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1. 殿下の秘密 - ①
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「俺、殿下は女だと思うんだ」
「は?」
休憩用の控室にて昼食を食べた後、俺は内密な話をするために厳重に防音結界を張った。同僚のルイが俺の話に眉を顰める。
俺は、どうしてもこの秘密を誰かに言いたくて仕方なくて、相部屋で信頼関係があり、口が堅いルイに話すことにした。
「……どうしてそう思うんだ?」
「可愛いから」
ルイは軽く目を見開くと、はぁ、と小さなため息を吐いた。そして遠くの方に見えている王太子殿下に目を向ける。すぐに俺に視線を戻した。
「確かに殿下は中性的な外見をしていらっしゃるけど、遠征中に川に入ってるところも見てるじゃないか」
「でもいつも白いシャツ着たままだ。絶対服脱がないだろ」
「高貴な方は私たちの前では脱がないよ」
「可愛いし」
「可愛い可愛い言うんじゃない。不敬だよ」
「褒めてるのに?」
「王族の外見について我々が評価を下すべきじゃない。それに男がそんなこと言われても嬉しくない。可愛いって言われてお前は嬉しいの?」
「くそ真面目だな。俺は嬉しくないけど殿下は女だから……」
「チャールズ」
ルイは眉を寄せた。
「いい加減にしろ」
「だって……可愛すぎて好きになっちゃいそうなんだよ!」
俺が叫ぶと、ルイは俺に憐れむような視線を向けた。
*
俺は惚れっぽい、らしい。
自分ではそう思ってない。
好きな人ができて周りに報告すると、「知ってた」「またか」「惚れっぽいな」といつも同じ反応をされてしまう。
惚れっぽいんじゃなくて、素敵な子が周りにたくさんいるし、運命の出会いをしてしまったら仕方ないだろう。
好きになると俺は隠していることができないので、とにかく相手にアピールする。
まずはできる限り頻繁に会いに行って挨拶して名前と顔を覚えてもらう。以前は好きな子の前では自分の自慢話ばかりして上手くいかなかったけれど、ルイに色々とアドバイスをもらった結果、状況は改善された。好かれたかったら自分の話をするより相手の話を聞くのが良いと言われた。
騎士団で一番か二番かというほどモテるルイが言うなら間違いない。
俺はルイのアドバイスを実行し、相手の話をよく聞くようにした。そして相手が好きそうな話題を振り、いつも笑顔でいるように心掛けた。
その結果、箸にも棒にもかからない状態から、いい友人にまでは到達するようになった。しかしいい友人までだ。
俺が分かりやすく好意を伝えているというのに、仲良く話をするだけで終わるし、他の男へのプレゼント選びに付き合わされたことまである。
なんでだよ。
「今度は殿下か。娼館の女の子の方がまだ望みがあるな」
「娼館の女の子はみんなお前が好きじゃん!」
「……」
ルイは否定せずに笑った。ベージュの髪がさらっと揺れて、その様子が非常に様になっている。
この男は、女の子に邪な視線など向けたことありませんというような涼しい顔をしているが、殿下の近衛騎士で一番か二番かという頻度で娼館に通う。
俺も恋人も婚約者もいないので、溜まってむずむずする前にそれなりの頻度で通うが、皆俺の前でルイの話をしてくるので嫌になって足が遠のいている。
女の子からは、ルイは普段は優しいのに、挿入がいつもバックからで激しいのがたまらないとか、聞きたくねぇんだが、という同僚のシモ事情が耳に入ってくる。
勘弁してくれと思っている。
「いつもは応援してあげるけど、殿下相手じゃ応援できないな」
「なんであんなに可愛いんだ。職場に邪な気持ちを持ち込んでしまう」
「いいんじゃないか?」
ルイは一瞬だけ殿下に視線を投げた。
「本人をじろじろ見たり、触ったりしなきゃ、好きでいる分には迷惑かけてるわけじゃないよ。相手の幸せを考えて行動するって考えれば普段の仕事とやることは変わりないし、少し個人的な好意が混ざったくらいならあの方はきっと受け止めてくれる。ただし成就は期待しないことだな」
俺も殿下に目を向けた。
殿下は文官と書類仕事のやりとりをしているが、俺が見ていることに気付くと、湖のような明るい青い瞳を細めて微笑んでくれた。
俺とルイは立ち上がって礼をした。殿下は楽しそうに笑って、ジェスチャーで着席を促した。
やっぱり可愛すぎる。
ルイがふっと笑った。
「チャールズは本当に面食いだね」
「人は自分にないものを求めるものなんだ」
「お前もそれなりな顔してるけどね。キリッとしてて男らしいって、顔は意外と人気あるよ」
“顔は”も“意外と”も余計ではないだろうか。慰めるならもうちょっとちゃんと慰めて欲しかった。
ルイは俺の顔をじっと見つめた。りんごのような色をした、明るいグリーンの瞳が俺に向いている。
輝かしい顔をしている。
