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『助けれるのは俺しかいない』
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「5万ギル溜まったー」
「何買うんだ?」
草原の白栄王[レッザー・バルム]を倒したあと、またサクラと依頼を受けていた。
「刀かな」
「私全く使って無いのあるよ。いる?」
「まじで?ください」
「いいよー」
(優しいな。サクラは武器いらないのかな?)
「サクラ使わないの?」
「刀?あぁうん。使わないかな」
「買ったの?」
「貰ったんだよ。呪いの宝刀[クロム・ディザスター]だってさ」
「呪いの宝刀?」
「なんでも斬った物の即死の部位に呪縛攻撃が走るとか」
「なにそれクソ強いじゃん」
「でも効果切れたけど」
(まじかよ・・・)
「でも欲しいな」
「やるよ。家、来るか?」
「いいの?」
「うん。ついでに泊まっていけば?」
「お泊まりはちょっと・・・」
「いいから泊まれ」
軽い殺気を放つサクラに負け、泊まることにした。
「ここが家だよ」
「で、でかくね?」
「私、一応貴族だし」
(えぇー!まじかよ!)
「ど、どうもすいませんでしtaサクアおじょさま」
「テンパリすぎだこの馬鹿。ふつーでいいよふつーで」
「う、うっす」
中に入るとそれはそれは豪華で、玄関とは思えないぐらい広い。廊下すらも広い。
「ちと待ってて。親父にいいか聞いてくる」
「うん」
走って行ったサクラを見送ったあと、周りを見渡す。
(やっぱでかいなー)
「お客様ですか?」
「ッ!?」
後ろから声が聞こえた。振り向くとメイドさんがいた。
「こんにちは。この家のメイドをさせて頂いているミラ・クロスフォードです。以後お見知りお気を」
(うっわキレー。なんつーか美人だし可愛らしいし、とにかくやばい)
「お、俺は綾辻狼竜です。よろしくお願いします」
「よろしくって何をですか?」
「えっ」
するとドタドタと走ってきたサクラが飛び込んできた。
「狼竜ー!いいってよー!」
「うおっ。サクラ」
(ちょっ。鎧着てないからもろに胸が)
「お嬢様。そこの変態がお嬢様の胸に興奮して、鼻の下を伸ばしてますよ」
「え」
覗き込んでくるサクラを抑え、メイドさんに言う。
「何言ってんの!?しかも初対面の相手に変態て・・・」
「あら、私は初対面じゃないかも知れませんよ?」
「えっ」
「いや、会ってないですけど」
「なんだよ!」
「あはははは」
「サクラまで!」
そんな楽しいひとときを終え、サクラの部屋に向かう。
「今日はベッドに寝るか?ソファに寝るか?」
「ソファで寝るよ」
「わかった」
「ご飯はもう少し待ってな」
「うん」
(どんだけ豪華なんだろうな)
やっぱり、貴族の家は新鮮でいくら見ても飽きない。
サクラの部屋は女の子らしく、水色とピンクがほとんどだ。
ベッドの周りのカーテンなどがだいたいシルクで出来ていた。そのベッドも相当高いだろう。凄くふかふかそうだ。
それに部屋着のサクラは可愛い。部屋と凄く馴染んでる。
「わっぷ!」
「どうした!?」
「いや、うちのペケが飛び込んで来て・・・」
「なんだ、犬か」
「犬?」
「そいつのことだよ」
「え?ハウスバーじゃないの?」
(ハウスバーってなんや)
「もしかして、こいつモンスター?」
手をアマガミされているこいつを見ながら言った。
「そうだよ。懐いて可愛いからよくペットにする人が多いよ」
「へぇ」
すると、ドア越しに声が聞こえた。
「お嬢様。ご飯の用意が出来ましたよ」
「わかった。今行く。だけど少し待っててくれ」
「はい」
「狼竜」
「ん?」
「剣取り行くぞ」
☆
「ここにあるの?」
「あぁ、武器庫にあるはずだ」
「てかさ、何で明かり持ってこないのさ」
「忘れたんだよ!」
武器庫は暗すぎるため、ほとんどが見えない。
「今日に限って電球が壊れたんだよ」
「まぁ、暗くてもそのうち慣れるしな」
とりあえず、適当に手を動かして、剣を探す。
「ひゃん!」
「なぁサクラ。何かすごい柔らかい物を掴んでんだけど、これ何の武器?」
「あたしの胸だー!」
「ごふっ」
サクラから強烈な右アッパーをくらい、少し顎が痛い。
「あ、あったぞ」
明るいところに出て刀を確かめる。
「おぉ」
簡単に言うと漆黒の刀。他の色は特に無い本当に真っ黒な刀だった。
(呪いの宝刀・・・。確かにそんな感じがする)
剣刺しに刺してみた。するとこれまたぴったりだった。
(刀サイズの剣刺し?)
