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第七話:くるま交差点(中の中)
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(前回までのあらすじ)
ジェイミー達はうっかり道行く若者たちとチーマー狩りをしそうになったり、おかまバーに厄介になったり、ニトロエンジンぶっぱなしたり、紆余曲折を経てスモーマフラー姉古川店にたどり着く。
車たちの声が聞こえるノブ子、ギャル語を駆使して言葉のドッチボールを繰り広げるメルザの協力を経てなんとか家出野郎コアラーと、そのコアラーの子を妊娠してしまったゲリウスに事の顛末を聞くことができた。
それは、スモーマフラーという大企業と裏で暗躍する十俊英が企む驚くべきの保険詐欺案件だった……。
そして今回の敵役、十俊英たちは謎の地下室で絵にかいたような悪役の秘密会議をしていたのであった。
新たに十俊英に加わった内部監視のサリィに苛立つ十条と非津。彼らが次に知ったのは、処刑されたはずのイワンの遺体が消えたという部下からの報だった。
***
「HIS、HIS、あれ、HISだっけ? まあいいしー」
ィイイイイイイイン!
ウオオオン、オンオンオン!
二台の唸りはおさまらない。流石のジェイミーも双子と一緒にオロオロと左右に首を回すだけだった。
「やめなさい! どういうつもりなの、メルザ!」
ありゃ、とメルザは狂猛とした目つきから我に返った。
「あなた。何を企んでるの!」
「やだー。どなんないでよ、ノブリン。ブチサゲなるじゃん」
「メルザさん。本当にどういうつもりなの」
どういうつもりっていわれてもなー、とメルザはストラップをつかんでスマホをブンブン回しながら宙を向いた。
車たちを虐めたいの? そうノブ子に聞かれ、ようやくメルザは、違うって、と大声で否定した。
「だからー。悪いことしてる奴らのショウコとかいいから、いまはぶちゃけ愛じゃね?」
「そのとおりでしゅ!」
「メルザしゃん優しいでしゅ!」
「優しい?」
ジェイミーは背後で納得する双子に驚いた。
「ゲリウスしゃんの愛な心でしゅ」
「こあらーしゃんの燃える恋路の先でしゅ」
こんな状況で大事なことなんて人それぞれだが、確かにそれも答えの一つだろう。ジェイミー達が後回しにしかけていたそれにメルザは触れただけだったというわけだ。
「ゲリ子がコアラーっちに対してラブなんか? 子供を産む気があるのか? 今大事なんは二人の未来でしょ」
「うーん……。じゃあ、メルザさん。さっき言ってたHISって……」
「あれBFF(ベストフレンドフォーエバー)から教えてもらったバッテリーあがりんときの呪文だし。発奮か脱糞はするかなーって」
ブォン、ブォン、ピッッッピーーー!
野太く荒い音を立てだしたのはゲリウスの方だった。
「ノブ子さん! 一体ゲリウスは何って!?」
「ジェイミー! ずっと言ってるの。責めないで、だって!」
「責める!? 責めっって……」
オォン、オォン、ヒィィィィンーー、パッパー……。オォン、オォン。
数十秒もゲリウスは荒い調子でうなり続けた。
「不幸な事故だったって……。この人? いえ、車ね。を好きになってしまったこと、この車と楽園に行き、子をなせればどれほどいいか、と思ってしまった……」
その後、距離を置いて身を震わせるようにしていたコアラーの方からも同じ調子で、遠巻きに唸りがあがった。ノブ子はそれも訳す。
「俺っちたちは偶然にして同じことを思った。それが、人間だけが犯すと思っていた罪だった」
なんだかミュージカルの中にでもいる気分だ。車特有の会話なのだろうか。懺悔室にいるかのようにやけに事細かに白状しすぎる。なんだか取り乱した様子と語る言葉が一致しない感覚がある。
「ただの不倫でしゅ、できる人間のたなしみでしゅ」
「困ったなら、軽井沢の旅館で裸でごろごろして外を散歩すればいいでしゅ」
「まあこのプチAY(頭弱い)兄弟の言う通りかもねー。駆け落ちっしょ」
「ちょっとみんな、好き好きに言い過ぎ、ノブ子さん集中してるんだから」ジェイミーはノブ子をみた。彼女は静かに電子音をたててうなるゲリウスをじっと見つめていた。
フィッ、ヒィィィィンーー! パッパー、パッパー!
またゲリウスが何かを強く発した。ノブ子の戸惑い顔をみてジェイミーは促す。
「ちょっと、分からないというか……。人間は自分たちが消えれば終わりだと思っているから気楽なもんだって、言ってる……」
「そうか。ノブ子さん。多分だけど、車たちには僕らが理解できていない常識があるみたいだ。今は考えすぎないようにしよう」
「ねえ、ジェイミー。多分だけど、メルザの思いつきで言ったHSSの意味って……」
「うん。罪、を問いただすような言葉じゃないかな」
「この二人……、二台、ここまで苦しんでいるってことは、胸の中では添い遂げたいという意があるってことだと思う」
「まだ結論を出すのは早いよ。僕らは人間たちが犯した罪を暴かないといけない」
ピットの外でクラクションの音が響いてきた。姉古川店の人間かと、ジェイミー達は身構えたが、駆け足で入ってきたのは晴夫だった。
「おーい。お前ら」
「おとうしゃんでしゅ」
「無事でよかったでしゅ」
「なんとかな。おいていくなんてひどいよぉ」
双子以外は晴夫に向ける視線は冷ややかだた。真っ赤な頬に少ししゃがれた声。たるんだ首元には何個ものキスマークがあった。
「ハルオ。よくここまでこれたね」
「まあな。スナックのママの車に乗せてもらったぜー」
「へー」
「それより外が大変なんだよ。ちょっと来てくれよぉ!」
せわしなく体を左右に揺さぶってピットを出て行ったハルオの後を追い、一体何かとジェイミー達は外に出てみて身を震わせた。
先頭の一台、おそらくハルオが乗せてもらったというスナックのママの車だろう。女装したおじさんが乗っていた。
そしてその後ろには、数十台、運転席にも助手席にも誰も乗っていない車たちがピットを囲むように並んでいた。ヘッドライトの束のあまりの光量が、この姉古川店を焼くほどであった。
***
十条はいつにも増してうっとうしそうに眼下のくまを歪ませた。
「言うに及んでそんなたわごとを……、任せた俺が恥ずかしいわ!」
「申し訳ありません。ただ、そうとしか言いようがなく……」
部下を強く叱責しながら急ぎ足に、イワンの死体を運んでいた8トントラックのリアに向かう。
「……、……」
荷台の中を見ても何も言えなかった。中にはイワンを包んでいた分厚い死体袋が一つ、中身なくスカスカの状態であるだけだった。
十条、非津、そして部下二人は荷台の高さから半端に下がったパワーゲートを上げも下げもせず乗り込んだ。四人分の足音が中で木霊する。
