婚約を白紙に戻すそうですが、そんなの認めません!先回りさせていただきます。

国湖奈津

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王都の屋敷に急いで帰った私は、エマに会いに行った。
エマは部屋で人形遊びをしていた。

「ねぇ、エマ。エマは、イザックのこと好き?」

「すきよ」
エマは人形遊びを続けたまま、私を見ることもなく答えている。

「結婚したい?」

「イザック殿下と結婚するのはリュシー姉様でしょう。私はアンリ君とロジェ君とアルベール君とで、逆ハーレムを作って幸せに暮らすつもり。もう約束もしてるの」

逆ハーレム!?
エマは私が思っていたよりも、遥か最先端の感覚の中で生きていたようだ。

しかももう約束してる?
すごい。

「じゃあ、もしイザックに結婚しようって言われても、断るのね?」
重要なことなので、しっかり確認する。

「だから、イザック殿下はリュシー姉様の旦那様になるんでしょう?変なこと言わないで。それに私は年下にしか興味がないから、安心して良いわ」

(よかった)
エマは私の知らぬ間に、とてもしっかりした少女に成長していたようだ。
放っておいても、イザックをきっぱりと断ってくれるだろう。

エマのしっかり者発言を聞いてから改めて見てみると、エマの持っている人形は見たことのない人形だった。
私が子供の頃に遊んだ動物のぬいぐるみや、女の子の形をした人形とは違い、乾燥させた草を編んでできているように見える。

「なんだかその人形、変わっているわね」

「あぁ、これ?これは黒魔術に使うものなの」

「黒魔術!?」

「そうよ。遠い南の島に太古から伝わる黒魔術で、この人形も満月の夜に作法にのっとって作ったものなの。これを使って儀式を行えば、相手を恋の奴隷にすることができるのよ」

恋の奴隷!?

「本当?」
「もちろん。私は何度も成功しているもの」

私も子供のころ、黒魔術…ではないけれど、恋の占いやおまじないをしていた。

エマの行っているような本格的なものではないけれど、花びらに相手の名前と自分の名前を書いて、袋に入れておくと両想いになれると聞いて、やったことがある。

もちろん花びらに書いた名前はイザックだ。

今も机の奥深くを探せば、どこかにおまじないの袋が眠っていると思う。

(最終手段として、エマの黒魔術に頼るのもいいかもしれないわ)
藁にもすがりたい思いだった私は、恥を忍んでエマに教えを乞うことにした。

「私もやってみたいから、教えてくれる?」

「いいけど、そのためには相手の髪が必要よ。あるの?」

「…ないわ」
髪が必要というのは、ハードルが高い。
その分 効果がありそうだ。

「じゃあ、髪を手に入れることができたら、教えてあげる。私はそろそろ儀式を始めるから、リュシー姉様は部屋から出てくれる?」

私はエマに部屋から追い出された。
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