白紙のメッセージ

ぱこ

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秋の観覧車

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今迄の暑さが嘘のように肌寒くなってきた。この生活にもやっと慣れてきた。突然ですが私は窮地に立っています。それは昨日の夜のことだった。

当たり前になってきたこの日々をいつも通り過ごし、眠りにつこうとしていたら携帯が鳴った。 
「蒼からラインだ。」
開いてみて、一気に目が覚めた。
『夜遅くにごめんね。明日の土曜日出掛けない?』 
これは所謂''デート''というものではないのか?どうすればいいのか分からないけど、行きたい。
『いいよ!集合とかってどうする?』 
こんなに短い文章でも滅茶苦茶緊張した。 
『じゃあ月島公園に‪9時‬で大丈夫かな?』 
『大丈夫だよ。明日、楽しみにしてるね。』 
そんな遣り取りをして私は目を閉じた。嬉しさのあまり、口角が上がっていくのが分かった。

そして、当日。服どうしよう。こんな事なら昨日の間に決めておけば良かった。まあ、楽しみ過ぎて‪5時に‬起きてしまった私に「ナイス」とでも言っておこう。取り敢えず腕にスリットの入ったホワイトのブラウスにイエローのフィッシュテールのスカートを合わせた。これが私の精一杯だ。薄くメイクをして、長い髪を下ろした。元々癖毛なのでふわふわしていい感じになっていると信じる。気付けばもう‪8時‬だった。軽く朝食を取り、家を出る。その前に鏡で自分の姿を見るが虚しくなってきた。
「成るように成れ。」 
そう言い乍、流行りを知らない自分を憎んだ。
                                                                            
俺が公園に着いた時結衣はまだ来ていなかった。そう分かり安心した。俺から誘っておいて待たせるとかあり得ない。でも家を出る迄大変だった。
昨日、勇気を出して結衣を誘って、今日流行りに敏感な姉に服を選んでもらった。頼るのは嫌だったけど他に選択肢はなかった。姉には「好きな子でも出来たの?」と茶化された。「五月蝿い」と言いつつ「ずっと好きだったんだよ。」と返した。そうすると姉はニヤニヤしながらも手伝ってくれた。家を出る時には「頑張ってこい」と背中を押してくれた。
                                                                                       
公園が見えて来たのと同時に蒼の姿が見えた。まさか待たせてしまったのか。急いで走っていった。 
「待たせてごめんなさい。」 
息が切れてうまく言えなかった。でも蒼は焦るように  
「いや、俺が早く来過ぎただけだし、まだ10分前だよ。」 
と言った。 
「ちょっと早いけど行こっか。」
と蒼が意地悪に笑う。感情豊かだな、こんな顔初めて見た。そんなこと思ってる場合じゃなかった。
「えっ、何処行くの?」 
「秘密ー。まあ変な所じゃないから着いて来て。」 
そう言って左手の人差し指を口元に当てた。そして右手で私の手を握った。ドキっとし乍も握り返す。バスに乗り、たわいない会話をしているとすぐに着いてしまった。
「此処だよ。」
其処は新しく出来た 遊園地だった。自然が豊かで今の時期なら銀杏も見られるらしい。
「前行きたいって言ってなかった?」
「言った...。」 
「ごめん。嫌、だった?」
「嫌じゃない。すっごく嬉しい。自分でも言った事忘れてて吃驚しただけ。よく覚えてたねね。」
「覚えておきたかったから。」
と言った。それは私が言ったから、って思って良いのかな?あっそうだ。
「絶叫、大丈夫?」
不安になって聞いてみる。もし、苦手だったら申し訳なくて仕方ない。
「大丈夫だよ。寧ろ好きだから俺も行きたかったんだ。」
それから、ジェットコースターに乗りまくってもう外は闇が深くなっていた。
「わっ、綺麗。」
銀杏並木の真ん中で何処を見ても黄色で埋め尽くされている。銀杏並木を抜ければ真っ暗になっていた。その瞬間パッと明るくなった。赤や青、緑とイルミネーション園内が飾られていく。
「最後にさ、観覧車乗らない?」
「うん、いいね。乗ろっか。」
そうして乗った観覧車は透明で周りがよく見える。さっきまで私達がいた所がすごく小さい。
「はい、これ。」
そう言って渡されたプレゼントに戸惑いを隠せなかった。
「えっ今日誕生日でも、何でもないよ?」
「そういうことは気にしないの、ほら開けてみて。」
そこにはリボンのバナナクリップが入っていた。
「可愛い。今付けて良い?」
「勿論。貸して、付けてあげるよ。」
蒼は手慣れた手つきで髪を留める。そして私の顔を覗き込んで言った。
「やっぱり、可愛い。」
そして、「似合いそうだったなぁと思ったら買わずにはいられなくって」と付け足した。
顔が熱い。そう気を取られていたら、気付いたときには観覧車はもう止まっていた。
「終わっちゃった。」 
ずっと止まらなければいい、なんて某有名短歌みたいだ。
私達は観覧車を降り出口へと向かった。もう少しで出発するバスに乗り込んだ。 
                                                                                        
「今日、楽しかったね。」と言ってみるけど、俺の心臓はまだバクバクいっている。今日、楽しんで貰えるか不安だった。でも隣をみると安心する。こんなに嬉しそうな顔で笑っている彼女を見ると。どうして、こんなに愛おしいのか。 
「もう、着いちゃった。」
小さく呟いた。いつも結衣は別れるとき、少し寂しそうに笑う。本人は気づいていないんだろうけど。でも、俺にはどうすることも出来ない。胸が締め付けられるように痛い。
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