「お前ら、死体が袋の中から自力で出てどこかに行ったと言いたいのか?」
「おい十条、話は後にしないか。こいつらが時間通り名古屋に着かないと足がつくぞ」非津が流石に見ていられず割って入った。
「ドライバーの変わりは用意してある。こいつらからどうしても聞き出さんといかん」
トレーラーの中は声が良く響く。十条と非津の苛立ったやり取りは部下二人にも痛く響いた。
「お前たち、先ほど幻覚を見たと言っていたな」非津はここに到着した直後の部下二人の弁明を思い出した。
「はい」
「もう一度、お前たちが見た幻覚は何か、詳細に話してくれ」
非津はあくまで落ち着いた口調で問いただす。無言で十条も部下二人の方を向いた。
「はい、俺たちが荷台を開けた時……、そ、その、そこにはのっぺらぼうがいたのです。そして、その、のっぺらぼうが俺たちに青い目と青い霧を見せてきて。気がついたらイワンのいた死体袋には誰も入っていませんでした」
「俺も、同じく。顔に何もパーツがなく、つるつるで、ほんとうにのっぺらぼうでした。こいつと二人で……、多分、10分は気を失っていたと思います」
「フッ、のっぺらぼうなのに、青い目だと。目が急に出て来たとでも? それとも、鬼太郎のように髪で隠していたのかな?」
「いえ、はっきり思いだせるのはのっぺらぼうが俺たちの頭にはっきりと青い両目のイメージを見せてきたと言うことです。そして辺りが青い霧に包まれて、そこで気を失ったんです」
二人は恐る恐る、非津の顔色をうかがいながら質問に答え、時々、十条の顔色も盗み見ていた。
「お前ら、聞け」十条は低くつぶやく。トレーラーの密閉された空間でなければ耳に入らない声量だ。
部下二人は顔をひきつらせた。自分の上司の顔色が異様に青白い。
「任務は中断だ。一緒に来い。お前らが見たその情報が大切だ」
***
アパートの浴室で、ゴプン、という音が静かに鳴る。
水を流し終わった洗面台に両手をつけてサリィは肩で息をしていた。
顔を上げる。一瞬鏡に映る自分の顔を手で遮ろうとして指が強く当たった。指の空き間から覗く自分の眼と鼻筋を見た瞬間、サリィはうつむくことで顔をそむけた。瞬間、また吐き気が自分を襲う。
ひとしきり胃液を出し終わるとサリィはドアにもたれかかり左手で顔を覆った。
「畜生! こんな時にっ」
背後から着信音が聞こえる。サリィは、ふう、と息を吐き出してトイレのドアを開いた。
「はい。どうしたのかしら、十条さん。……、……。いいわよすぐ行けるわ」部屋の中で電話を取ったサリィは完全に平静を取り戻していた。
「ホワイトホールにねえ。……。ずいぶん慌ててるじゃない。それほどのことなの? お話聞きましょうか」
そして数分後空になるアパートの一部屋。ゴミ箱の中には妊娠検査キットが捨てられていた。キットの検査結果は『陽性』だった。
スモーマフラー旧本社ビル。
タクシーを降りたサリィはビルの裏口からICタグ入りの社員証をかざしてビル内へ。
普通の社員は来ることがほとんどない旧本社とはいえ、秘密裏の行動が中心の十俊英は基本的にビル正面口からの出社を禁止されている。
ビルの裏口に入る前にサリィは掃き掃除をする一人の老人に会釈をしていた。老人はスモーマフラー前会長の角力田狂四郎(すもうだきょうじろう)氏だ。
初代会長職を三十年に渡り務めたが、引退してからは旧本社ビルの清掃を行うのみで、経営に一切口出しをすることは無くなった。だが、彼はこの旧本社ビルの秘密を知る一人だ。
サリィが守衛エリアを抜けてエレベータエリアに入ろうとする手前に、普段は閉ざされている地下階段のドアがあった。周りの視線がないことを確認してドアを開き、地下へと降りる。
地下一階の指紋認証式のドアロックを開けて中へ、さらに地下へと進むエレベータに乗り、地下四階へと降りた。
地下へのエレベータのボタンは一か四しかない。地下四階のホワイトホール。サリィが現在立っているエレベータ乗り口が起点であり八畳間サイズの単色の部屋が縦横無尽にいくつも並ぶ特殊なエリアである。
中には階段があり降りたり上がったりを繰り返すこともあるが、一方向にひたすら進めば起点となるエレベータの場所に必ずたどり着ける。
ホワイトホールの入り口でサリィは三人の男と対峙した。真ん中の十条は言わずもがな。
その後ろに付き従う二人は今の部屋の明るさに目を眩しそうにしばたかせて戸惑いながらサリィに挨拶をする。二人の顔には数か所の痣があった。
「時間がもったいないわ。私にも、起こったままを報告して頂戴」
十条は後ろの二人を見て黙って頷く。
「はい、我々はイワンの死体を回収班からトラックごと預かり、定時通りの出発準備を進めていました」
「荷台を開けて死体を確認しようとしました。ですが、死体は生きていました」
「起き上がったイワンさんと目を合わせた瞬間、気を失ってしまい、後のことは覚えていません。ただ、その時、イワンさんが青い瞳で私をにらんでいたのは印象に残っています」
「私はこいつがイワンさんに暴行を受けて気絶する瞬間を見ました。その後、必死にイワンさんを取り押さえようとしましたがかなわず、気付いたら眠っていて、こいつに起こされて……。我々の前には死体袋が残っているのみでした」
ピク、とサリィの眉がわずかに上がった。
「まず気になるのは青い目ということだ。こいつらがあまりに繰り返すものでな。イワンの青い目? どう思う?」
十条とサリィの目が合う。彼女はわずかに動くレベルで首をかしげた。
「あなた、私を試しているの?」
まだ、十条は注意深くサリィの様子を観察する。口元、視線、不自然に動くことはない。
「イワンの眼は青よ。普段はカラーコンタクトでなぜか色をごまかしていたけどね」
「ではそれ以外はどう思う?」
「嘘を言っているようには見えないわね。ただ、真偽ない交ぜにして騙っているとも限らないわ。真のほうをじっくり聞いてみましょうか」
「なら、ここからはお前の仕事だな」
十条は部下の方へ振り向くと、二人の肩に手をかけた。一秒と経たず二人は膝から崩れ落ちて、気を失った。
サリィは無言で十条の部下たちが倒れていく様を見る。
「どうも……」深く礼など言わない。サリィは目を細めた。
「俺もお前も土壇場なんだ。気になることがこいつらから出てきたら、すぐに伝えろ」
「あら、お優しいこと。どういうことかしらねえ」
「会社全体の危機だ。協力は必然だろ……。それと俺の部下だ。尋問するにしても丁重に扱え」
「本当にお優しいこと。そうさせてもらいましょうか。出来る限り、ね」
***
早朝のスモーマフラー姉古川店。すでに騒ぎを社内チャットで知らされていた営業メンバーがピットに集まっている中、十条と別れて行動していた非津が一足先に駆け付けた。
