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プロローグ
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『リーシャ・グレードリー、お前との婚約破棄を言い渡す!』
華やかな貴族の舞踏会が、リゼルド伯爵の一言で沈黙に包まれる。
他の貴婦人たちは皆修羅場が始まることを察し黙りこくった。
リゼルド伯爵は驚きの表情を見せる私を鼻で笑い、更に言葉を続ける。
『これについては国王陛下のお許しをいただいている! 今現在より、婚約は破棄とする!』
『理由を伺ってもよろしいでしょうか?』
『はっ、まだ分かっていないのかお前は』
『はい、私は頭が残念なことに弱いので、もしよろしければ理由を教えていただけないでしょうか?』
リゼルド伯爵は不敵な笑みを浮かべ、いかにも私を嘲笑うような眼で私を見る。
未だに自分が"有利"な立場にいると勘違いしているのがああ面白いなあと思いつつも、私はにこやかに微笑んだ。
『ならいい、教えてやろう。ははは、お前が一時的な子爵令嬢だからだ
お前の父親は先の戦で手柄を立てた。それ故、国王陛下から子爵の爵位を授けられた。
だが、その爵位は一時的なものであり、お前の父親が死ねばその爵位は消失する』
『……なるほど、つまり、私のこの子爵の身分は有限であるから、という認識でよろしいでしょうか?』
『ああ、そうだ。それに、お前よりもはるかに身分が高く、美しい女性と俺は婚約する予定だからな』
好き放題言いまくるこの男に、舞踏会の者たちは何も言わなかった。というか言えなかった。
リゼルドはここら辺の辺境地方では有名な貴族で、それだけ大きな権力も持っている。
辺境の小規模貴族の舞踏会なんぞでは、己の感情をだしまくりだ。
こいつはいずれ王都へと進出するという野望があるが、婚約者が一時的な子爵令嬢だと困るのだろう。
まあなんとも理解不能な理由だなあと思うが、それがリゼルド・フォーマブルという人間なので仕方がない。
私は子爵令嬢であり、その爵位は本人死亡時に消失するとされている。
婚約者の身分がそこまで大事なのか、そんなことにこだわるのかと一瞬呆れたが、もうリゼルドと私は赤の他人なのでどうでもいい。
『大歓迎でございますわ。その婚約破棄、喜んでお受け申し上げます
――ただしどうなるかおわかりですよね?』
含みを持たせながら、私は笑顔でそう言った。
リゼルドは一瞬顔を歪ませたが、すぐにまた自信あふれる表情に戻った。
『は、どうなるかおわかりですよね、だと? 自分をなんだと思っているんだお前は。
たかだか子爵令嬢の分際で伯爵である俺にそんな口を聞くとはなあ』
『……ひとつよろしいですか?』
『なんだ』
『私は子爵令嬢ではありませんわ。爵位を間違えて呼ぶなどやめていただきたいです』
『なにを今更、ついに頭がおかしくなったのか? 自分の爵位すら忘れ――』
『――私はリーシャ・シャーテローラ。現国王陛下の実娘でございます。
ですので、リーシャ子爵令嬢ではなくリーシャ王女と呼んでいただけます?』
リゼルドの表情が、一瞬で変貌した。
華やかな貴族の舞踏会が、リゼルド伯爵の一言で沈黙に包まれる。
他の貴婦人たちは皆修羅場が始まることを察し黙りこくった。
リゼルド伯爵は驚きの表情を見せる私を鼻で笑い、更に言葉を続ける。
『これについては国王陛下のお許しをいただいている! 今現在より、婚約は破棄とする!』
『理由を伺ってもよろしいでしょうか?』
『はっ、まだ分かっていないのかお前は』
『はい、私は頭が残念なことに弱いので、もしよろしければ理由を教えていただけないでしょうか?』
リゼルド伯爵は不敵な笑みを浮かべ、いかにも私を嘲笑うような眼で私を見る。
未だに自分が"有利"な立場にいると勘違いしているのがああ面白いなあと思いつつも、私はにこやかに微笑んだ。
『ならいい、教えてやろう。ははは、お前が一時的な子爵令嬢だからだ
お前の父親は先の戦で手柄を立てた。それ故、国王陛下から子爵の爵位を授けられた。
だが、その爵位は一時的なものであり、お前の父親が死ねばその爵位は消失する』
『……なるほど、つまり、私のこの子爵の身分は有限であるから、という認識でよろしいでしょうか?』
『ああ、そうだ。それに、お前よりもはるかに身分が高く、美しい女性と俺は婚約する予定だからな』
好き放題言いまくるこの男に、舞踏会の者たちは何も言わなかった。というか言えなかった。
リゼルドはここら辺の辺境地方では有名な貴族で、それだけ大きな権力も持っている。
辺境の小規模貴族の舞踏会なんぞでは、己の感情をだしまくりだ。
こいつはいずれ王都へと進出するという野望があるが、婚約者が一時的な子爵令嬢だと困るのだろう。
まあなんとも理解不能な理由だなあと思うが、それがリゼルド・フォーマブルという人間なので仕方がない。
私は子爵令嬢であり、その爵位は本人死亡時に消失するとされている。
婚約者の身分がそこまで大事なのか、そんなことにこだわるのかと一瞬呆れたが、もうリゼルドと私は赤の他人なのでどうでもいい。
『大歓迎でございますわ。その婚約破棄、喜んでお受け申し上げます
――ただしどうなるかおわかりですよね?』
含みを持たせながら、私は笑顔でそう言った。
リゼルドは一瞬顔を歪ませたが、すぐにまた自信あふれる表情に戻った。
『は、どうなるかおわかりですよね、だと? 自分をなんだと思っているんだお前は。
たかだか子爵令嬢の分際で伯爵である俺にそんな口を聞くとはなあ』
『……ひとつよろしいですか?』
『なんだ』
『私は子爵令嬢ではありませんわ。爵位を間違えて呼ぶなどやめていただきたいです』
『なにを今更、ついに頭がおかしくなったのか? 自分の爵位すら忘れ――』
『――私はリーシャ・シャーテローラ。現国王陛下の実娘でございます。
ですので、リーシャ子爵令嬢ではなくリーシャ王女と呼んでいただけます?』
リゼルドの表情が、一瞬で変貌した。
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