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午前の掃除の仕事を終わらせ、勉強する部屋へ向かった。
近頃はもう一人で掃除を任されるようになって、エンジュが仕上がりを確認してくれる。
最初は体力が無さすぎて机を拭くのが精一杯だった。ずいぶんと成長できたように思うし、自分の仕事を認められているような気がして、ふわふわとした気持ちになる。
主人を先に待たせるわけにはいかないから昼もそこそこで済ませた。
食堂で「もっと肉をつけないと身がもたないぞ!」と言われたけど聞こえないふりをした。
屋敷に来た頃、従順に忠実にしていたらいつか復讐の機会が来ると思った。だからいつもアシダンセラ一家には忠実な姿勢を見せたいんだ、と思うようにしていた。
自分に良くしてくれるここの一家に復讐だなんて、おかしいのかもしれない。ここに引き取られてからそういった考えが頭に浮かぶようになった。最近は復讐の気持ちがずいぶん揺らいでいて、優しかった兄様を裏切っているような気分だった。
「エリュ、先に来ていたんだね」
「ウィリデ様」
顔を上げて立ち上がり、ウィリデ様が座る椅子を引く。
ウィリデ様は素敵な方だ。入室するだけで空気が綺麗になるような気分がした。椅子に座るために近づいてきたウィリデ様は、今日もふわりと清涼な、心地のいい匂いがして心が弾みそうになる。
「今日はよろしくお願いします」
僕はお辞儀をしてから彼の隣の椅子に座った。
彼が来る前に机をふたつ並べておいた。
主人の隣に座るのもどうかと思ったが、このかたちがいちばん良いだろうと考えた。
ウィリデ様は手入れの行き届いた綺麗な指で分厚い本を開いた。僕もそれにならう。
「エリュの指先も最初の頃より綺麗になってきたね。毎日軟膏を塗っている証拠だ。言いつけを守っていてえらいね」
ウィリデ様の萌黄色の瞳が僕の指に向けられた。
屋敷に来た当初は全身がぼろぼろで、指先も爪が割れたりととても荒れていた。そんな僕に奥様が軟膏を贈ってくださり、質の良い軟膏が手に入る店まで教えてもらっていた。
「仕事をするからこれからも手が荒れるでしょう。きちんと軟膏を塗って手入れをしなさいね。手が荒れて痛い思いをしてほしくないの」
奥様は使用人の指先の荒れまで気にしてくださる方だった。
言いつけもあったけど、久しぶりに親切にしてもらえたことが嬉しくて、奥様の気持ちに報いたかった。
近頃はもう一人で掃除を任されるようになって、エンジュが仕上がりを確認してくれる。
最初は体力が無さすぎて机を拭くのが精一杯だった。ずいぶんと成長できたように思うし、自分の仕事を認められているような気がして、ふわふわとした気持ちになる。
主人を先に待たせるわけにはいかないから昼もそこそこで済ませた。
食堂で「もっと肉をつけないと身がもたないぞ!」と言われたけど聞こえないふりをした。
屋敷に来た頃、従順に忠実にしていたらいつか復讐の機会が来ると思った。だからいつもアシダンセラ一家には忠実な姿勢を見せたいんだ、と思うようにしていた。
自分に良くしてくれるここの一家に復讐だなんて、おかしいのかもしれない。ここに引き取られてからそういった考えが頭に浮かぶようになった。最近は復讐の気持ちがずいぶん揺らいでいて、優しかった兄様を裏切っているような気分だった。
「エリュ、先に来ていたんだね」
「ウィリデ様」
顔を上げて立ち上がり、ウィリデ様が座る椅子を引く。
ウィリデ様は素敵な方だ。入室するだけで空気が綺麗になるような気分がした。椅子に座るために近づいてきたウィリデ様は、今日もふわりと清涼な、心地のいい匂いがして心が弾みそうになる。
「今日はよろしくお願いします」
僕はお辞儀をしてから彼の隣の椅子に座った。
彼が来る前に机をふたつ並べておいた。
主人の隣に座るのもどうかと思ったが、このかたちがいちばん良いだろうと考えた。
ウィリデ様は手入れの行き届いた綺麗な指で分厚い本を開いた。僕もそれにならう。
「エリュの指先も最初の頃より綺麗になってきたね。毎日軟膏を塗っている証拠だ。言いつけを守っていてえらいね」
ウィリデ様の萌黄色の瞳が僕の指に向けられた。
屋敷に来た当初は全身がぼろぼろで、指先も爪が割れたりととても荒れていた。そんな僕に奥様が軟膏を贈ってくださり、質の良い軟膏が手に入る店まで教えてもらっていた。
「仕事をするからこれからも手が荒れるでしょう。きちんと軟膏を塗って手入れをしなさいね。手が荒れて痛い思いをしてほしくないの」
奥様は使用人の指先の荒れまで気にしてくださる方だった。
言いつけもあったけど、久しぶりに親切にしてもらえたことが嬉しくて、奥様の気持ちに報いたかった。
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