「ヒッツさん! これを……」
「うぬっ! これは……」
大量のモリブデングリスが蜷局を巻いた山として盛りに盛り上げられていた。
「何と下品な真似を!」
「車は一台……。底片さんのゲリウスが、か、影も、形も無くなっています」一人の営業が声も途切れ途切れに報告する。
「カメラの電源が全て切られていました。昨晩のピット内状況は一切確認できません」事務所から入ってきた営業のの一人がそう告げる。
「いらん! 犯人の目星などついている」
感情が激しく揺れると非津は白目をむくようになる。周りは背筋を凍らせた。
「おうおう、皆さんおはようさんだぜえ」
どこを見渡しても朝早くから特大おはぎをほおばる男はこいつだけだ。ハルオは口の周りと右手と袖口まであんこでべたべたにしている。
ゲリウスの痕跡を探るためにシャッターを開けていたことが災いした。闖入者の存在にピットの中は一斉にざわついた。混乱に混乱である。
「これはこれは。晴御様。生憎、今朝はイワンも十条もまだ出てきていないものでして」
非津は目の色を戻し、スーツの胸についた埃を丁寧にはらいつつ、コツリ、コツリ、と靴音を立てながらハルオに歩み寄る。
「いやな、くっちゃぐっちゃっ、おれのコアラーがよ、ゲフーーッ、どっかよそいっちまってよ。おっ、でけえうんこだなあ!」口調はせわしない。せわしなく話しながらおはぎにかぶりつくことも忘れない。
「そうでしたか。我々も戸惑っているのです。何やら昨晩、何者かがこの中を散々に荒らしていったもので」非津は靴のつま先に飛んできた唾液交じりの米粒をハンカチでふき取った。
「おう、ゲリウスがどっか行っちまったんだろだろ」
「……。よくご存じで」
非津の顔に朝日が差し込む。顔の半分が照らされ、残る半分が影に隠れる。光に照らされた方は当然の如く得意気な作り笑顔だ。
「えっとだな。……、言うぜ」
「は? 何をで?」
「あー、コアラー、ゲリウス、どちらも二度と戻らねえ。二度と人間とせっしょくさせねえ。お前らは人間どうし、かってに争ってろ、って」
「……。それはいったい誰からの伝言でしょうか?」
非津の顔はこわばっていた。彼は気取られないように、背後で固唾を飲む姉古川店メンバーたちに『事務所にいったん戻れ』のハンドサインを出して解散させた。
「それは、あいつらを連れ去った奴らにきまってんだろよ!」
「だから、いったい何者なのですか?」自分の背後に誰もいなくなっていることを確認しながら非津はハルオにたずねる。
ハルオは大きくゲップを吐き出して腹を叩いた。せわしないと思えば急に食後感に陥ったりで、無意識に相手を苛立たせるのはこの男の特徴である。
「たっくさんさ、車が来てさ、昨日の晩、あいつらを囲んでさ。どっか連れていっちまったんだよお」
非津はかぶりをふった。
「……。晴御さん、一旦お引き取り下さい。残念ですが私には今は何も……」
「そんなの殺生だぜ。非津さんよ! あんたは車のプロだろ。一緒にさがしてくれよお」
ハルオに肩をゆすられれながら非津は目を白黒させた。
***
「メルザ。メルザ。いい加減起きて」
ノブ子とメルザはもうかれこれ六時間近く暗闇の中にいた。
スモーマフラー姉古川店で大量の意志を持った車たちに囲まれた後、彼らに促され、二人は完全黒色のウィンドウの一台に乗せられ、今の場所まで連れてこられた。
降りた場所は立体駐車場の中のような場所だったが、そこからこの壁の位置すら確認できない部屋に入るように促され、半ば強制的に閉じ込められている。
車たちはメルザの問いかけにもは何も答えず、ただ一方的にノブ子に指示をしていた。道中、ETCゲート通過の音が聞こえたことから、高速道路を使用していることは分かった。
おそらくハルオもジェイミーも追いかけることはできなかっただろう。
「ふああ……。おはー。ノブリンもしかしてずっとおきてたのー?」
「その呼び方やめて。あなた、よくこの状況でぐっすり寝れるわね」
「とーぜんしょ。寝んのが一番の美容だし。でも起きてもMKK(まっくらくら)なの何とかなんないかなあ?」
「何ともできないわ。ねえ。ここ広いわ。二人でこの場所の突き当りに行きつくまで、とりあえず歩いてみましょう」
「おっけー。とりま出口さがさんいけんしねー」
メルザはノブ子の背を押しながら自分も進もうとしたが、途中いつの間にかノブ子に背を押される立場になる。
暗闇をいいことに露骨に嫌な顔をしながらメルザはノブ子の体を抱きかかえ、自分の前に置く。
だが、いつの間にか二人が進むうちにうまい具合にノブ子がメルザの後ろをいつの間にか歩いていた。
メルザはとうとう舌打ちをした。
「あたしらって、合わないのかなあ」
「私はそうは思わないわ。貴方が合わせるつもりがないだけでしょ」
「そーかもねー」
「ねえ。、あの車たち私たちのことをシャーマンって言ってたの」
「へー」
「……。それって、なにか私たちに特別なことをさせようとしているってことじゃないかな……」
「マジイミフ。シャーマンってなに? ちびっ子ヒーロー? なんたらマンなら私らカンケーないじゃん」
「違うわよ。巫女のこと! もう、イライラする」
「ノブ子! メルザ! 二人とも、そこにいるんだね」
メルザとノブ子は声が裏返りそうになった。ジェイミーの声だ。かなり遠くから聞こえる。
「ジェイミー! なんで?」
「何とかあの自転車で追ってきたんだよ。上手く忍び込めた」
「僕らもキタでしゅ」
「みんなでおうち帰るでしゅ」
「ライっち! デズっち! やるじゃーん」
ノブ子とメルザはジェイミー達の声の方へと移動し、合流した。毛深い体の押し合いの中にガチガチのシフトノブが一つ。みんな再会を喜び合う。
五匹は昨晩のことを語りあった、車たちは高速道路を移動して出目黒区のとあるビルの地下駐車場に入って行った。ジェイミーは覚悟を決めてニトロエンジン二輪自転車に無理をさせ密かに上空から追っていた。双子がついてくることは予想外だったようだ。
「この部屋はどうやって入ったの」
「通気口からビル内に忍び込んだんだよ。あとはあてずっぽう。時間がかかってごめんね」
「全然最アゲだし。それで、アナグマっちはこの部屋の電気わかんないの」
「あ、まって。さっき確かこの上に……」
一斉に全員の視界が白い光に染まる。ジェイミーが動くよりも早く何者かが照明を入れたのだ。
ジェイミーが見上げた天井に人影が写る。
しばらく顔をしかめて目が慣れるまでまったあと、その男が若いロシア系の青年であると分かった。やせ型の体系に180cmを超えるだろう長身、明るいブラウンの髪、そして青い瞳。
「イワンさんでしゅ」
「くるまのお医者さんでしゅ」
ジェイミーは言葉に詰まり、どうも、とイワンと呼ばれた男に話しかけた。
