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私は控えめながら上品なドレスに着替え、上からドレスと顔を布で覆い女性の装いで船を下りた。
ロブが用意してくれた馬車に乗り、カーン王子の住むクライシュ宮殿を目指した。
ロブのおかげでかなりスムーズに進んだこの計画、ここが最後の難関だ。
私は最初、普通にジェーンとして会いに行けばいいと思っていた。
でも何も身分を保証するものを持たず、1人で私が訪ねて行って信じてもらえる可能性は低い。
そもそもこの国では、後宮の女性が気軽に出歩いたりしないものだし。
そこで、私はジェーンの侍女としてクライシュ宮殿を訪ねることにした。
ジュメイラさんに贈り物を届けたいというジェーンの手紙(もちろん本物)を持っているので、多分後宮に入れてくれると思うのだ。
後宮に入ることさえできれば、ジュメイラさんは私の顔を知っているし、ジュメイラさんのいるところにはカーン王子が出没するので、話をすることができる。
私はロブにもらったお金で、街の中で一番格式高そうなホテルに部屋をとり、宮殿に手紙を届け、ホテルに戻って宮殿から迎えが来るのを待った。
翌日、宮殿から迎えが来て、私は無事にクライシュ宮殿の後宮に潜入することに成功した。
久しぶりに見たクライシュ宮殿の後宮は、なんだか懐かしい。
数か月前まで住んでたはずなのに、色々なことが有りすぎてここに住んでいたのはもう何年も前だったような感じがする。
導かれるままに進んだ場所は、ジュメイラさんの部屋で、なんとカーン王子もいた。
二人は私の顔を見ると、控えていた侍女たちをさがらせた。
「どうした?1人で来たのか?弟と喧嘩して家出してきたのか?」
3人だけになると、カーン王子は私に言った。
「照れ隠しでそっけないこと言う時もあるけど、本当は優しいいい子なのよ。だから、許してあげて」
ジュメイラさんは私の手を握った。
2人はどうやら、私がスワイマン殿下と喧嘩して出てきたと思っているようだ。
…ということは、この2人は私がスワイマン殿下の所にいるということは承知しているということね。
「ええと、喧嘩したとかじゃなくて…。あの、カーン王子が私をスワイマン殿下に贈ったんですか?」
「そうだ。君は弟のことをイケメンだと言っていた。しかし弟は女性が苦手だからと、私は君の要求を断った。ところが、その後弟のほうから君に一目ぼれしてしまって、どうしても欲しいのだと言ってきたんだ。いままで女性に興味のなかったあいつが、君に興味を示した。君たちは相思相愛だ。幸いなことに、私と君は夫婦となる儀式をしていない。君の処遇のことは、ずっと考えていたのだが、私の所にいて秘密の恋人を作るより、弟の正式な妃となることが君の幸せのために一番だと考えた。リナレイとの間では、王族同士の結婚という取り決めになっていた。弟が君と結婚しても問題ない」
カーン王子は私に説明してくれた。
「そうだったんですね。それなら私に相談してくれたら良かったのに」
そうだよ!
