双剣使いの極狼零竜《バースト・ゼローグ》

文字の大きさ
18 / 22

『強敵4』

しおりを挟む
狼竜は屋敷に向かいながら、感知することの出来ない魔法を、破壊する術を考えていた。
(ただ単純に魔法を放つか。断ち斬るか。殴って破壊するかか)
「っても感知できないのか。場所がわかんねえ」
そう、魔法の感知はとても簡単らしい。人類が進歩して、物のがそこに有る無い、『感知』がとても発達した。勘もその一つだ。感知は魔法によるものだが、勘はそのあくまで一方的な思考。外れればそれだけ、希望だ。それを、絶対にしたのが感知。その感知を無効化、自分の存在を自重しない地下は、一定の範囲内を感知不能にする魔法か、あるいは自然的な発動によるもの。
(出来れば自然がいいな・・・)
感知無効化が人間によるものじゃ、無かったのなら、突破口はある。
自然的感知無効化なら、必ず、感知できる時がくる。それが、いつになるかはわからない。
(自然的感知無効化でも、手っ取り早いのは強行突破か)
手早いとはいえ、物体を見つけられないと意味はない。
(物体・・・?そうか!物体だ!)
物体まで消せるわけじゃあないなら、いざ見つからなかったら探してぶっ壊そう。そう決めた。
すると、誰かに見られている感覚に襲われた。
「ッ!?」
あたりを見渡すが、誰もいない。
「気のせいか・・・?」
気にせず、屋敷に走り続けた。
「グルルッガアアアア!」
「は・・・?」
竜であろうか。いや、竜だ。あの凛々しい感じ、気高くも、美しい鱗。各種色こそ違えど、威圧感はすべてを覆す強さ。
(こんなにいるのか?ただでさえ強いのに、こんなに一気に来たら、死ぬ・・・)
紅蓮の焔。澪殺の氷華。淡駒の風貌。そして、隠れ属性の竜。最狂の水爆。
4匹の竜が、狼竜の前に立ち塞がった。
(でも、こんなタイミングよく来るか?敵の竜か?)
4匹の竜は待っているかのように、宙に羽ばたき続けている。
(サクラを守りたい!助けたい!なら、竜達なんかで止まってられるか!!)
「こいよ、竜ども」
「キュガ、ガアアアアアアアア!!」
先頭をきったのは、赤い竜。
先の戦闘で、竜の鱗は硬質だとは、わかっていた。もちろん、1匹1匹の鱗に個性はある。でも、大体同じ位硬いはずだ。
狼竜は、ゆっくりと、抜刀する体制を作った。
「少々手荒だが、勘弁しろ。死ぬか死なぬかは、お前次第だ」
放たれた言葉と、迫りゆく巨竜。
(体制は出来ている。あとは、斬るだけだ)
斬れるかどうかの心配なんてしていない。だだ、この剣達ならば、竜ごときの鱗なら、容易く斬れると信じている。
「綾辻流・花吹雪」
この技は、花が散っている様子をモチーフに作られたらしい。花見をする人々は、散りゆく花をあまり見ない。故に、主体しか見ていない。だがこの技は、散りゆく花を、手の動きで刀。剣先として捉えさせ、たくさんの花びらが散っていて、様子を捉えさせない。あちらこちらと目に周り、ピントを合わさせない技。それ故に、狼竜自身を見れなくなり、一方両断されてしまう。
そして、王牙を使っているためか、安定感がある。もちろん、シオンでも使えるが。
「あとは、3匹」
(竜も馬鹿ではないはず・・・。学習はするだろう。花吹雪を見破られたのだとしたら、交わされるだろう。なら・・・!)
「ッ!!」
風の斬撃。鎌鼬だ。
「風の竜か。あと、氷」
王牙を鞘にしまい、シオンを抜刀した。
(俺だってな、努力はするんだよ。親父、爺ちゃん!)
「グガアアアアア!!」
2匹のコンビネーションアタック。氷の塊と、鎌鼬の追い討ち。さらに、双方、とてつもなく速い。
「いくぞ、シオン」
『おっけー』
「属性・開放」
鮮やかな炎と、電撃の渦。
二属性。別の名を、デュアル・バースト。
かつて、2人の大魔法使いが行った、究極にして最大の魔法。光と闇の演舞。
二属性の、合わせ魔法の誕生だった。完璧なタイミング、失敗したら魔法の制御が効かなくなり、自身の魔力が暴走を果たす、欠辣の魔法。
人生を、天秤に合わせなければ、出来ない魔法。故に、誰も行わない。この魔法を、デュアル・バーストの威力を越えられる、一属性魔法は存在しない。
1人が一属性魔法を放ち、また1人も一属性魔法を放つ。ただ1つ、単純そうに見えて、めちゃくちゃ難しい。タイミング。
魔法を身体に入れるのは、自身の魔力と争う、身体の中の決戦。自身の魔力はその入って来た魔法を敵とみなすからこそ、暴走が働く。入ってきた魔法は、自身の魔法と合わさり、二度と消えない。だが、魔力の暴走は止まらない。
放った魔法は合わさることで、身体を使わず、暴走を果たす。つまり、絶大な魔法が生まれる。
魔法付与武器[エンチャントウェポン]は、その名の通り、属性魔法が付いた武器だ。故に、武器を人間と置き換え、その属性魔法が魔力だ。同じ武器に、もう1つの属性は付けられない。何故なら、タイミングなんて存在しないからだ。
しかし、狼竜はそれをやってのける。何故なら、シオンを、1人の人間としているから。剣が意識を持っている。故に、タイミングは存在する。ならば、二属性魔法付与武器も、出来る。