当のイワンは爽やかに微笑んでいた。
「人ならぬかわいい皆さん。怖い思いをさせて悪いね」笑顔のまま第一声を発した。その様子はどこか機械的に感じられた。
「ここは、一体どこなの……?」ノブ子が恐る恐る聞く。
イワンが笑顔のままノブ子の方へと顔を向けた。
「ここは車たちの車たちによる車たちのための博物館といったところかな」
確かに辺りを見回すと、展示ロープに囲われた旧車がいくつも並んでいた。ジェイミーは車に詳しくないが、古い型のものが多いことは分かる。
冷戦時、下手をしたら太平洋戦争前のものも混じっているのではなかろうか。
「やばたん↓ まさか生きてるってないよね、そんなこと」
問いかけるメルザに向かい、イワンは表情を少し引き締めた。
「もちろん、皆、死んでいるさ。特にエンジンの死は直接、車にとっての死だよ。乗せ換えたところで機械としては生き返っても、生命としては生き返らない。車の死は人間に比べて案外早いものだよ」
「お墓でしゅ」
「お線香あげていくでしゅ」
「うん。後でね。イワンさん、車のためって……?」
イワンは数歩進みジェイミーに背中を向けたまま距離をとった。
そして粛々と語る。
「くるまの未来のために歴史に残った者たちをこうして展示しているんだ。それは過去を忘れないためでもあり、そして彼らへの罰だよ」
イワンの少し曇った顔が見えたのはノブ子だけだった。それとリンクするようになぜかノブ子の胸も痛んだ。
「貴方一体何者なの?」恐る恐るノブ子は聞いた。
「車たちの代弁者といったところだよ。故あって協力している」
「ふーん。HK(はなしかわるけど)。アタシら帰れるのよね?」
背だけをみていてもイワンの雰囲気が険しく変わったように見えた。だが、一番敏感に感じ取っていたのは双子だった。
二匹ともかなり小刻みに震えだして、うううー、と唸っていた。
「当然、条件があるよ」
「わかってるし。アタシとこのノブリンだけは今後も協力しろってことよねー」
「察しがいい。君たちはいつか来る日のために、人間たちとの調停に協力をしてもらいたい」
「いつかとか、来る日とか、何かもやっとする。はっきり言ってほしいんだけど」
ジェイミーは固唾を飲みこんだ。
「くるまの権利を人間に認めてもらう機会が来るってことさ。いつかは分からないけどね」
メルザは、あーそーなの、と言い、静かになった。
「ゲリウスとコアラー。あの二人はどうなるの?」
「うん。やはりというか。あの短い間に大分君たちは彼らに情が移っていたようだ」
ノブ子の問いに反応しながらイワンはいつの間にか手元に握っていたリモコンのスイッチを押す。
一部暗闇のままだったブースに照明があたる。さらされたのは何もない空間である。しかし全員が背筋を凍らせた。
展示ロープが他の車たちが並ぶブースト同じように設置されている。その中には丁度、車二台分の空間があった。
「あの二台からエンジン、その他もろもろ取り出して眠りについてもらう。この場所で、永遠にね……」
双子は、アンッアンッ、と必死の遠吠えをイワンに向けてした。同時に全員が警戒の視線を向ける。
「そんなの許さないわ。何の理由があってそんなことをしようとしているの!」
「そうだよ! ゲリ子とコアラーっちはアタシらと一緒に帰んだよ!」
イワンは部屋の中央に静かに、不気味に歩いた。一台の朱色の車の元に行き、その車体に無感情な視線を落とす。その透き通った青の瞳が伏せられると、ノブ子は再びえぐるような胸の痛みに襲われた。
「GAZ M21 Volga(ヴォルガ)。かつてロシアの地にて初めて人々に認知された自我を持つ車。彼の罪は偏愛だ」
『車たちには僕らが理解できていない常識がある』ジェイミーの推論はやはり当たっている。ノブ子はいち早く情報を整理する。
あの二台は犯してはいけない不貞という罪を犯してここに連れてこられたのだ。そのことはおそらく他の車たちにも共有されている。
諸々の行動を監視されていたのではない。むしろ、もっとえげつない形で共有されたのだ。
そこまで知りつつ、偏愛って、とノブ子は恐る恐る口に出してみた。
イワンはこちらの意図を見透かしたように笑みを再び浮かべた。
「ゴリラという動物が人間に発見されてから精々百五十年程度しか経っていないことは知ってるかい? それまで彼らは用心深く隠れていたそうだ。……。車とて同じさ。人間に生み出されながらも一部は覚醒して数百年、人間に自我を持つことを気取られずに過ごしてきた」
そしてイワンの視線は再び朱色のヴォルガに向かった。
「彼は自分の息子を守るために自らの姿をさらして囮になったんだ……。そこからだ。彼の暴露により人間に認知され、長い旅は始まることになった」
「子供を守んことのどこが罪なんだよ! そんなの超厳しすぎない!?」メルザは吠えた。
「罪だよ。何より彼が自らそう認めた。車たちは彼の苦しいの決断も、息子への愛だって知っている。……。だから皆で受け止めた。彼は喜び命を還した」
「マジイミフよ!」
意味不明だ。車用アクセサリという微妙な立ち位置ではあるがノブ子も声高にそう言って、必死に吠えている双子のようにメルザに加勢したい。
彼らの理に踏み込みすぎたのだ……。嫌な予感はするがそれでも、車をしることから逃れることはできない。
「はじめ、ゲリウスの声を聴いたとき、貴方たちは人間に怯えてると思ってた。けど、ちがう……」
犬たちの鳴き声が止んだ。ジェイミーは目を泳がせながらこちらを見ている
「なにか……、なにか逃れようのないものに抗っている気がするわ。……、一体あなた達は何なの?」
「僕らか……。そうだね。君には語ってもよさそうだ」
「あなた、やっぱり……」
イワンはこの部屋の出口まで歩いた。
「知りたいならついておいで。案内しよう、コアラーたちのもとに」
(次回に続く)
ジェイミー達はうっかり道行く若者たちとチーマー狩りをしそうになったり、おかまバーに厄介になったり、ニトロエンジンぶっぱなしたり、紆余曲折を経てスモーマフラー姉古川店にたどり着く。
車たちの声が聞こえるノブ子、ギャル語を駆使して言葉のドッチボールを繰り広げるメルザの協力を経てなんとか家出野郎コアラーと、そのコアラーの子を妊娠してしまったゲリウスに事の顛末を聞くことができた。
それは、スモーマフラーという大企業と裏で暗躍する十俊英が企む驚くべきの保険詐欺案件だった……。
そして今回の敵役、十俊英たちは謎の地下室で絵にかいたような悪役の秘密会議をしていたのであった。
新たに十俊英に加わった内部監視のサリィに苛立つ十条と非津。彼らが次に知ったのは、処刑されたはずのイワンの遺体が消えたという部下からの報だった。
***
「HIS、HIS、あれ、HISだっけ? まあいいしー」
ィイイイイイイイン!