「んじゃ、ご飯食べに行こうか」
「うん」
武器庫から、リビングまではそんなに遠く無く、すぐに着いた。
「サクラ様。皆、準備が出来ています」
ミラはそう言うと椅子を引いた。
(がっつり、メイドの仕事してるな)
「狼竜様も、どうぞ」
「あ、あぁ。ありがと」
座って数秒が経つとご飯が出てきた。
コーンスープにハンバーグ。レタスを主とした新鮮なサラダ。それと、焼きあがったばかりのパン。
「君が狼竜君か。娘から聞いたよ」
「あ、今日は泊めていただきありがとうございます」
「いやいや、それより食べよう。冷めては不味くなる」
はじめにコーンスープから。
(うわうま!)
コーンの甘みとつぶつぶが口の中で広がる。
「どうですか?お口に合いますか?」
「うん。凄く美味しい」
「良かったです」
ハンバーグを切ってみるとこれまたすごい。肉汁がドバドバ出てくる。
(おいおい。毎日こんなの貴族は食べてるのか)
美味しかったせいかすぐに食べ終えてしまった。
「なぁ狼竜。先に風呂入ってこいよ」
「いいのか?」
「うん」
「私も構わんよ。入って来なさい」
「ありがとうございます」
「ミラ。お風呂場にご案内しなさい」
「わかりました」
言われた通り、ミラに付いて行く。
「ここです」
「ありがとう」
「あと、服です」
「あれ?」
「洗濯して置きました」
「え!?ありがとう。手間かかったでしょ」
「大丈夫です」
風呂場に入り、着替える。
(あれ?いつ着替えたっけ・・・)
「まぁ、いいや」
ドアを開けて中に入る。
「やべーな」
広すぎる。まるで温泉に来ているみたいだった。
(プールぐらいあるぞ?)
「湯加減どうですか?」
「うおっ。だ、大丈夫です」
(あれ?そういや電気があるって言ってたな)
「あのー。ミラさん」
「はい。なんでしょう」
「電気って魔法使ってんの?」
「そうです。魔法増加マシンと魔法複式機を使って、電気に問わず、水や火、光などが出せます」
「へー」
身体を洗い、浴槽に入る。
ほとんどが大理石で出来たお風呂はとても豪華だ。
(シャワーやシャンプーがあるって・・・。まじであっちの世界に近いな・・・)
上がろうと思い立ち上がった。
「ん?」
(何か、誰か屋敷に入ってきたような・・・)
気のせいだと思いお風呂から出る。
洗って貰った服に着替え、風呂場を後にした。
リビングに向かうと誰もいない。
(あれ?誰もいないな)
「狼竜様」
「あ、ミラ。サクラは?」
「それが、何者かに連れ去られました」
「ッ!?」
顔が険しくなってしまう。
(あの時の気配は間違いじゃなかった!)
