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岸野先輩
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今日は新郎新婦と話せるような時間はないだろうなと思っていたけれど、披露宴会場では出席者との時間を取れるような配慮がされていたようで、杉山先輩とお話することができた。
「ご結婚おめでとうございます。奥様モデルさん!?とーってもお綺麗ですね」
私は、ここは言ってやらなきゃだよねと思って満面の笑みで祝福を述べた。
勿論後半を強調した。
先輩は私の笑顔から何かを読み取ったようだった。
「好きになったのがたまたまルミコだったってだけだ。細井の好きなタイプを言ってみろ」
「イケメンで優しくて高身長高収入です」
「今更だけど、それ絶対言わないほうがいいぞ。そういうの平然と言う女は男に引かれるからな。自信のない男は、細井のことが好きでも自分じゃだめだって思っちまう。婚期逃すぞ」
杉山先輩は毎回私に心のこもった忠告をしてくれる。
本当によい先輩だ。
「先輩以外には言いません」
私は自信をもって保証した。
「ぶれないな細井は。で、お前はそんな理想そのままの奴と結婚できると思うか?」
うっ。
それ今言われると泣きそう。
分かってたんだけどね。分かってたんだけど。
「思わないです」
「つまりそういうことだ」
なんか絶対違う気がするし前に好きだった人思い出しちゃったけど、おめでたい席だから笑顔でうなずいた。
「細井に良いことを教えてやろう。細井の理想そのままの男があそこにいるぞ」
なんだって?どこどこ?今すぐ紹介してください。
「どこですか?」
振り返って会場をきょろきょろ見回す。
「ほら、あそこだあそこ」
先輩の視線を追って、斜め左方向を見たけれど、それらしい人はいなかった。
「岸野だ」
「うわわ。岸野先輩か。やめてください怖いです。恐れ多いです」
思いがけず岸野先輩の名前が出て、変な汗が出てきた。
「細井、岸野怖いの?なんとなくそんなに懐いてない感はあったけど。なんかあった?」
やばい。
せっかく仲良くしてもらってるのに、私が岸野先輩苦手ってバレると気まずくなっちゃうよね。
誤魔化さないと。
「そういうことじゃなくて、岸野先輩は完璧すぎるってことです。私なんかが狙って近づいたら目力で瞬殺されます」
「ふぅん?」
岸野先輩に私は嫌われている。
より正確に言うなら生理的に無理だと思われている。
学生時代、杉山先輩は私と仲良くしてくれた。
岸野先輩と杉山先輩は仲良しなので私と岸野先輩が一緒にいる時間も長くなってしまい、当時は岸野先輩には苦痛を強いていたと思う。
生理的に無理な人間が自分の周りをうろちょろしてるって、嫌な気分だろう。
私だったら生理的に無理な人に対して微笑みかけたりできないけれど、岸野先輩は無理な私にも普通に接してくれるので私はありがたく思う半面、なるべく岸野先輩に負担をかけないためにはどうしたらいいかと考えて行動している。
なるべく視界に入らない位置に座ったり、なるべく目を合わさないようにしたりと大変なのだ。
私はずぼらな性格で人に対して気を遣うのも苦手だ。
最初は気にして気を遣うけれど何時間も一緒にいると途中で集中力が途切れて視線を合わせてしまったり馴れ馴れしい態度を取ってしまったりする。
そのため気を遣わなければならない岸野先輩は苦手なのだ。
新郎新婦は他の場所へ移っていった。
それにしても本当に素敵な式だ。
新郎新婦の幸福感が参加者にも伝わっているのかみんなが笑顔だった。
私も結婚したいなぁ。
「ご結婚おめでとうございます。奥様モデルさん!?とーってもお綺麗ですね」
私は、ここは言ってやらなきゃだよねと思って満面の笑みで祝福を述べた。
勿論後半を強調した。
先輩は私の笑顔から何かを読み取ったようだった。
「好きになったのがたまたまルミコだったってだけだ。細井の好きなタイプを言ってみろ」
「イケメンで優しくて高身長高収入です」
「今更だけど、それ絶対言わないほうがいいぞ。そういうの平然と言う女は男に引かれるからな。自信のない男は、細井のことが好きでも自分じゃだめだって思っちまう。婚期逃すぞ」
杉山先輩は毎回私に心のこもった忠告をしてくれる。
本当によい先輩だ。
「先輩以外には言いません」
私は自信をもって保証した。
「ぶれないな細井は。で、お前はそんな理想そのままの奴と結婚できると思うか?」
うっ。
それ今言われると泣きそう。
分かってたんだけどね。分かってたんだけど。
「思わないです」
「つまりそういうことだ」
なんか絶対違う気がするし前に好きだった人思い出しちゃったけど、おめでたい席だから笑顔でうなずいた。
「細井に良いことを教えてやろう。細井の理想そのままの男があそこにいるぞ」
なんだって?どこどこ?今すぐ紹介してください。
「どこですか?」
振り返って会場をきょろきょろ見回す。
「ほら、あそこだあそこ」
先輩の視線を追って、斜め左方向を見たけれど、それらしい人はいなかった。
「岸野だ」
「うわわ。岸野先輩か。やめてください怖いです。恐れ多いです」
思いがけず岸野先輩の名前が出て、変な汗が出てきた。
「細井、岸野怖いの?なんとなくそんなに懐いてない感はあったけど。なんかあった?」
やばい。
せっかく仲良くしてもらってるのに、私が岸野先輩苦手ってバレると気まずくなっちゃうよね。
誤魔化さないと。
「そういうことじゃなくて、岸野先輩は完璧すぎるってことです。私なんかが狙って近づいたら目力で瞬殺されます」
「ふぅん?」
岸野先輩に私は嫌われている。
より正確に言うなら生理的に無理だと思われている。
学生時代、杉山先輩は私と仲良くしてくれた。
岸野先輩と杉山先輩は仲良しなので私と岸野先輩が一緒にいる時間も長くなってしまい、当時は岸野先輩には苦痛を強いていたと思う。
生理的に無理な人間が自分の周りをうろちょろしてるって、嫌な気分だろう。
私だったら生理的に無理な人に対して微笑みかけたりできないけれど、岸野先輩は無理な私にも普通に接してくれるので私はありがたく思う半面、なるべく岸野先輩に負担をかけないためにはどうしたらいいかと考えて行動している。
なるべく視界に入らない位置に座ったり、なるべく目を合わさないようにしたりと大変なのだ。
私はずぼらな性格で人に対して気を遣うのも苦手だ。
最初は気にして気を遣うけれど何時間も一緒にいると途中で集中力が途切れて視線を合わせてしまったり馴れ馴れしい態度を取ってしまったりする。
そのため気を遣わなければならない岸野先輩は苦手なのだ。
新郎新婦は他の場所へ移っていった。
それにしても本当に素敵な式だ。
新郎新婦の幸福感が参加者にも伝わっているのかみんなが笑顔だった。
私も結婚したいなぁ。
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