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 ハンカチのおかげもあって、私は久しぶりにぐっすりと眠った。
 翌朝起きた時には、頭がぼーっとしてだるい感じや肩が重い感じがかなり取れ、すっきりとした気分で朝を迎えることができた。
 しっかり眠ったことで、かなりリフレッシュすることができたようだ。

 明日からは別荘に王太子殿下をお招きするので、私は今日チームメンバーとともに別荘に前乗りし、準備を整えることになっている。

 朝食を終え出発の準備を整えた私は、出発のあいさつをするため父の書斎を訪れていた。

 「お父様、私はそろそろ出発しようと思います」

 「もう体はいいのか?」

 「はい、昨日の午後から休ませていただき、もうすっかり元気になりました」

 「そうか、早い出発だな」

 「明日に向けて、あちらの首尾をしっかり確認しようと思います」

 備えあれば患いなしだからね。

 「そうか。しっかり王太子殿下のお心をつかむのだぞ」

 父は、任せたぞ!頑張れ!的な満面の笑みで私を見てくる。

 あ、まずい。
 すっかり忘れていた。
 
 そういえば、そもそもこの王太子殿下ご一行の我が領地来訪って、ヴィンセント様と私をくっつけるために父が画策したことだったんだった。
 完全に忘れてた。

 実はすでに振られてるし。
 振られたこと父に言ってなかった私も悪いな。
 かなり恥ずかしい一世一代の告白をしてダメだったんだからもう手の打ちようないよ。

 「あの、お父様、今更で恐縮なのですが、その、どのようにすれば王太子殿下のお心を、私に向けることができるのか、分からないので教えていただきたいのですが」

 私思い浮かびません。
 と正直に伝えることにした。
 父と娘の会話としてはかなり気まずいけれど、父の無茶ぶりが原因なのだし、このくらい聞いてもいいだろう。

 「そうか、お前にはそういった教育をしてこなかったから無理もない」

 そうそう。そのせいで私は穢れを知らない、純真無垢な娘に育っている。
 父と二人頷きあった。

 「そうだな、もし殿下と2人きりになる機会があったら、殿下の御名をお呼びし殿下の目を見つめてみなさい。」

 「はい。それから次はどうしたら良いですか?」

 「もうそれだけで十分だろう」

 父は良い教えを授けたと満足そうにうんうん頷いている。

 やばい。
 この人本当に国の大臣なのかな?
 それでどうにかなるなら苦労しないんだよ、こっちは。
 娘の力を過信しすぎてない?

 でも逆に考えれば、それしか父には求められていないということだ。
 既成事実を作るため、ヴィンセント様の寝込みを全裸で襲うとかはしなくていいということ。

 てっきりそっち方面を求められていると思っていたので、私は安心して胸をなでおろした。
 帰ってきたら、見つめたけどダメでしたと報告すれば大丈夫だろう。
 楽勝楽勝。

 「分かりました。お父様、アドバイスありがとうございます。それでは行ってまいります」

 私は、足取り軽く旅立った。
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