「クソッ」
駆け出していた。玄関に向かい靴を履く。
「待ってください狼竜様!」
「待てない!サクラが危険だ!」
「いやそのーー」
最後まで聞かず家を飛び出した。
☆
「くそ!当てずっぽうに走っても見つかるわけがない!」
そう思いつつも、どこに行ったかなんてわかりもしない。
(聞け!聞くんだ。サクラの声を!居場所を!気配を!)
ザワザワとした王都からサクラの気配だけを見つけ出すのは難しい。
(俺ならできる!考えるな!感じろ!)
元々鍛えていた狼竜は人探しには長けている。
口の感覚、皮膚の感覚など視覚の感覚を全て聞く感覚に移した。
「んんー。離せ!」
(聞こえた!!)
道なんか知らない。ただ声が聞こえた方に走る。
「お?にいちゃん金持ってっか?」
「どけ」
「あ?」
「そこをどけって言ってんだ!」
抑えていた殺気を少し放つ。
「ひっ」
強面の奴らもこの殺気に気づいたのか逃げる。
サクラの気配がどんどん近づいていく。
すると、大きな廃工場の様な場所に着いた。
(輸送の保管の場所か・・・)
ただ、そこも広く探すのが困難。だが、今は聴覚に全てを注ぐ狼竜に聞こえないものは無い。
「ここか」
呪いの宝刀を鞘から出し、振るった。
大きな扉は綺麗に切り刻まれた。
「サクラ!」
中に入ると拘束されたサクラと、仮面を被った男が立っていた。
「よく来たなあ。助けに来たのか?」
「そうだ」
狼竜の声は怒りに包まれていた。
「助けたいのか?」
「何が言いたいんだ?」
「ふはは。こいつに勝ったなら俺達は負ける!」
フッと現れたのは剣を使う剣士。
「誰だ?」
「この国、アルバスで2番目に強いとされる、グラン・バルゼリットだ」
「んらん!?」
サクラすらもが驚いている。
そんな事気にせず狼竜は吐き捨てた。
「勝つ?殺すの間違いか?」
「ッ!?」
サクラ、グラン、仮面の男。皆が震える程の殺気を放った狼竜。
「行け!グラン!」
剣を取ったグラン。素早い斬撃で狼竜を斬ったと皆が思った。
「え?」
そこに狼竜はいなかった。
「上だよ」
「!?」
なんとか防ぐことが出来たその斬撃。剣からの衝撃で手が痛い。
「くっ!」
グランは3歩下がった。
「スキルを使うしか・・・無い!」
斬撃が来たのは走る音と同じだった。
「どうだ!」
しかし、狼竜は受け止めていた。
「!?」
(何故だ!?音速より速い俺を止めただと・・・)
「なんだ?2番目はその程度なのか?」
「ふざっけんな!」
同じく死角に入ってグランだが、攻撃をしたグランがダメージをおった。
「くそ!なんでだ!何で俺の《音超える者》[オーバー・スピード]についてこれる!?」
「これで終わりだ」
1歩歩いた狼竜は、グランの剣、腕、足を切り刻んだ。
「綾辻流初段・竜椿[りゅうつばき]
見た事の無い剣技にグランはなすすべなく散った。
「ぐあああ!」
「うるせぇ。魔法があるんだ。治癒魔法ぐらいあんだろ」
狼竜が向けた視線は仮面の男。
「や、やめろぉ!」
(銃!)
