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私は恐る恐る部屋から出て、浴室に向かった。
部屋から出るとそこは廊下になっていた。
廊下には日除けがついて、廊下から庭にすぐ出られるようになっていた。
庭の真ん中には丸い建物があった。
浴室がどこなのか聞かなかったし、いつもの男性も話してくれなかったけれど、塀の中ならどこでも出入り自由だと言うのなら、探検してみようという気持ちで出かけた。
廊下に面してたくさん部屋が並んでいたが、部屋には鍵がかかっていたり、開いていても中は埃だらけだったりと、男性が言っていたように使われていないようだ。
一通り廊下を歩き終えた私は、庭の丸い建物に行ってみた。
思った通りここが浴場だった。
浴室、というには豪華すぎるその場所は、プールのように広い浴槽の周囲に、化粧台やソファが配置された空間だった。
湯舟は金色だ。
室内は灰色の大理石で覆われていて、ピカピカに輝いていた。
この場所は後宮の部屋と違い、念入りに手入れをされているようだ。
ここを1人で使えるなんて、なんとも贅沢だ。
私は服を脱ぎ、久々のお風呂を楽しんだ。
今日探検して塀の中の構造が分かった。
とてもシンプルな構造だ。
まず一番外側を高い塀が囲っている。
ほとんど正方形に近いようだ。
そしてその内側に浴場を囲んで建物が建っている。
敷地の中心には中庭と浴場がある。
漢字の「回」という字の形が近いだろう。
外側の□が塀で、内側の□が建物、中心に浴場だ。
浴場から出て着替えた私は、すっかり生き返った気分だった。
沈んでいた気分もすっきり晴れやかになっている。
昼食の時、私はここがどこなのか聞いてみることにした。
「ここはアルラシード宮殿です」
「ということは、ここはスワイマン殿下が治めるラドワン州の宮殿ですね。なぜ私はここにいるのでしょうか?もしかして、リナレイとタモハンの間に何か紛争が起こったのでしょうか?何かご存じだったら教えてくれませんか?」
私は数日間考えていたことを、男性に聞いてみた。
スワイマン殿下には皇帝陛下の即位式典の時に挨拶させて頂いたけれど、残念ながら慣れないヴェールのせいでお顔は全く覚えていない。
会話の内容もありふれた挨拶だった。
「さぁ、リナレイ国とのことは聞いていません。それから、私のことはアクラムとお呼びください。敬語も結構です。私は妃殿下にお仕えする立場ですので」
”妃殿下”なんて、呼ばれ慣れてないから、なんだかソワソワする。
「ここにいる理由は、スワイマン殿下に見初められたからではないでしょうか?」
「見初められた?」
「はい。ここはスワイマン殿下の後宮ですので」
「後宮?」
「はい」
後宮…!?いやいやいやいや。おかしいでしょう。
私は既に人妻なわけで。
それに人さらいのように連れてこられたわけだし。
第一その殿下とやらも来ないじゃない。
“人違い”という言葉が頭をよぎった。
そうだ。きっと人違いで連れてこられたに違いない。
部屋から出るとそこは廊下になっていた。
廊下には日除けがついて、廊下から庭にすぐ出られるようになっていた。
庭の真ん中には丸い建物があった。
浴室がどこなのか聞かなかったし、いつもの男性も話してくれなかったけれど、塀の中ならどこでも出入り自由だと言うのなら、探検してみようという気持ちで出かけた。
廊下に面してたくさん部屋が並んでいたが、部屋には鍵がかかっていたり、開いていても中は埃だらけだったりと、男性が言っていたように使われていないようだ。
一通り廊下を歩き終えた私は、庭の丸い建物に行ってみた。
思った通りここが浴場だった。
浴室、というには豪華すぎるその場所は、プールのように広い浴槽の周囲に、化粧台やソファが配置された空間だった。
湯舟は金色だ。
室内は灰色の大理石で覆われていて、ピカピカに輝いていた。
この場所は後宮の部屋と違い、念入りに手入れをされているようだ。
ここを1人で使えるなんて、なんとも贅沢だ。
私は服を脱ぎ、久々のお風呂を楽しんだ。
今日探検して塀の中の構造が分かった。
とてもシンプルな構造だ。
まず一番外側を高い塀が囲っている。
ほとんど正方形に近いようだ。
そしてその内側に浴場を囲んで建物が建っている。
敷地の中心には中庭と浴場がある。
漢字の「回」という字の形が近いだろう。
外側の□が塀で、内側の□が建物、中心に浴場だ。
浴場から出て着替えた私は、すっかり生き返った気分だった。
沈んでいた気分もすっきり晴れやかになっている。
昼食の時、私はここがどこなのか聞いてみることにした。
「ここはアルラシード宮殿です」
「ということは、ここはスワイマン殿下が治めるラドワン州の宮殿ですね。なぜ私はここにいるのでしょうか?もしかして、リナレイとタモハンの間に何か紛争が起こったのでしょうか?何かご存じだったら教えてくれませんか?」
私は数日間考えていたことを、男性に聞いてみた。
スワイマン殿下には皇帝陛下の即位式典の時に挨拶させて頂いたけれど、残念ながら慣れないヴェールのせいでお顔は全く覚えていない。
会話の内容もありふれた挨拶だった。
「さぁ、リナレイ国とのことは聞いていません。それから、私のことはアクラムとお呼びください。敬語も結構です。私は妃殿下にお仕えする立場ですので」
”妃殿下”なんて、呼ばれ慣れてないから、なんだかソワソワする。
「ここにいる理由は、スワイマン殿下に見初められたからではないでしょうか?」
「見初められた?」
「はい。ここはスワイマン殿下の後宮ですので」
「後宮?」
「はい」
後宮…!?いやいやいやいや。おかしいでしょう。
私は既に人妻なわけで。
それに人さらいのように連れてこられたわけだし。
第一その殿下とやらも来ないじゃない。
“人違い”という言葉が頭をよぎった。
そうだ。きっと人違いで連れてこられたに違いない。
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