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第一章 旅立ちの時-3
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「で、ザーギンさん。二人を連れて村を出て行く予定ですか?」
ザーギンは再びリュージェの女神像の前で佇んでいた。それを見た神父は声をかける。
「あいつらも剣術がそれなりに上達したと私も先日のやりとりで感じ取りました。村を出て行くには、あいつらにとっても、ちょうどいい年頃だと思いますからね」
神父は胸のロザリオを持ってリュージェ像に向かい、十字を切った。
「神父様、コンコルドソードのことよろしくお願いします」
「わかりました。リュージェ様のご加護がありますように」
ザーギンは神父にそう言うと、共にリュージェ像に向かって、祈りを捧げた。
「うわー!」
突然聞こえた悲鳴に二人は驚く。
「何事!?」
神父は教会の外に走り出そうとする。それを見たザーギンは、とっさに言葉を発する。
「神父様はこの場に! 悲鳴は村の奥の方。私とハザードの家の方です。向かいます!」
ハザードの言葉に神父はその場に留まり、ハザードは教会を後にする。
「ハザード。カイン。二人はまだ剣道場か? 無事でいてくれ」
ザーギンは悲鳴があった自宅の方へその足を速めた。
ハザードは自分の家に帰ろうと、カインと二人で歩いていた。
「カイン。俺たちは父さんと一緒にこの村を出て行くことがあるのかな?」
ハザードは自分の腕に自信はまだまだないものの父ザーギンと幼なじみのカインと共にこの村を出て、冒険に旅立つ日のことを夢に見ていた。
「そうだな。だけど、俺はザーギンさんの力なしで、お前と二人で……」
次の瞬間、ザーギンが聞いた悲鳴を二人も聞くことになった。
「今の悲鳴!」
「うん。うちの方角からだ! 急ごう! カイン」
二人はハザードの家に向かって走り出す。
ハザードとカインはザーギンよりも早く悲鳴がした場所へ着いた。
「ハザードさん! カインさん!」
悲鳴を出していたのは、ハザードの家の向かいに住むエドワードだった。
「エドワードさん、大丈夫ですか?」
エドワードが竹刀しか武器を持っていないところを見ると、この武器では太刀打ち出来ないことが見て取れた。
「あぁ。でも、あいつ。僕たちを襲ってきたあいつはとてもじゃないけど、普通じゃなかったよ」
「そいつはどこへ?」
エドワードの言葉にカインが問いかける。
「剣道場の方へ向かったよ。だけど……」
「急ごう! カイン!」
「あぁ!」
二人はエドワードの言葉を最後まで聞く前に剣道場に向かって走り始める。
「あ、二人とも!」
「大丈夫! このために今まで修行してきたんだから」
エドワードの言葉にハザードは大きく声を上げて返事をした。
「気をつけるんだよ」
エドワードは小さく言葉を漏らすだけに留まってしまう。
「カイン。相手はどんなやつか分からない。油断しないで行こう」
ハザードはカインに慎重な面持ちで語りかける。
「あぁ。でも、ようやく俺らの力を出すいい見せ場がきたんだ。ワクワクしないか? ハザード」
「今、油断しないで行こうって言ったばかりだろう! でも、カイン。君の言うとおりだ。父さんには負けたけど、この村じゃ負けなしの僕たちの力試しにはちょうどいいかもね!」
ハザードもカインも大変な状況だというのに、どこか余裕が見えていた。それは今まで剣道場で自分たちより強いものと戦ったことがなかったことと、得体の知れない何かと戦うことへの好奇心が優位になっていた証拠だった。
「ハザード、剣道場はもうすぐそこだ!」
カインは剣道場が見えかかったところでハザードに声をかける。
「よう!」
「え!?」
