと気持ち悪いおっさんとか、女の子を食い物にする最低野郎とか、そういうのに憧れる。
食い散らかしてくれる人がいいのだ。
でも、痛いのは嫌だ。
矛盾してるよね、わかる。僕もそう思う。
ただ、僕の意思を尊重してくれるレンは、最初の相手に相応しくないというかなんというか。
ともかく、そういうことなのだ。
レンの申し出を断るためには理由が必要だ。
なので、1番ありそうな「ぽい」理由を言うことにした。
「ごめんね。レンが私より背が高くなったらいいよ」
「背か……背が足りないのか……」
レンがグッと拳を握る。
「じゃあ俺がでっかくなったらいいのか!?」
「え、うん、まぁ……そうかも」
「わかった」
謎にレンから約束を取り付けられ、レンが意気揚々と部屋から出ていくのを眺めていることしか、僕にはできなかった。
入れ替わりに、この辺の部族の中から戦える者を厳選し、訓練をつけるという仕事を任せたゼルさんと行動しているはずのキースさんが入ってきた。
「話は聞かせてもらったぜ。脱げ」
!?
「ど、どうしてここに」
あまりの動揺に、声が震える。
「進捗を伝えに来たんだよ。どのくらい進んだかーってな。真面目な話をしに来たら、ドエロい話してるじゃねぇか。あんな子ども相手じゃあ盛り上がらねぇよなぁ? わかるぜ?」
キースさんが僕の体を舐め回すように見て、
「いいから脱げよ」
そう言った。
「嫌だと言ったら……?」
「拒否権はねぇ。アカリさんは――お前は奴隷、性奴隷。そうだろ?」
「女性を守る騎士じゃなかったんですか」
「ああ、だが、俺の天啓の相性がいいのは俺とヤッたやつだ。その点から言っても、やっちまったほうがいいぜ?」
目を合わせて嘘かどうか見極めようとする。けれど、全然見抜けない。
強気なキースさんに、反論の言葉を紡げない。
気分が高揚しつつある自分がいることが、少しだけ嬉しかった。こんなことが本当に起きても、実際に昂ぶるかどうかは別だ。後ろの穴でしか経験したことなかったのだから、仕方ない。
そんな杞憂を振り払い、僕は頷いた。
「……わかりました。でも、ほかの人には内緒でお願いします。この時期にこんなことがバレたら私は――」
「誰にも言わねぇよ。ここらが落ち着くまでは、な」
僕の目の前まで来たキースさんが、僕の体のあちこちを触りまくる。
ああ、そうだ。一つだけ、伝えておかないと。
「あの、私、したことないので、初めてなので、優しくお願いします」
「は!? 初めて!? 嘘だろ!?」
「本当です!」
「マジかよ……いや、嬉しい誤算、か? ムタって奴とはしてねぇの?」
「口でしてるだけですし……ムタくんには誠実でありたいので」
「誠実って」
めちゃくちゃ笑われた。
僕もどうかと思う。こんなことをしておいて、誠実でありたいだなんて。しかも、夜になると行くと言ったのだ。
何が、どこが誠実なのだろう。
「まぁいい。ヤろうぜ」
「はい!」
エッチなことばかり頭に過ぎる。
沈んでいた気持ちが、完全に消え失せていた。
「今日からお前は、俺の性奴隷だ」
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