ウオオオン、オンオンオン!
二台の唸りはおさまらない。流石のジェイミーも双子と一緒にオロオロと左右に首を回すだけだった。
「やめなさい! どういうつもりなの、メルザ!」
ありゃ、とメルザは狂猛とした目つきから我に返った。
「あなた。何を企んでるの!」
「やだー。どなんないでよ、ノブリン。ブチサゲなるじゃん」
「メルザさん。本当にどういうつもりなの」
どういうつもりっていわれてもなー、とメルザはストラップをつかんでスマホをブンブン回しながら宙を向いた。
車たちを虐めたいの? そうノブ子に聞かれ、ようやくメルザは、違うって、と大声で否定した。
「だからー。悪いことしてる奴らのショウコとかいいから、いまはぶちゃけ愛じゃね?」
「そのとおりでしゅ!」
「メルザしゃん優しいでしゅ!」
「優しい?」
ジェイミーは背後で納得する双子に驚いた。
「ゲリウスしゃんの愛な心でしゅ」
「こあらーしゃんの燃える恋路の先でしゅ」
こんな状況で大事なことなんて人それぞれだが、確かにそれも答えの一つだろう。ジェイミー達が後回しにしかけていたそれにメルザは触れただけだったというわけだ。
「ゲリ子がコアラーっちに対してラブなんか? 子供を産む気があるのか? 今大事なんは二人の未来でしょ」
「うーん……。じゃあ、メルザさん。さっき言ってたHISって……」
「あれBFF(ベストフレンドフォーエバー)から教えてもらったバッテリーあがりんときの呪文だし。発奮か脱糞はするかなーって」
ブォン、ブォン、ピッッッピーーー!
野太く荒い音を立てだしたのはゲリウスの方だった。
「ノブ子さん! 一体ゲリウスは何って!?」
「ジェイミー! ずっと言ってるの。責めないで、だって!」
「責める!? 責めっって……」
オォン、オォン、ヒィィィィンーー、パッパー……。オォン、オォン。
数十秒もゲリウスは荒い調子でうなり続けた。
「不幸な事故だったって……。この人? いえ、車ね。を好きになってしまったこと、この車と楽園に行き、子をなせればどれほどいいか、と思ってしまった……」
その後、距離を置いて身を震わせるようにしていたコアラーの方からも同じ調子で、遠巻きに唸りがあがった。ノブ子はそれも訳す。
「俺っちたちは偶然にして同じことを思った。それが、人間だけが犯すと思っていた罪だった」
なんだかミュージカルの中にでもいる気分だ。車特有の会話なのだろうか。懺悔室にいるかのようにやけに事細かに白状しすぎる。なんだか取り乱した様子と語る言葉が一致しない感覚がある。
「ただの不倫でしゅ、できる人間のたなしみでしゅ」
「困ったなら、軽井沢の旅館で裸でごろごろして外を散歩すればいいでしゅ」
「まあこのプチAY(頭弱い)兄弟の言う通りかもねー。駆け落ちっしょ」
「ちょっとみんな、好き好きに言い過ぎ、ノブ子さん集中してるんだから」ジェイミーはノブ子をみた。彼女は静かに電子音をたててうなるゲリウスをじっと見つめていた。
フィッ、ヒィィィィンーー! パッパー、パッパー!
またゲリウスが何かを強く発した。ノブ子の戸惑い顔をみてジェイミーは促す。
「ちょっと、分からないというか……。人間は自分たちが消えれば終わりだと思っているから気楽なもんだって、言ってる……」
「そうか。ノブ子さん。多分だけど、車たちには僕らが理解できていない常識があるみたいだ。今は考えすぎないようにしよう」
「ねえ、ジェイミー。多分だけど、メルザの思いつきで言ったHSSの意味って……」
「うん。罪、を問いただすような言葉じゃないかな」
「この二人……、二台、ここまで苦しんでいるってことは、胸の中では添い遂げたいという意があるってことだと思う」
「まだ結論を出すのは早いよ。僕らは人間たちが犯した罪を暴かないといけない」
ピットの外でクラクションの音が響いてきた。姉古川店の人間かと、ジェイミー達は身構えたが、駆け足で入ってきたのは晴夫だった。
「おーい。お前ら」
「おとうしゃんでしゅ」
「無事でよかったでしゅ」
「なんとかな。おいていくなんてひどいよぉ」
双子以外は晴夫に向ける視線は冷ややかだた。真っ赤な頬に少ししゃがれた声。たるんだ首元には何個ものキスマークがあった。
「ハルオ。よくここまでこれたね」
「まあな。スナックのママの車に乗せてもらったぜー」
「へー」
「それより外が大変なんだよ。ちょっと来てくれよぉ!」
せわしなく体を左右に揺さぶってピットを出て行ったハルオの後を追い、一体何かとジェイミー達は外に出てみて身を震わせた。
先頭の一台、おそらくハルオが乗せてもらったというスナックのママの車だろう。女装したおじさんが乗っていた。
そしてその後ろには、数十台、運転席にも助手席にも誰も乗っていない車たちがピットを囲むように並んでいた。ヘッドライトの束のあまりの光量が、この姉古川店を焼くほどであった。
***
十条はいつにも増してうっとうしそうに眼下のくまを歪ませた。
「言うに及んでそんなたわごとを……、任せた俺が恥ずかしいわ!」
「申し訳ありません。ただ、そうとしか言いようがなく……」
部下を強く叱責しながら急ぎ足に、イワンの死体を運んでいた8トントラックのリアに向かう。
「……、……」
荷台の中を見ても何も言えなかった。中にはイワンを包んでいた分厚い死体袋が一つ、中身なくスカスカの状態であるだけだった。
十条、非津、そして部下二人は荷台の高さから半端に下がったパワーゲートを上げも下げもせず乗り込んだ。四人分の足音が中で木霊する。
「お前ら、死体が袋の中から自力で出てどこかに行ったと言いたいのか?」
「おい十条、話は後にしないか。こいつらが時間通り名古屋に着かないと足がつくぞ」非津が流石に見ていられず割って入った。
「ドライバーの変わりは用意してある。こいつらからどうしても聞き出さんといかん」
トレーラーの中は声が良く響く。十条と非津の苛立ったやり取りは部下二人にも痛く響いた。
「お前たち、先ほど幻覚を見たと言っていたな」非津はここに到着した直後の部下二人の弁明を思い出した。
「はい」
「もう一度、お前たちが見た幻覚は何か、詳細に話してくれ」
非津はあくまで落ち着いた口調で問いただす。無言で十条も部下二人の方を向いた。