敵が使うのはマシンガン。ただ、乱暴に放たれている。
狼竜はその、速い、速い速い弾丸を全て見極め、刀で弾く。
「お、おい!嘘だろ!?」
「嘘じゃねえ」
「や、やめ」
1歩1歩。確実に進んでいく。そして、敵まで寄るとマシンガンを切り落とした。
足を掛け、倒れ込む男の首に刀を置く。
「貴様が負けた原因は、サクラを連れ去らった事だ。2番目の奴と1番目、それと3番目がいたのなら負けていたかもしれないな」
「なっ」
「じゃあな」
首を落とそうとした時、横から2発、放たれた。
それを剣で斬る。
(弾丸か)
「そこまでです狼竜様」
「ミラか。なんでだ?こいつはサクラを連れ去らった。殺さないとまたやりかねない」
「そうですが、一旦、仮面を取ってから決めてください」
「仮面?」
ミラに言われ、仮面を外すすると。
「なっ。サクラのお父さん!?」
「そうです。セルム・アイヴェルクルム様です」
「ははは。済まないねえ狼竜君」
「なんで・・・」
「いや君はね。サクラが初めて泊めたいといい出した子だったから」
「え?」
「もしかしたら好きになったんじゃないかと思って」
「んんん!?」
(サクラ拘束したままだった・・・)
サクラを拘束していた物を切り落とし、サクラを開放した。
「お父さん!どういうこと!?」
「いやー。サクラが男連れてくるからさ。惚れた男を確かめようと思って。あ、あとミラ。グランさんを治癒魔法で回復させて」
「わかりました」
ミラは治癒魔法でグランの回復を始めた。
「だからってさ!こんなやり方はひどいよ!」
「だって、こうでもしないと本気出して貰えなそうだったし」
「あ、いえ。俺、まだそんな本気出してないです」
「えっ」
あれだけ強くてまだ本気じゃないの?って顔で見られた。
「まぁでも、狼竜君ならサクラを任せられるかな」
「だから!お父さん!」
そんなサクラを無視し、セルムさんは続ける。
「君はサクラの・・・騎士をやってみる気はないかい?」
「騎士?」
「うん。サクラを・・・守ってくれ」
「お父さん!私は大丈夫だって・・・。その、確かに狼竜がいたら嬉しいけど」
「だってさ」
「ちょっ。まっ」
「ええ。いいですよ。俺はサクラの騎士兼、相棒をさせてください」
「狼竜・・・」
これで、狼竜はサクラの騎士兼相棒をする事になった。
「何買うんだ?」
草原の白栄王[レッザー・バルム]を倒したあと、またサクラと依頼を受けていた。
「刀かな」
「私全く使って無いのあるよ。いる?」
「まじで?ください」
「いいよー」
(優しいな。サクラは武器いらないのかな?)
「サクラ使わないの?」
「刀?あぁうん。使わないかな」
「買ったの?」
「貰ったんだよ。呪いの宝刀[クロム・ディザスター]だってさ」
「呪いの宝刀?」
「なんでも斬った物の即死の部位に呪縛攻撃が走るとか」
「なにそれクソ強いじゃん」
「でも効果切れたけど」
(まじかよ・・・)
「でも欲しいな」
「やるよ。家、来るか?」
「いいの?」
「うん。ついでに泊まっていけば?」
「お泊まりはちょっと・・・」
「いいから泊まれ」
軽い殺気を放つサクラに負け、泊まることにした。
「ここが家だよ」
「で、でかくね?」
「私、一応貴族だし」
(えぇー!まじかよ!)