「お前に言われても嫌味だ。俺が好きになった子、みんなお前のこと好きじゃん」
ルイは否定せずに笑った。
「は?」
休憩用の控室にて昼食を食べた後、俺は内密な話をするために厳重に防音結界を張った。同僚のルイが俺の話に眉を顰める。
俺は、どうしてもこの秘密を誰かに言いたくて仕方なくて、相部屋で信頼関係があり、口が堅いルイに話すことにした。
「……どうしてそう思うんだ?」
「可愛いから」
ルイは軽く目を見開くと、はぁ、と小さなため息を吐いた。そして遠くの方に見えている王太子殿下に目を向ける。すぐに俺に視線を戻した。
「確かに殿下は中性的な外見をしていらっしゃるけど、遠征中に川に入ってるところも見てるじゃないか」
「でもいつも白いシャツ着たままだ。絶対服脱がないだろ」
「高貴な方は私たちの前では脱がないよ」
「可愛いし」
「可愛い可愛い言うんじゃない。不敬だよ」
「褒めてるのに?」
「王族の外見について我々が評価を下すべきじゃない。それに男がそんなこと言われても嬉しくない。可愛いって言われてお前は嬉しいの?」
「くそ真面目だな。俺は嬉しくないけど殿下は女だから……」
「チャールズ」
ルイは眉を寄せた。
「いい加減にしろ」
「だって……可愛すぎて好きになっちゃいそうなんだよ!」
俺が叫ぶと、ルイは俺に憐れむような視線を向けた。
*
俺は惚れっぽい、らしい。
自分ではそう思ってない。
好きな人ができて周りに報告すると、「知ってた」「またか」「惚れっぽいな」といつも同じ反応をされてしまう。
惚れっぽいんじゃなくて、素敵な子が周りにたくさんいるし、運命の出会いをしてしまったら仕方ないだろう。
好きになると俺は隠していることができないので、とにかく相手にアピールする。
まずはできる限り頻繁に会いに行って挨拶して名前と顔を覚えてもらう。以前は好きな子の前では自分の自慢話ばかりして上手くいかなかったけれど、ルイに色々とアドバイスをもらった結果、状況は改善された。好かれたかったら自分の話をするより相手の話を聞くのが良いと言われた。
騎士団で一番か二番かというほどモテるルイが言うなら間違いない。
俺はルイのアドバイスを実行し、相手の話をよく聞くようにした。そして相手が好きそうな話題を振り、いつも笑顔でいるように心掛けた。
その結果、箸にも棒にもかからない状態から、いい友人にまでは到達するようになった。しかしいい友人までだ。
俺が分かりやすく好意を伝えているというのに、仲良く話をするだけで終わるし、他の男へのプレゼント選びに付き合わされたことまである。
なんでだよ。
「今度は殿下か。娼館の女の子の方がまだ望みがあるな」
「娼館の女の子はみんなお前が好きじゃん!」
「……」
ルイは否定せずに笑った。ベージュの髪がさらっと揺れて、その様子が非常に様になっている。
この男は、女の子に邪な視線など向けたことありませんというような涼しい顔をしているが、殿下の近衛騎士で一番か二番かという頻度で娼館に通う。
俺も恋人も婚約者もいないので、溜まってむずむずする前にそれなりの頻度で通うが、皆俺の前でルイの話をしてくるので嫌になって足が遠のいている。
女の子からは、ルイは普段は優しいのに、挿入がいつもバックからで激しいのがたまらないとか、聞きたくねぇんだが、という同僚のシモ事情が耳に入ってくる。
勘弁してくれと思っている。
「いつもは応援してあげるけど、殿下相手じゃ応援できないな」
「なんであんなに可愛いんだ。職場に邪な気持ちを持ち込んでしまう」
「いいんじゃないか?」
ルイは一瞬だけ殿下に視線を投げた。
「本人をじろじろ見たり、触ったりしなきゃ、好きでいる分には迷惑かけてるわけじゃないよ。相手の幸せを考えて行動するって考えれば普段の仕事とやることは変わりないし、少し個人的な好意が混ざったくらいならあの方はきっと受け止めてくれる。ただし成就は期待しないことだな」
俺も殿下に目を向けた。
殿下は文官と書類仕事のやりとりをしているが、俺が見ていることに気付くと、湖のような明るい青い瞳を細めて微笑んでくれた。
俺とルイは立ち上がって礼をした。殿下は楽しそうに笑って、ジェスチャーで着席を促した。
やっぱり可愛すぎる。
ルイがふっと笑った。
「チャールズは本当に面食いだね」
「人は自分にないものを求めるものなんだ」
「お前もそれなりな顔してるけどね。キリッとしてて男らしいって、顔は意外と人気あるよ」
“顔は”も“意外と”も余計ではないだろうか。慰めるならもうちょっとちゃんと慰めて欲しかった。
ルイは俺の顔をじっと見つめた。りんごのような色をした、明るいグリーンの瞳が俺に向いている。
輝かしい顔をしている。
「お前に言われても嫌味だ。俺が好きになった子、みんなお前のこと好きじゃん」
ルイは否定せずに笑った。
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