カーン王子的には私のことを考えてくれたみたいだけど、ちゃんとお相手の方と会って話してから自分で決めたかった。
「すまない。帰ろうとしていた所を弟に呼び止められて相談されたから、その場でOKしてしまった。あの時は一刻も早く帰りたくて」
あー、ジュメイラさんに会いたくて、急いで帰ったあの夜か。
私の運命、軽く決められたものだわ。
私はカーン王子にジト目を向けた。
「しかし、君と弟がお似合いで、これ以上ない良縁だと思って決めたことなんだ。それだけは信じてほしい」
カーン王子は言った。
「なかなか女性に興味を持てないあの子が、ジェーン様のことを見初めたと知った時は本当に嬉しかったのよ。しかもジェーン様もあの子のことを素敵だと仰ってたってカーン様から聞いて。本当にお似合いの2人だねって私たちいつも言ってたの」
ジュメイラさんも口添えし、2人は顔を見合わせ、「ねー」と頷きあっている。
ロブが用意してくれた馬車に乗り、カーン王子の住むクライシュ宮殿を目指した。
ロブのおかげでかなりスムーズに進んだこの計画、ここが最後の難関だ。
私は最初、普通にジェーンとして会いに行けばいいと思っていた。
でも何も身分を保証するものを持たず、1人で私が訪ねて行って信じてもらえる可能性は低い。
そもそもこの国では、後宮の女性が気軽に出歩いたりしないものだし。
そこで、私はジェーンの侍女としてクライシュ宮殿を訪ねることにした。
ジュメイラさんに贈り物を届けたいというジェーンの手紙(もちろん本物)を持っているので、多分後宮に入れてくれると思うのだ。
後宮に入ることさえできれば、ジュメイラさんは私の顔を知っているし、ジュメイラさんのいるところにはカーン王子が出没するので、話をすることができる。
私はロブにもらったお金で、街の中で一番格式高そうなホテルに部屋をとり、宮殿に手紙を届け、ホテルに戻って宮殿から迎えが来るのを待った。
翌日、宮殿から迎えが来て、私は無事にクライシュ宮殿の後宮に潜入することに成功した。
久しぶりに見たクライシュ宮殿の後宮は、なんだか懐かしい。
数か月前まで住んでたはずなのに、色々なことが有りすぎてここに住んでいたのはもう何年も前だったような感じがする。
導かれるままに進んだ場所は、ジュメイラさんの部屋で、なんとカーン王子もいた。
二人は私の顔を見ると、控えていた侍女たちをさがらせた。
「どうした?1人で来たのか?弟と喧嘩して家出してきたのか?」
3人だけになると、カーン王子は私に言った。
「照れ隠しでそっけないこと言う時もあるけど、本当は優しいいい子なのよ。だから、許してあげて」
ジュメイラさんは私の手を握った。
2人はどうやら、私がスワイマン殿下と喧嘩して出てきたと思っているようだ。
…ということは、この2人は私がスワイマン殿下の所にいるということは承知しているということね。
「ええと、喧嘩したとかじゃなくて…。あの、カーン王子が私をスワイマン殿下に贈ったんですか?」
「そうだ。君は弟のことをイケメンだと言っていた。しかし弟は女性が苦手だからと、私は君の要求を断った。ところが、その後弟のほうから君に一目ぼれしてしまって、どうしても欲しいのだと言ってきたんだ。いままで女性に興味のなかったあいつが、君に興味を示した。君たちは相思相愛だ。幸いなことに、私と君は夫婦となる儀式をしていない。君の処遇のことは、ずっと考えていたのだが、私の所にいて秘密の恋人を作るより、弟の正式な妃となることが君の幸せのために一番だと考えた。リナレイとの間では、王族同士の結婚という取り決めになっていた。弟が君と結婚しても問題ない」
カーン王子は私に説明してくれた。
「そうだったんですね。それなら私に相談してくれたら良かったのに」
そうだよ!
カーン王子的には私のことを考えてくれたみたいだけど、ちゃんとお相手の方と会って話してから自分で決めたかった。
「すまない。帰ろうとしていた所を弟に呼び止められて相談されたから、その場でOKしてしまった。あの時は一刻も早く帰りたくて」
あー、ジュメイラさんに会いたくて、急いで帰ったあの夜か。
私の運命、軽く決められたものだわ。
私はカーン王子にジト目を向けた。
「しかし、君と弟がお似合いで、これ以上ない良縁だと思って決めたことなんだ。それだけは信じてほしい」
カーン王子は言った。
「なかなか女性に興味を持てないあの子が、ジェーン様のことを見初めたと知った時は本当に嬉しかったのよ。しかもジェーン様もあの子のことを素敵だと仰ってたってカーン様から聞いて。本当にお似合いの2人だねって私たちいつも言ってたの」
ジュメイラさんも口添えし、2人は顔を見合わせ、「ねー」と頷きあっている。
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