「ど、どうもすいませんでしtaサクアおじょさま」
「テンパリすぎだこの馬鹿。ふつーでいいよふつーで」
「う、うっす」
中に入るとそれはそれは豪華で、玄関とは思えないぐらい広い。廊下すらも広い。
「ちと待ってて。親父にいいか聞いてくる」
「うん」
走って行ったサクラを見送ったあと、周りを見渡す。
(やっぱでかいなー)
「お客様ですか?」
「ッ!?」
後ろから声が聞こえた。振り向くとメイドさんがいた。
「こんにちは。この家のメイドをさせて頂いているミラ・クロスフォードです。以後お見知りお気を」
(うっわキレー。なんつーか美人だし可愛らしいし、とにかくやばい)
「お、俺は綾辻狼竜です。よろしくお願いします」
「よろしくって何をですか?」
「えっ」
するとドタドタと走ってきたサクラが飛び込んできた。
「狼竜ー!いいってよー!」
「うおっ。サクラ」
(ちょっ。鎧着てないからもろに胸が)
「お嬢様。そこの変態がお嬢様の胸に興奮して、鼻の下を伸ばしてますよ」
「え」
覗き込んでくるサクラを抑え、メイドさんに言う。
「何言ってんの!?しかも初対面の相手に変態て・・・」
「あら、私は初対面じゃないかも知れませんよ?」
「えっ」
「いや、会ってないですけど」
「なんだよ!」
「あはははは」
「サクラまで!」
そんな楽しいひとときを終え、サクラの部屋に向かう。
「今日はベッドに寝るか?ソファに寝るか?」
「ソファで寝るよ」
「わかった」
「ご飯はもう少し待ってな」
「うん」
(どんだけ豪華なんだろうな)
やっぱり、貴族の家は新鮮でいくら見ても飽きない。
サクラの部屋は女の子らしく、水色とピンクがほとんどだ。
ベッドの周りのカーテンなどがだいたいシルクで出来ていた。そのベッドも相当高いだろう。凄くふかふかそうだ。
それに部屋着のサクラは可愛い。部屋と凄く馴染んでる。
「わっぷ!」
「どうした!?」
「いや、うちのペケが飛び込んで来て・・・」
「なんだ、犬か」
「犬?」
「そいつのことだよ」
「え?ハウスバーじゃないの?」
(ハウスバーってなんや)
「もしかして、こいつモンスター?」
手をアマガミされているこいつを見ながら言った。
「そうだよ。懐いて可愛いからよくペットにする人が多いよ」
「へぇ」
すると、ドア越しに声が聞こえた。
「お嬢様。ご飯の用意が出来ましたよ」
「わかった。今行く。だけど少し待っててくれ」
「はい」
「狼竜」
「ん?」
「剣取り行くぞ」
☆
「ここにあるの?」
「あぁ、武器庫にあるはずだ」
「てかさ、何で明かり持ってこないのさ」
「忘れたんだよ!」
武器庫は暗すぎるため、ほとんどが見えない。
「今日に限って電球が壊れたんだよ」
「まぁ、暗くてもそのうち慣れるしな」
とりあえず、適当に手を動かして、剣を探す。
「ひゃん!」
「なぁサクラ。何かすごい柔らかい物を掴んでんだけど、これ何の武器?」
「あたしの胸だー!」
「ごふっ」
サクラから強烈な右アッパーをくらい、少し顎が痛い。
「あ、あったぞ」
明るいところに出て刀を確かめる。
「おぉ」
簡単に言うと漆黒の刀。他の色は特に無い本当に真っ黒な刀だった。
(呪いの宝刀・・・。確かにそんな感じがする)
剣刺しに刺してみた。するとこれまたぴったりだった。
(刀サイズの剣刺し?)
「んじゃ、ご飯食べに行こうか」
「うん」
武器庫から、リビングまではそんなに遠く無く、すぐに着いた。
「サクラ様。皆、準備が出来ています」
ミラはそう言うと椅子を引いた。
(がっつり、メイドの仕事してるな)
「狼竜様も、どうぞ」
「あ、あぁ。ありがと」
座って数秒が経つとご飯が出てきた。
コーンスープにハンバーグ。レタスを主とした新鮮なサラダ。それと、焼きあがったばかりのパン。
「君が狼竜君か。娘から聞いたよ」
「あ、今日は泊めていただきありがとうございます」
「いやいや、それより食べよう。冷めては不味くなる」
はじめにコーンスープから。
(うわうま!)
