【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり

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第一章 運命の出会い

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 あと二年。二年間問題を起こさずに過ごせばΩだとしてもこの附属病院で働かせてもらえる。

 拓海は大学の奨学生として、年間の学費をほぼ賄っている。その学費の返済条件には、αが多い大学でΩのバース被害を起こさずに六年の修学を終えた上で、奨学生は附属病院で迎えられ、貸与期間と同期間の勤務をすると返済が免除される事になっている。さらに、大学の卒業生からの給付奨学金があり、これも非常に審査が厳しいため、優秀な成績を収めなければならない。
 だが、拓海は地頭が良かった。今の時代、Ωは劣性遺伝子だと評価されているが、頭の出来はαに並ぶものだった。
 拓海のΩの母親は大物政治家と愛人の子供で、βの父親は財閥のα家系の三男だった。父親はα家系に生まれたβだったが、対応はそこまで酷くは無かった。しかし、Ωを嫁にしたために姓を継ぐ事を許されなかった。
 そのため、拓海は母親の姓を名乗った。しかし、母親もまた自分の父親の姓を名乗ることが出来ず、自分の母親の姓だったので、拓海がこの事実を知る事はないが、α家系にもっとも近いΩである事に変わりなかった。
 もし、拓海のバース姓がαだったならば、父親の家が引き取る事もあっただろう。父親がβの女性を連れてきたのは、拓海がΩだと診断された後の事だったからだ。
 彼の生い立ちは終わりにして、医大にいても優秀な成績を収める事は拓海にとって苦では無かった。むしろ、人を救う仕事に熱を持って、勉強に育めている。

 拓海は講義室につくと、それなりの厚さがあるスケジュール帳を取り出した。ページをペラペラ開いていると、去年のページから三ページ毎に一週間分のマスを赤いマーカーで線が引いてある。俗にいうΩの発情期だ。
 最近ではスマホで管理出来るアプリが流行っているが、拓海は毎回スケジュール帳に記録している。機械が苦手というわけではないが、元からアナログ人間くさいところがあり、課題で指定される事がなければパソコンは使わず手書きでまとめ、趣味の読書でも紙媒体を選び、流石にこの時代スマホでも楽しめる音楽もCDプレーヤーで流すため、スマホのアプリには元からインストールされているアプリと無料メッセージアプリしか入っていないのだ。
 だが、初めに言った通り、機械が苦手なわけではないので、簡単な調べ物であれば、スマホの検索機能を使ったり、医療データを扱う際には積極的にパソコンをする。現代人に必要なツールはそれなりに利用しているし、医療に必要なスキルもある。
 それに、Ωの発情期というのは特異な性質を持っていない限りアプリを入れる必要はないと拓海は考えており、スケジュール帳を使用していた。しかし、今月のページを見た拓海は顔面蒼白になった。

 今月の発情期が少し遅れている?

 拓海は発情期がきた日に印を付け、終わった日にマーカーを引くため、これまで安定して三ヶ月毎に定期的にきていた発情期を振り返る事をしなかった。
 けれど、今回はたまたまゆっくりとページを捲っていて、前回の発情期を確認していた。そのおかげで発情期が終わってから三ヶ月と二十日が経っている事に気づけたのだ。
 スケジュール帳の紙を握る手に嫌な汗が流れ、拓海は一日でも乱れる事が無かった発情期に恐怖に似た不安を感じた。
 
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