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第二章
『2020 疫走る』
しおりを挟む相聞歌どこへ消えたか初秋の夜
爽籟のなき街嘆きひしめけり
康成も忘れ去られて夏深し
旅もせで籠もり過ごせば秋暑かな
掃除する影ひとつあり秋の浜
かぶとむし捕らねばならぬ盆休み
ばあちゃんの冷えたそうめん盆休み
行水の背中の白し夏の月
肌白き人の佇む秋渚
血の味を忘れぬ月か敗戦日
静けさやかくありきかと敗戦日
蜩やいつしか道を忘れたり
かなかなと不景気面に泣かれをり
亡き人を偲び新酒をまた酌んで
日焼けした恋の跡消す秋渚
安寧の兆しなき世の星月夜
星月夜とほくで影は病み伏せる
群れる雲どこへ消えゆく星月夜
約束は果たせず別れ星逢う夜
読み返す初秋のページに紙魚ひとつ
盆休み帰省せんでの声さびし
気づかぬか最早われらは鵙の贄
秋寂や吾の形見はどれにする
朝寒や必死のパッチをなくしてた
酔ひて詠む明日の我が身か秋寒し
秋寂に性悪女の嘘が舞う
肩凝りに炉へ火入れたる冬隣
晩菊のゆれて千の風を聴く
秋の別れ彦根屏風の顔になり
枯れ朽ちたものを葬り秋の果て
のそのそと歩む吾おき秋の行く
泣きながら縄跳びで駆く子に夕陽
ホームレス隙見て奪い合う毛布
なんの夢見るや路上のぼろ毛布
もう閉じる野生の花や秋落暉
かわいいと動物に笑む毛皮着て
毛皮着て赤く染めをり手も口も
冬の波まだ帰れない望郷に
冬木立ち野良では人も殺処分
手袋でふれるあなたは遠かりき
芽麦でも踏まれ踏まれるときは来る
見失う背を華やかに風花す
憧れし荷風の最期すきま風
虎落笛さえ楽し独居老人
大雪やあかぎれする手いそがしく
干し鱈や祖母の북어국(プゴクッ)追憶す
提燈を持つて馳走のあんこう鍋
湿り気の重き蒲団で風邪に臥す
底見えぬ昏き目で食む鮟鱇や
狩り犬や手負いの熊へ牙を剝く
背くこと知らぬ仁義の猟犬や
枯茨まだ刺す棘は残しをり
凍空や雲も静かに聖歌聴く
はや暮れて凍空どこへと紅をさす
底冷えや貧しき人に容赦なく
新自由主義の冷たい言葉ひとを刺す
脚よせて冷た冷たとはしゃぎをり
狐火か遠くにゆらぐ聖夜の燈
かわたれにゆく道しめす狐火よ
銭湯や鼻唄ひびく年の内
逝く人を誰にも言えず年の内
なにもなき年の内なり雪は掌(て)に
寒禽や貧しき人に目を閉じぬ
北風に抗い巌の冬の鳥
修羅に生く寒禽の衝く声高し
消し去れぬ傷を受け入れ煤払い
日も暮れてふるまい酒で煤湯入る
煤掃きもされぬ遺影の顔が泣く
ビル街の狭き空にも冬至の日
南ゆく陽の足はやし柚子湯入る
夕暮れに冬至南瓜煮る匂い
アカスリのあと風呂吹きで晩酌す
風呂吹や大根足と卓囲む
注連売りの不景気面や令和二年
マスクする街に侘しき飾り売り
凍て星を眺め眠れぬホームレス
荒れ星や誰に言うまい痛む傷
ゴスペルを聴きいる冬の星ひとつ
燦光の聖樹を見向きせぬ人よ
ケーキさえ買えぬ母にも聖樹の灯
息白し少年兵は銃撃す
かわたれのダブルワーカー息白し
夜も更けて火の用心の息白し
室咲や世間知らずが気に障る
厳寒を知らず室咲ぬくぬくと
歳晩に大掃除まだ終えられず
歳晩に亡き人たちの写真見る
詠めぬ歌そのままにして歳晩や
炊出しの列を横目に事納
働き方改革も仕事納めなく
せわしなく暦果つまで待てず捨て
換気する風に吹かれて古暦
年の夜に格闘技観て鐘を聴く
初東風や迷いは晴れぬ懐手
おもうこと冷やかすような初東風や
そわそわと小鳥さえずる三ヶ日
いまは亡き寅さんを観て三ヶ日
晴天に破魔矢を向けし指を見ゆ
破魔弓や八幡宮の夕しずか
音もなく積もる白さの冬障子
小寒や水使う手が躊躇うて
すきやきにもうもう声あげ松の内
疫には効かぬ粥かと人日に
松明や小さき梢の影ひとつ
歯固やバーガー好きの細き顎
見る影も少なき夕の猿曳や
ひび割れす手も餅もなき鏡割
舞う雪に浮足たちて初句会
風雪に孤高の舞の一白鳥
餅花や静かにゆれし窓は雪
夜明けの子らは空焦がし小正月
雪掻や汽車の蒸気か白き息
ぬくもりに震えた夜よ阪神忌
霜焼の暗紅色へキスをして
つぶしたるときの目おもひ薬食
大寒や凍えた指が迷う肌
冬凪の月光しみる湖(うみ)の波
雪礫けもののように身をふるい
首傾げ寺へ参るか寒鴉
おのれのみ吠えて静かの天狼や
寒泳子あめゆおかわり乞う唇(くち)よ
寒椿だれぞ欲(ほ)る夜や紅をさし
輝きに鋸ひく音や採氷場
裸木や倒産と知り駆ける夜
人恋し風強き日の冬安居
冷えびえと割る寒卵けさもまた
俗な身を震わせてをり瀧凍つる
寒木瓜や寂びたる部屋に蕾笑む
立春や変わりはさしてなき風も
イヤリングゆらす二月の風よ吹け
蒼穹にぽたりぽたりと泣く垂氷
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