コーンの甘みとつぶつぶが口の中で広がる。
「どうですか?お口に合いますか?」
「うん。凄く美味しい」
「良かったです」
ハンバーグを切ってみるとこれまたすごい。肉汁がドバドバ出てくる。
(おいおい。毎日こんなの貴族は食べてるのか)
美味しかったせいかすぐに食べ終えてしまった。
「なぁ狼竜。先に風呂入ってこいよ」
「いいのか?」
「うん」
「私も構わんよ。入って来なさい」
「ありがとうございます」
「ミラ。お風呂場にご案内しなさい」
「わかりました」
言われた通り、ミラに付いて行く。
「ここです」
「ありがとう」
「あと、服です」
「あれ?」
「洗濯して置きました」
「え!?ありがとう。手間かかったでしょ」
「大丈夫です」
風呂場に入り、着替える。
(あれ?いつ着替えたっけ・・・)
「まぁ、いいや」
ドアを開けて中に入る。
「やべーな」
広すぎる。まるで温泉に来ているみたいだった。
(プールぐらいあるぞ?)
「湯加減どうですか?」
「うおっ。だ、大丈夫です」
(あれ?そういや電気があるって言ってたな)
「あのー。ミラさん」
「はい。なんでしょう」
「電気って魔法使ってんの?」
「そうです。魔法増加マシンと魔法複式機を使って、電気に問わず、水や火、光などが出せます」
「へー」
身体を洗い、浴槽に入る。
ほとんどが大理石で出来たお風呂はとても豪華だ。
(シャワーやシャンプーがあるって・・・。まじであっちの世界に近いな・・・)
上がろうと思い立ち上がった。
「ん?」
(何か、誰か屋敷に入ってきたような・・・)
気のせいだと思いお風呂から出る。
洗って貰った服に着替え、風呂場を後にした。
リビングに向かうと誰もいない。
(あれ?誰もいないな)
「狼竜様」
「あ、ミラ。サクラは?」
「それが、何者かに連れ去られました」
「ッ!?」
顔が険しくなってしまう。
(あの時の気配は間違いじゃなかった!)
「クソッ」
駆け出していた。玄関に向かい靴を履く。
「待ってください狼竜様!」
「待てない!サクラが危険だ!」
「いやそのーー」
最後まで聞かず家を飛び出した。
☆
「くそ!当てずっぽうに走っても見つかるわけがない!」
そう思いつつも、どこに行ったかなんてわかりもしない。
(聞け!聞くんだ。サクラの声を!居場所を!気配を!)
ザワザワとした王都からサクラの気配だけを見つけ出すのは難しい。
(俺ならできる!考えるな!感じろ!)
元々鍛えていた狼竜は人探しには長けている。
口の感覚、皮膚の感覚など視覚の感覚を全て聞く感覚に移した。
「んんー。離せ!」
(聞こえた!!)
道なんか知らない。ただ声が聞こえた方に走る。
「お?にいちゃん金持ってっか?」
「どけ」
「あ?」
「そこをどけって言ってんだ!」
抑えていた殺気を少し放つ。
「ひっ」
強面の奴らもこの殺気に気づいたのか逃げる。
サクラの気配がどんどん近づいていく。
すると、大きな廃工場の様な場所に着いた。
(輸送の保管の場所か・・・)
ただ、そこも広く探すのが困難。だが、今は聴覚に全てを注ぐ狼竜に聞こえないものは無い。
「ここか」
呪いの宝刀を鞘から出し、振るった。
大きな扉は綺麗に切り刻まれた。
「サクラ!」
中に入ると拘束されたサクラと、仮面を被った男が立っていた。
「よく来たなあ。助けに来たのか?」
「そうだ」
狼竜の声は怒りに包まれていた。
「助けたいのか?」
「何が言いたいんだ?」
「ふはは。こいつに勝ったなら俺達は負ける!」
フッと現れたのは剣を使う剣士。
「誰だ?」
「この国、アルバスで2番目に強いとされる、グラン・バルゼリットだ」
「んらん!?」
サクラすらもが驚いている。
そんな事気にせず狼竜は吐き捨てた。
「勝つ?殺すの間違いか?」
「ッ!?」
サクラ、グラン、仮面の男。皆が震える程の殺気を放った狼竜。
「行け!グラン!」
剣を取ったグラン。素早い斬撃で狼竜を斬ったと皆が思った。
「え?」
そこに狼竜はいなかった。
「上だよ」
「!?」
なんとか防ぐことが出来たその斬撃。剣からの衝撃で手が痛い。
「くっ!」
グランは3歩下がった。
「スキルを使うしか・・・無い!」
斬撃が来たのは走る音と同じだった。
「どうだ!」
しかし、狼竜は受け止めていた。
「!?」
(何故だ!?音速より速い俺を止めただと・・・)
「なんだ?2番目はその程度なのか?」
「ふざっけんな!」
同じく死角に入ってグランだが、攻撃をしたグランがダメージをおった。
「くそ!なんでだ!何で俺の《音超える者》[オーバー・スピード]についてこれる!?」
「これで終わりだ」
1歩歩いた狼竜は、グランの剣、腕、足を切り刻んだ。
「綾辻流初段・竜椿[りゅうつばき]
見た事の無い剣技にグランはなすすべなく散った。
「ぐあああ!」
「うるせぇ。魔法があるんだ。治癒魔法ぐらいあんだろ」
狼竜が向けた視線は仮面の男。
「や、やめろぉ!」
(銃!)