「はい、俺たちが荷台を開けた時……、そ、その、そこにはのっぺらぼうがいたのです。そして、その、のっぺらぼうが俺たちに青い目と青い霧を見せてきて。気がついたらイワンのいた死体袋には誰も入っていませんでした」
「俺も、同じく。顔に何もパーツがなく、つるつるで、ほんとうにのっぺらぼうでした。こいつと二人で……、多分、10分は気を失っていたと思います」
「フッ、のっぺらぼうなのに、青い目だと。目が急に出て来たとでも? それとも、鬼太郎のように髪で隠していたのかな?」
「いえ、はっきり思いだせるのはのっぺらぼうが俺たちの頭にはっきりと青い両目のイメージを見せてきたと言うことです。そして辺りが青い霧に包まれて、そこで気を失ったんです」
二人は恐る恐る、非津の顔色をうかがいながら質問に答え、時々、十条の顔色も盗み見ていた。
「お前ら、聞け」十条は低くつぶやく。トレーラーの密閉された空間でなければ耳に入らない声量だ。
部下二人は顔をひきつらせた。自分の上司の顔色が異様に青白い。
「任務は中断だ。一緒に来い。お前らが見たその情報が大切だ」
***
アパートの浴室で、ゴプン、という音が静かに鳴る。
水を流し終わった洗面台に両手をつけてサリィは肩で息をしていた。
顔を上げる。一瞬鏡に映る自分の顔を手で遮ろうとして指が強く当たった。指の空き間から覗く自分の眼と鼻筋を見た瞬間、サリィはうつむくことで顔をそむけた。瞬間、また吐き気が自分を襲う。
ひとしきり胃液を出し終わるとサリィはドアにもたれかかり左手で顔を覆った。
「畜生! こんな時にっ」
背後から着信音が聞こえる。サリィは、ふう、と息を吐き出してトイレのドアを開いた。
「はい。どうしたのかしら、十条さん。……、……。いいわよすぐ行けるわ」部屋の中で電話を取ったサリィは完全に平静を取り戻していた。
「ホワイトホールにねえ。……。ずいぶん慌ててるじゃない。それほどのことなの? お話聞きましょうか」
そして数分後空になるアパートの一部屋。ゴミ箱の中には妊娠検査キットが捨てられていた。キットの検査結果は『陽性』だった。
スモーマフラー旧本社ビル。
タクシーを降りたサリィはビルの裏口からICタグ入りの社員証をかざしてビル内へ。
普通の社員は来ることがほとんどない旧本社とはいえ、秘密裏の行動が中心の十俊英は基本的にビル正面口からの出社を禁止されている。
ビルの裏口に入る前にサリィは掃き掃除をする一人の老人に会釈をしていた。老人はスモーマフラー前会長の角力田狂四郎(すもうだきょうじろう)氏だ。
初代会長職を三十年に渡り務めたが、引退してからは旧本社ビルの清掃を行うのみで、経営に一切口出しをすることは無くなった。だが、彼はこの旧本社ビルの秘密を知る一人だ。
サリィが守衛エリアを抜けてエレベータエリアに入ろうとする手前に、普段は閉ざされている地下階段のドアがあった。周りの視線がないことを確認してドアを開き、地下へと降りる。
地下一階の指紋認証式のドアロックを開けて中へ、さらに地下へと進むエレベータに乗り、地下四階へと降りた。
地下へのエレベータのボタンは一か四しかない。地下四階のホワイトホール。サリィが現在立っているエレベータ乗り口が起点であり八畳間サイズの単色の部屋が縦横無尽にいくつも並ぶ特殊なエリアである。
中には階段があり降りたり上がったりを繰り返すこともあるが、一方向にひたすら進めば起点となるエレベータの場所に必ずたどり着ける。
ホワイトホールの入り口でサリィは三人の男と対峙した。真ん中の十条は言わずもがな。
その後ろに付き従う二人は今の部屋の明るさに目を眩しそうにしばたかせて戸惑いながらサリィに挨拶をする。二人の顔には数か所の痣があった。
「時間がもったいないわ。私にも、起こったままを報告して頂戴」
十条は後ろの二人を見て黙って頷く。
「はい、我々はイワンの死体を回収班からトラックごと預かり、定時通りの出発準備を進めていました」
「荷台を開けて死体を確認しようとしました。ですが、死体は生きていました」
「起き上がったイワンさんと目を合わせた瞬間、気を失ってしまい、後のことは覚えていません。ただ、その時、イワンさんが青い瞳で私をにらんでいたのは印象に残っています」
「私はこいつがイワンさんに暴行を受けて気絶する瞬間を見ました。その後、必死にイワンさんを取り押さえようとしましたがかなわず、気付いたら眠っていて、こいつに起こされて……。我々の前には死体袋が残っているのみでした」
ピク、とサリィの眉がわずかに上がった。
「まず気になるのは青い目ということだ。こいつらがあまりに繰り返すものでな。イワンの青い目? どう思う?」
十条とサリィの目が合う。彼女はわずかに動くレベルで首をかしげた。
「あなた、私を試しているの?」
まだ、十条は注意深くサリィの様子を観察する。口元、視線、不自然に動くことはない。
「イワンの眼は青よ。普段はカラーコンタクトでなぜか色をごまかしていたけどね」
「ではそれ以外はどう思う?」
「嘘を言っているようには見えないわね。ただ、真偽ない交ぜにして騙っているとも限らないわ。真のほうをじっくり聞いてみましょうか」
「なら、ここからはお前の仕事だな」
十条は部下の方へ振り向くと、二人の肩に手をかけた。一秒と経たず二人は膝から崩れ落ちて、気を失った。
サリィは無言で十条の部下たちが倒れていく様を見る。
「どうも……」深く礼など言わない。サリィは目を細めた。
「俺もお前も土壇場なんだ。気になることがこいつらから出てきたら、すぐに伝えろ」
「あら、お優しいこと。どういうことかしらねえ」
「会社全体の危機だ。協力は必然だろ……。それと俺の部下だ。尋問するにしても丁重に扱え」
「本当にお優しいこと。そうさせてもらいましょうか。出来る限り、ね」
***
早朝のスモーマフラー姉古川店。すでに騒ぎを社内チャットで知らされていた営業メンバーがピットに集まっている中、十条と別れて行動していた非津が一足先に駆け付けた。
「ヒッツさん! これを……」
「うぬっ! これは……」
大量のモリブデングリスが蜷局を巻いた山として盛りに盛り上げられていた。
「何と下品な真似を!」