ハザードはふいに声がした方角へ顔を向ける。カインもハザードが歩みを止めたのを確認すると同時に声の主が木の上に座っているのを確認した。声の主はギザギザの髪型に特徴的な八重歯。そして、鞭のように曲がっている剣を手にしていた。
「よっと!」
木の上から降りてくると、二人の前に立ちはだかる。
「お前、何者だ?」
カインは慎重に言葉を選ぶ。
「おやおや、その鞘はもしかして、一丁前に剣を持っているのか。ガキのくせに生意気だな」
「な、なんだと!」
ハザードは少しムキになる。この村では言わずとしれた剣士なのだ。それなのにどこの誰かも分からない奴に「ガキ」などと言われ、その上、「生意気」だと言われたのだ。黙っているわけにはいかない。
「待て、ハザード。こいつの挑発に簡単に乗るな。相手の思うツボだ」
カインは少し冷静さを取り戻すようにハザードをなだめる。
「だけど、カイン!」
「グダグダ言ってねーで! その剣を俺様に振るってみやがれ!」
二人が構える前に鞭のように研ぎ澄まされた剣が二人に襲いかかってくる。二人はとっさに剣を鞘から引き抜くがタイミング的に間に合わない。
「せいっ!」
「くっ!」
二人はここまでかと思った次の瞬間、剣と剣が合わさる金属音が鳴り響く。
「無事か? 二人とも」
そこに現れたのはザーギンだった。
「父さん!」
「ザーギンさん!」
ハザードもカインもホッと胸をなで下ろした。それを見ていた鞭の男は剣を自分の手元に戻す。
「ザーギン! 探したぞ。やはり村に帰っていたんだな。それにその二人は……」
ザーギンは男が全て話し終える前に言葉を遮る。
「アラン! 貴様、何の用だ! 二人は私の大事な息子とその相棒だ。二人に手を出すというなら私が相手をしてやる! どこからでもかかってこい!」
ザーギンの剣は七色の発色を帯び始める。アランと呼ばれた男は鞭を地面に叩きつけると、ザーギンに対する言葉が荒ぶる。
「何が大事な子供だ! そいつらはお前の……」
「問答無用!」
アランの言葉に対応する前にザーギンはその剣をアランに向かって振りかざす。
「くっ! そういうことなら、やってやるよ! そして、あの二人をあんたから解放してやる!」
アランはそう言って鞭を再び叩きつけると七色に発色させる。
ザーギンは再びリュージェの女神像の前で佇んでいた。それを見た神父は声をかける。
「あいつらも剣術がそれなりに上達したと私も先日のやりとりで感じ取りました。村を出て行くには、あいつらにとっても、ちょうどいい年頃だと思いますからね」
神父は胸のロザリオを持ってリュージェ像に向かい、十字を切った。
「神父様、コンコルドソードのことよろしくお願いします」
「わかりました。リュージェ様のご加護がありますように」
ザーギンは神父にそう言うと、共にリュージェ像に向かって、祈りを捧げた。
「うわー!」
突然聞こえた悲鳴に二人は驚く。
「何事!?」
神父は教会の外に走り出そうとする。それを見たザーギンは、とっさに言葉を発する。
「神父様はこの場に! 悲鳴は村の奥の方。私とハザードの家の方です。向かいます!」
ハザードの言葉に神父はその場に留まり、ハザードは教会を後にする。
「ハザード。カイン。二人はまだ剣道場か? 無事でいてくれ」
ザーギンは悲鳴があった自宅の方へその足を速めた。
ハザードは自分の家に帰ろうと、カインと二人で歩いていた。
「カイン。俺たちは父さんと一緒にこの村を出て行くことがあるのかな?」
ハザードは自分の腕に自信はまだまだないものの父ザーギンと幼なじみのカインと共にこの村を出て、冒険に旅立つ日のことを夢に見ていた。
「そうだな。だけど、俺はザーギンさんの力なしで、お前と二人で……」
次の瞬間、ザーギンが聞いた悲鳴を二人も聞くことになった。
「今の悲鳴!」
「うん。うちの方角からだ! 急ごう! カイン」
二人はハザードの家に向かって走り出す。
ハザードとカインはザーギンよりも早く悲鳴がした場所へ着いた。
「ハザードさん! カインさん!」
