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因縁編

13 愛撫と、上書き・後編*

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 伯爵家のお風呂は、それなりに大きい。
 監禁されたときのお風呂は一人用の狭いバスタブだったけど、ここはちょっとした部屋くらいの大きさがある。

 痺れ薬の影響でわたしはまだ上手く歩けないから、まるで当然かのように、兄様はわたしを長椅子に座らせ、“洗い”始めた。

「……っ」

 椅子に座らされ、手のひらを石鹸の泡で覆った兄様が、わたしの後ろ首から背中にかけて撫でていく。強く擦るのは赤くなるし、肌にもよくないということを兄様も知っているらしく、動きはとても繊細だった。

 優しいからこそ身体がビクビクする。洗われているだけと思い込んでも、まるで全体を愛撫されているかのようだ。大量の泡を使って二の腕を揉みこまれたと思ったら、次は胸。泡と共に桃色の蕾をさわさわと洗われ「やぁ……っ!」と大きな声が出た。

「なんで、わたしだけ裸……っ」
 
 兄様は風呂で使用する白い履物を着用していて、肌を見せているのは上半身だけ。なのにわたしは全裸。余計に恥ずかしかった。

「俺は『兄様』として、手足を動かせない妹の補助をしているだけだよ。だから脱ぐ必要はない。それとも脱いでほしいのかい」

 笑う兄様に、ふるふると首を振る。
 そうだ、兄様は言っていた。
 今は『兄様』だから、監禁部屋でしたようなことはしないと。

「ここもしっかり洗わないと」
「そこは自分でしま……あぁっ!」

 手がわたしの太もも内側に入り込み、一番敏感な場所にさしかかる。悪戯に割れ目を往復したと思ったら、まだ皮にかぶっている肉芽を軽く擦られる。

 ──やっぱり屁理屈なような気がする……。

「…………」

 兄様が無言でわたしを見ている。

 目を合わせられない。
 顔を見られたくない。

 そうやって羞恥の時間に耐えていると、兄様が湯の入った桶を持ち上げ、身体の泡を流し始めた。温かくて気持ちいい。少しの間だけ、目を瞑る。体中についていた汗やら体液やらがなくなって、とってもさっぱり良い気分。

 ふと、後頭部に指をかけられた気がした。
 目を開けると、鼻同士が当たりそうな距離に兄様の顔がある。

「今日は、俺を怖がらないね。どうして?」

 真剣味のある声音。
 
「あのときはずっと怖がってたよね。放してって、イヤだって。でも今日は、そういう感じじゃないよね」

 たぶん、監禁部屋で兄様と一緒にお風呂に入ったときのことだろう。
 確かにあのときのわたしは、兄様にとてつもない恐怖を覚えていて、逃げることしか考えていなかった。

「どうしてだい……?」

 わたしと同じ……いやそれ以上に綺麗な紫水晶の瞳が、小さく揺れた。
 戸惑うように、恋焦がれているように。

「………………」

 わたしは何も言えなかった。
 そっと、目を伏せる。

「もう……大丈夫です。さっきも、助けてくれて……ありがとう、ございました」
「っ」

 すると兄様が、勢いよくわたしの後頭部を持ち上げて。
 唇を奪ってきた。

「や……っっ」

 兄様のクセが分かるようになってきた。兄様は感情的になると、まずキスをしてくる。口を大きく開いて、わたしの中へ入ってきて、支配しようとする。俺を見て、と言わんばかりに、強く……とても強くわたしの舌に絡みついてくる。

 頭がぼうっとしてきた。
 上半身から力が抜ける。
 両足を開かされたことに気付いたのは、そのときで。

「に、いさま、それは……っ!」

 わたしの股に、兄様が顔を近づけていた。

「…………まだ他の男の匂いがする」

 苛立たしげに呟いたと思ったら。

「やだ、そこはきたな…………っ!」

 れろりっ、と、舐め始めた。そこは指で解したり雄を迎え入れたりする場所であっても、舌で直接舐めるような場所ではない。ただでさえ足を開いて他人に見せるのは恥ずかしいのに、顔を近づけられて凝視されるなんて。

 兄様の頭を手で押し返そうとするのだけれど、全く相手にされない。その間にも、兄様は舌先を細めて割れ目の中に侵入し、愛液を掬ってにゅちにゅちと音を立てていた。

 ぬるぬるの舌で浅い部分を抜き挿しされるのは気持ちいいけれど、中で自由自在に動き回れる指や、張ったエラで膣内を掻きまわせる雄に比べると、物足りない。ジンジンするような熱が広がっていき、わたしの“奥”が切なくヒクつく。

「んぁ……あぁぁっ……」

 すがる物が欲しくて、思わず兄様の頭を抱き込んでしまう。
 兄様はまったく意に返さず、秘壁から舌を抜いたと思ったら、今度は肉芽に狙いを定めたようで。

 すでに包皮から顔を覗かせているソレに、唾液をたっぷりと含んだ舌が触れる。にゅるんにゅるんと優しく愛撫し始めた。舌先で敏感な部分をねぶられ、ツンツンされ、皮を剥かれて優しく吸われる。

 快楽の波がとめどなく押し寄せ、漏らしたみたいに愛液がしたたり落ちた。

「っっあ……!」

 兄様はそこで顔を離した。
 もう少しで達しそうだったのに止められたから、思わず涙が出る。

「こんなに溢れさせて……」
「う……っ」
「やらしい身体になったね、ルディ」

 指が、ぬぷりと沈んでいく。
 待ち望んでいたかのように、体が歓喜に震えて。
 足の指先までピンと張ってしまう。
 
「ほら、聞こえるかい。ルディのここから」

 兄様が指を出し入れする。
 ぐちゅぐちゅと、とても卑猥な音が浴室に響いた。

 自宅でこんなことされるなんて、と。
 背筋がゾクゾクする。

「やだ……っ」
「ダメだよ、ちゃんと聞いて」

 耳を塞ぎたいのに、兄様にブロックされる。

「指を咥え込んできゅうきゅうしてくる。すっごいピクピクして、涎がたっぷり。どれだけ美味しいんだろうね、俺の指」
「言わないでぇ……!」
「ここを折り曲げて……」
「っっ」

 イイ所に指が当たって、体が大きく震えた。
 でも、まだ。
 ゆるゆると微弱に撫でられるのも、もう片方の手で胸を揉まれるのも、耳を甘噛みされるのも、あとほんのちょっと、刺激が足りない。

「イきたい?」

 兄様がわたしの耳に舌を入れてきた。
 れろれろと舐められ、背筋がビクッと反る。

「あっ……あっ……」
「イきたいよね」
「あっ……あぁあ」
「欲しがって。俺を」
「あぁ……っ」
「ルディは俺のだけど、俺はルディのものでもあるんだから。だから欲しがって」
「や……っ」
「強情」

 甘く、囁かれて。
 気持ちイイところを、何度も擦られて。

「んぁあああっっっ!」

 わたしは、兄様の腕の中で達した。
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