「車は一台……。底片さんのゲリウスが、か、影も、形も無くなっています」一人の営業が声も途切れ途切れに報告する。
「カメラの電源が全て切られていました。昨晩のピット内状況は一切確認できません」事務所から入ってきた営業のの一人がそう告げる。
「いらん! 犯人の目星などついている」
感情が激しく揺れると非津は白目をむくようになる。周りは背筋を凍らせた。
「おうおう、皆さんおはようさんだぜえ」
どこを見渡しても朝早くから特大おはぎをほおばる男はこいつだけだ。ハルオは口の周りと右手と袖口まであんこでべたべたにしている。
ゲリウスの痕跡を探るためにシャッターを開けていたことが災いした。闖入者の存在にピットの中は一斉にざわついた。混乱に混乱である。
「これはこれは。晴御様。生憎、今朝はイワンも十条もまだ出てきていないものでして」
非津は目の色を戻し、スーツの胸についた埃を丁寧にはらいつつ、コツリ、コツリ、と靴音を立てながらハルオに歩み寄る。
「いやな、くっちゃぐっちゃっ、おれのコアラーがよ、ゲフーーッ、どっかよそいっちまってよ。おっ、でけえうんこだなあ!」口調はせわしない。せわしなく話しながらおはぎにかぶりつくことも忘れない。
「そうでしたか。我々も戸惑っているのです。何やら昨晩、何者かがこの中を散々に荒らしていったもので」非津は靴のつま先に飛んできた唾液交じりの米粒をハンカチでふき取った。
「おう、ゲリウスがどっか行っちまったんだろだろ」
「……。よくご存じで」
非津の顔に朝日が差し込む。顔の半分が照らされ、残る半分が影に隠れる。光に照らされた方は当然の如く得意気な作り笑顔だ。
「えっとだな。……、言うぜ」
「は? 何をで?」
「あー、コアラー、ゲリウス、どちらも二度と戻らねえ。二度と人間とせっしょくさせねえ。お前らは人間どうし、かってに争ってろ、って」
「……。それはいったい誰からの伝言でしょうか?」
非津の顔はこわばっていた。彼は気取られないように、背後で固唾を飲む姉古川店メンバーたちに『事務所にいったん戻れ』のハンドサインを出して解散させた。
「それは、あいつらを連れ去った奴らにきまってんだろよ!」
「だから、いったい何者なのですか?」自分の背後に誰もいなくなっていることを確認しながら非津はハルオにたずねる。
ハルオは大きくゲップを吐き出して腹を叩いた。せわしないと思えば急に食後感に陥ったりで、無意識に相手を苛立たせるのはこの男の特徴である。
「たっくさんさ、車が来てさ、昨日の晩、あいつらを囲んでさ。どっか連れていっちまったんだよお」
非津はかぶりをふった。
「……。晴御さん、一旦お引き取り下さい。残念ですが私には今は何も……」
「そんなの殺生だぜ。非津さんよ! あんたは車のプロだろ。一緒にさがしてくれよお」
ハルオに肩をゆすられれながら非津は目を白黒させた。
***
「メルザ。メルザ。いい加減起きて」
ノブ子とメルザはもうかれこれ六時間近く暗闇の中にいた。
スモーマフラー姉古川店で大量の意志を持った車たちに囲まれた後、彼らに促され、二人は完全黒色のウィンドウの一台に乗せられ、今の場所まで連れてこられた。
降りた場所は立体駐車場の中のような場所だったが、そこからこの壁の位置すら確認できない部屋に入るように促され、半ば強制的に閉じ込められている。
車たちはメルザの問いかけにもは何も答えず、ただ一方的にノブ子に指示をしていた。道中、ETCゲート通過の音が聞こえたことから、高速道路を使用していることは分かった。
おそらくハルオもジェイミーも追いかけることはできなかっただろう。
「ふああ……。おはー。ノブリンもしかしてずっとおきてたのー?」
「その呼び方やめて。あなた、よくこの状況でぐっすり寝れるわね」
「とーぜんしょ。寝んのが一番の美容だし。でも起きてもMKK(まっくらくら)なの何とかなんないかなあ?」
「何ともできないわ。ねえ。ここ広いわ。二人でこの場所の突き当りに行きつくまで、とりあえず歩いてみましょう」
「おっけー。とりま出口さがさんいけんしねー」
メルザはノブ子の背を押しながら自分も進もうとしたが、途中いつの間にかノブ子に背を押される立場になる。
暗闇をいいことに露骨に嫌な顔をしながらメルザはノブ子の体を抱きかかえ、自分の前に置く。
だが、いつの間にか二人が進むうちにうまい具合にノブ子がメルザの後ろをいつの間にか歩いていた。
メルザはとうとう舌打ちをした。
「あたしらって、合わないのかなあ」
「私はそうは思わないわ。貴方が合わせるつもりがないだけでしょ」
「そーかもねー」
「ねえ。、あの車たち私たちのことをシャーマンって言ってたの」
「へー」
「……。それって、なにか私たちに特別なことをさせようとしているってことじゃないかな……」
「マジイミフ。シャーマンってなに? ちびっ子ヒーロー? なんたらマンなら私らカンケーないじゃん」
「違うわよ。巫女のこと! もう、イライラする」
「ノブ子! メルザ! 二人とも、そこにいるんだね」
メルザとノブ子は声が裏返りそうになった。ジェイミーの声だ。かなり遠くから聞こえる。
「ジェイミー! なんで?」
「何とかあの自転車で追ってきたんだよ。上手く忍び込めた」
「僕らもキタでしゅ」
「みんなでおうち帰るでしゅ」
「ライっち! デズっち! やるじゃーん」
ノブ子とメルザはジェイミー達の声の方へと移動し、合流した。毛深い体の押し合いの中にガチガチのシフトノブが一つ。みんな再会を喜び合う。
五匹は昨晩のことを語りあった、車たちは高速道路を移動して出目黒区のとあるビルの地下駐車場に入って行った。ジェイミーは覚悟を決めてニトロエンジン二輪自転車に無理をさせ密かに上空から追っていた。双子がついてくることは予想外だったようだ。
「この部屋はどうやって入ったの」
「通気口からビル内に忍び込んだんだよ。あとはあてずっぽう。時間がかかってごめんね」
「全然最アゲだし。それで、アナグマっちはこの部屋の電気わかんないの」
「あ、まって。さっき確かこの上に……」
一斉に全員の視界が白い光に染まる。ジェイミーが動くよりも早く何者かが照明を入れたのだ。
ジェイミーが見上げた天井に人影が写る。