悲鳴を出していたのは、ハザードの家の向かいに住むエドワードだった。
「エドワードさん、大丈夫ですか?」
エドワードが竹刀しか武器を持っていないところを見ると、この武器では太刀打ち出来ないことが見て取れた。
「あぁ。でも、あいつ。僕たちを襲ってきたあいつはとてもじゃないけど、普通じゃなかったよ」
「そいつはどこへ?」
エドワードの言葉にカインが問いかける。
「剣道場の方へ向かったよ。だけど……」
「急ごう! カイン!」
「あぁ!」
二人はエドワードの言葉を最後まで聞く前に剣道場に向かって走り始める。
「あ、二人とも!」
「大丈夫! このために今まで修行してきたんだから」
エドワードの言葉にハザードは大きく声を上げて返事をした。
「気をつけるんだよ」
エドワードは小さく言葉を漏らすだけに留まってしまう。
「カイン。相手はどんなやつか分からない。油断しないで行こう」
ハザードはカインに慎重な面持ちで語りかける。
「あぁ。でも、ようやく俺らの力を出すいい見せ場がきたんだ。ワクワクしないか? ハザード」
「今、油断しないで行こうって言ったばかりだろう! でも、カイン。君の言うとおりだ。父さんには負けたけど、この村じゃ負けなしの僕たちの力試しにはちょうどいいかもね!」
ハザードもカインも大変な状況だというのに、どこか余裕が見えていた。それは今まで剣道場で自分たちより強いものと戦ったことがなかったことと、得体の知れない何かと戦うことへの好奇心が優位になっていた証拠だった。
「ハザード、剣道場はもうすぐそこだ!」
カインは剣道場が見えかかったところでハザードに声をかける。
「よう!」
「え!?」
ハザードはふいに声がした方角へ顔を向ける。カインもハザードが歩みを止めたのを確認すると同時に声の主が木の上に座っているのを確認した。声の主はギザギザの髪型に特徴的な八重歯。そして、鞭のように曲がっている剣を手にしていた。
「よっと!」
木の上から降りてくると、二人の前に立ちはだかる。
「お前、何者だ?」
カインは慎重に言葉を選ぶ。
「おやおや、その鞘はもしかして、一丁前に剣を持っているのか。ガキのくせに生意気だな」
「な、なんだと!」
ハザードは少しムキになる。この村では言わずとしれた剣士なのだ。それなのにどこの誰かも分からない奴に「ガキ」などと言われ、その上、「生意気」だと言われたのだ。黙っているわけにはいかない。
「待て、ハザード。こいつの挑発に簡単に乗るな。相手の思うツボだ」
カインは少し冷静さを取り戻すようにハザードをなだめる。
「だけど、カイン!」
「グダグダ言ってねーで! その剣を俺様に振るってみやがれ!」
二人が構える前に鞭のように研ぎ澄まされた剣が二人に襲いかかってくる。二人はとっさに剣を鞘から引き抜くがタイミング的に間に合わない。
「せいっ!」
「くっ!」
二人はここまでかと思った次の瞬間、剣と剣が合わさる金属音が鳴り響く。
「無事か? 二人とも」
そこに現れたのはザーギンだった。
「父さん!」
「ザーギンさん!」
ハザードもカインもホッと胸をなで下ろした。それを見ていた鞭の男は剣を自分の手元に戻す。
「ザーギン! 探したぞ。やはり村に帰っていたんだな。それにその二人は……」
ザーギンは男が全て話し終える前に言葉を遮る。
「アラン! 貴様、何の用だ! 二人は私の大事な息子とその相棒だ。二人に手を出すというなら私が相手をしてやる! どこからでもかかってこい!」
ザーギンの剣は七色の発色を帯び始める。アランと呼ばれた男は鞭を地面に叩きつけると、ザーギンに対する言葉が荒ぶる。
「何が大事な子供だ! そいつらはお前の……」
「問答無用!」
アランの言葉に対応する前にザーギンはその剣をアランに向かって振りかざす。
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