「爺ちゃん。爺ちゃんが、刀の技を作ったんだ。俺も、爺ちゃんの『技』に頼ってきたよ。でも、俺は日本刀しか知らなかった。だから、シオンに出会って、剣の種類が、扱える剣が増えたよ。そして俺は、俺だけの、俺にしか扱えない『技』を作った。爺ちゃんを超えるたいよ。いや、超える。『技』を作ったのは、その土俵に立つためだ。だから、お前らに付き合ってる暇はない」
シオンの、炎雷が唸りを上げた。
「綾辻狼竜流。デュアル・バースト=クレイム・グラスト!!!」
炎雷は激しくなり、剣劇が炸裂。炎で、焼き、雷で動きを止める。言うなれば、焼け斬った。
炎雷と共に消え失せた竜達。
「あとは、あいつだ」
今までずっと見ていた竜。周りの竜を助けるわけでも無く、ただただ観ていただけ。
「《最後の七宝竜》[ラスト・インクルシオ]」
シオンが形状を変え、弓えと姿を変える。
色は青く、それはとても、綺麗だ。
ただ不思議なことに、矢もなく、弦も無かった。だが狼竜は、迷うこと無く相手に向かい、手を引いた。すると、青い電撃のようなものが弦となり、また、矢と化した。
矢が空を切った。雷撃の速さで飛んでいく。矢は、竜を貫いた。
しかし、竜は、何事も無いように羽ばたく。
「水、か」
この水竜は、身体そのものが水で出来ていた。それに、雷が効かない超純水。
「まずったな」
すると、竜が動き出した。尻尾が3本に別れ、狼竜を襲った。
しかし、狙いは狼竜では無かった。先に殺られた、竜だった。尻尾に飲まれた竜は水竜の顔まで運ばれる。
「おい、お前まさか・・・」
喰らった。同族を。
丸呑みにした竜達は、まだ見える。
「あいつ、何する気だ?」
瞬間、竜が覚醒した。身体の周りに、炎、氷、風がさまよう。
「そうか、それがお前の能力か」
水竜は、口を大きく開け始め、息吹をため始める。そのブレスは、四属性。
人間を、竜に置き換えただけ。だか、それはデュアル・バーストの域を遥かに越えている。
「そりゃ、そうか。器官を、強制発動させてるんだもんな」
火竜。氷竜。風竜。そのすべてを手に入れた水竜は、四属性を扱える。
あくまで、炎を出せるのは、火竜の器官を使っているからだ。
ほかの属性も同じ。
「水竜に、3匹を合わせただけ、か」
狼竜は、溜めている息吹を観ている。
「何事も、やるには慣れだよな。だけど今のお前には。それがない。まだ、お前の最大の息吹の方が、それより俺には強いかもな」
水竜の息吹が炸裂した。
狼竜は避けようとはせず、右手を前に突き出した。
「ふっ!!!」
その息吹の中心、核を掴み取るように、息吹を、握る。
狼竜の右手に水竜の息吹が収まった。
「最後に言っておこう。足し算じゃ、だめだ。掛け算にしないとな」
右手に狼竜とシオンの、炎雷を溜めた。
「終わりだ!!」
高く飛翔した狼竜は、水竜の身体まで行った。
今まで避けようとしなかった水竜が。本能か。はたまた恐怖か。その何かが水竜を動かした。
「暴れんなよ」
攻撃してきた水竜を左手で抑え、溜めた右手を放った。
空中では、大爆発が起こった。それ眩くて、見えないほどに。木々は倒れ、範囲内の物は消し飛んだ。
スッと、狼竜は地面に着地する。
「だから言ったろ。俺はこんなとこでは止まれないと」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

甘そうな話は甘くない

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」 言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。 「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」 「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」 先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。 彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。 だけど顔は普通。 10人に1人くらいは見かける顔である。 そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。 前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。 そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。 「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」 彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。 (漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう) この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。  カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...