敵が使うのはマシンガン。ただ、乱暴に放たれている。
狼竜はその、速い、速い速い弾丸を全て見極め、刀で弾く。
「お、おい!嘘だろ!?」
「嘘じゃねえ」
「や、やめ」
1歩1歩。確実に進んでいく。そして、敵まで寄るとマシンガンを切り落とした。
足を掛け、倒れ込む男の首に刀を置く。
「貴様が負けた原因は、サクラを連れ去らった事だ。2番目の奴と1番目、それと3番目がいたのなら負けていたかもしれないな」
「なっ」
「じゃあな」
首を落とそうとした時、横から2発、放たれた。
それを剣で斬る。
(弾丸か)
「そこまでです狼竜様」
「ミラか。なんでだ?こいつはサクラを連れ去らった。殺さないとまたやりかねない」
「そうですが、一旦、仮面を取ってから決めてください」
「仮面?」
ミラに言われ、仮面を外すすると。
「なっ。サクラのお父さん!?」
「そうです。セルム・アイヴェルクルム様です」
「ははは。済まないねえ狼竜君」
「なんで・・・」
「いや君はね。サクラが初めて泊めたいといい出した子だったから」
「え?」
「もしかしたら好きになったんじゃないかと思って」
「んんん!?」
(サクラ拘束したままだった・・・)
サクラを拘束していた物を切り落とし、サクラを開放した。
「お父さん!どういうこと!?」
「いやー。サクラが男連れてくるからさ。惚れた男を確かめようと思って。あ、あとミラ。グランさんを治癒魔法で回復させて」
「わかりました」
ミラは治癒魔法でグランの回復を始めた。
「だからってさ!こんなやり方はひどいよ!」
「だって、こうでもしないと本気出して貰えなそうだったし」
「あ、いえ。俺、まだそんな本気出してないです」
「えっ」
あれだけ強くてまだ本気じゃないの?って顔で見られた。
「まぁでも、狼竜君ならサクラを任せられるかな」
「だから!お父さん!」
そんなサクラを無視し、セルムさんは続ける。
「君はサクラの・・・騎士をやってみる気はないかい?」
「騎士?」
「うん。サクラを・・・守ってくれ」
「お父さん!私は大丈夫だって・・・。その、確かに狼竜がいたら嬉しいけど」
「だってさ」
「ちょっ。まっ」
「ええ。いいですよ。俺はサクラの騎士兼、相棒をさせてください」
「狼竜・・・」
これで、狼竜はサクラの騎士兼相棒をする事になった。
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でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
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アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
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「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」
言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。
「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」
「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」
先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。
彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。
だけど顔は普通。
10人に1人くらいは見かける顔である。
そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。
前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。
そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。
「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」
彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。
(漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう)
この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。
カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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