しばらく顔をしかめて目が慣れるまでまったあと、その男が若いロシア系の青年であると分かった。やせ型の体系に180cmを超えるだろう長身、明るいブラウンの髪、そして青い瞳。
「イワンさんでしゅ」
「くるまのお医者さんでしゅ」
ジェイミーは言葉に詰まり、どうも、とイワンと呼ばれた男に話しかけた。
当のイワンは爽やかに微笑んでいた。
「人ならぬかわいい皆さん。怖い思いをさせて悪いね」笑顔のまま第一声を発した。その様子はどこか機械的に感じられた。
「ここは、一体どこなの……?」ノブ子が恐る恐る聞く。
イワンが笑顔のままノブ子の方へと顔を向けた。
「ここは車たちの車たちによる車たちのための博物館といったところかな」
確かに辺りを見回すと、展示ロープに囲われた旧車がいくつも並んでいた。ジェイミーは車に詳しくないが、古い型のものが多いことは分かる。
冷戦時、下手をしたら太平洋戦争前のものも混じっているのではなかろうか。
「やばたん↓ まさか生きてるってないよね、そんなこと」
問いかけるメルザに向かい、イワンは表情を少し引き締めた。
「もちろん、皆、死んでいるさ。特にエンジンの死は直接、車にとっての死だよ。乗せ換えたところで機械としては生き返っても、生命としては生き返らない。車の死は人間に比べて案外早いものだよ」
「お墓でしゅ」
「お線香あげていくでしゅ」
「うん。後でね。イワンさん、車のためって……?」
イワンは数歩進みジェイミーに背中を向けたまま距離をとった。
そして粛々と語る。
「くるまの未来のために歴史に残った者たちをこうして展示しているんだ。それは過去を忘れないためでもあり、そして彼らへの罰だよ」
イワンの少し曇った顔が見えたのはノブ子だけだった。それとリンクするようになぜかノブ子の胸も痛んだ。
「貴方一体何者なの?」恐る恐るノブ子は聞いた。
「車たちの代弁者といったところだよ。故あって協力している」
「ふーん。HK(はなしかわるけど)。アタシら帰れるのよね?」
背だけをみていてもイワンの雰囲気が険しく変わったように見えた。だが、一番敏感に感じ取っていたのは双子だった。
二匹ともかなり小刻みに震えだして、うううー、と唸っていた。
「当然、条件があるよ」
「わかってるし。アタシとこのノブリンだけは今後も協力しろってことよねー」
「察しがいい。君たちはいつか来る日のために、人間たちとの調停に協力をしてもらいたい」
「いつかとか、来る日とか、何かもやっとする。はっきり言ってほしいんだけど」
ジェイミーは固唾を飲みこんだ。
「くるまの権利を人間に認めてもらう機会が来るってことさ。いつかは分からないけどね」
メルザは、あーそーなの、と言い、静かになった。
「ゲリウスとコアラー。あの二人はどうなるの?」
「うん。やはりというか。あの短い間に大分君たちは彼らに情が移っていたようだ」
ノブ子の問いに反応しながらイワンはいつの間にか手元に握っていたリモコンのスイッチを押す。
一部暗闇のままだったブースに照明があたる。さらされたのは何もない空間である。しかし全員が背筋を凍らせた。
展示ロープが他の車たちが並ぶブースト同じように設置されている。その中には丁度、車二台分の空間があった。
「あの二台からエンジン、その他もろもろ取り出して眠りについてもらう。この場所で、永遠にね……」
双子は、アンッアンッ、と必死の遠吠えをイワンに向けてした。同時に全員が警戒の視線を向ける。
「そんなの許さないわ。何の理由があってそんなことをしようとしているの!」
「そうだよ! ゲリ子とコアラーっちはアタシらと一緒に帰んだよ!」
イワンは部屋の中央に静かに、不気味に歩いた。一台の朱色の車の元に行き、その車体に無感情な視線を落とす。その透き通った青の瞳が伏せられると、ノブ子は再びえぐるような胸の痛みに襲われた。
「GAZ M21 Volga(ヴォルガ)。かつてロシアの地にて初めて人々に認知された自我を持つ車。彼の罪は偏愛だ」
『車たちには僕らが理解できていない常識がある』ジェイミーの推論はやはり当たっている。ノブ子はいち早く情報を整理する。
あの二台は犯してはいけない不貞という罪を犯してここに連れてこられたのだ。そのことはおそらく他の車たちにも共有されている。
諸々の行動を監視されていたのではない。むしろ、もっとえげつない形で共有されたのだ。
そこまで知りつつ、偏愛って、とノブ子は恐る恐る口に出してみた。
イワンはこちらの意図を見透かしたように笑みを再び浮かべた。
「ゴリラという動物が人間に発見されてから精々百五十年程度しか経っていないことは知ってるかい? それまで彼らは用心深く隠れていたそうだ。……。車とて同じさ。人間に生み出されながらも一部は覚醒して数百年、人間に自我を持つことを気取られずに過ごしてきた」
そしてイワンの視線は再び朱色のヴォルガに向かった。
「彼は自分の息子を守るために自らの姿をさらして囮になったんだ……。そこからだ。彼の暴露により人間に認知され、長い旅は始まることになった」
「子供を守んことのどこが罪なんだよ! そんなの超厳しすぎない!?」メルザは吠えた。
「罪だよ。何より彼が自らそう認めた。車たちは彼の苦しいの決断も、息子への愛だって知っている。……。だから皆で受け止めた。彼は喜び命を還した」
「マジイミフよ!」
意味不明だ。車用アクセサリという微妙な立ち位置ではあるがノブ子も声高にそう言って、必死に吠えている双子のようにメルザに加勢したい。
彼らの理に踏み込みすぎたのだ……。嫌な予感はするがそれでも、車をしることから逃れることはできない。
「はじめ、ゲリウスの声を聴いたとき、貴方たちは人間に怯えてると思ってた。けど、ちがう……」
犬たちの鳴き声が止んだ。ジェイミーは目を泳がせながらこちらを見ている
「なにか……、なにか逃れようのないものに抗っている気がするわ。……、一体あなた達は何なの?」
「僕らか……。そうだね。君には語ってもよさそうだ」
「あなた、やっぱり……」
イワンはこの部屋の出口まで歩いた。
「知りたいならついておいで。案内しよう、コアラーたちのもとに」
(次回に続く)
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