シジン~闇を狩るフリーター

わたなべ ゆたか

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 シジン――闇狩りのフリーター


 ※注 この作品は、思いつき一〇割、書きたい部分だけ書いたものです。ですので、引きや前振り、細かい設定などはまったく考えていません。
 そのあたり、御容赦願いますm(_ _)m


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 コンビニでのバイトを終えた砂城優也は、夜の帳が降りかけた県道をモトクロス型のバイクを走らせていた。
 A県のI山市の中心部から少し離れたため、街灯の数は極端に減り始めていた。優也はヘッドライトを灯すと、少しだけ速度を落とした。
 赤信号で停まった優也は、隣に停まった乗用車からの好奇心と奇異の視線に気づくと、視線を合わせないように空を見上げた。
 モトクロス使用のヘルメットに、ジーパンにライダー用のブーツ、真夏ではあるがバイクの運転をするために薄手のジャケットを着ていた。だが、そこまでは特に珍しくも無い。

 問題は、バイクだ。

 形状はモトクロス型のバイクではあるが、真っ黄色のカウルにはヘッドライトが目の様に見える配置になっており、ぱっと見、竜の頭部に見えなくもない。
 ハンドガードは白く、外側に向けて三本の爪が出ているような形状だ。
 マフラーは小振りな形状が右側に一つだが、シートの後ろの形状は亀の甲羅が乗っているように見えた。


(やっぱ、恥ずかしい……)


 中古品だが大事にしていたバイクが、こんな有様になったときの記憶を思い出した優也が、盛大な溜息を吐いたとき、肩の上に拳大ほどの、半透明の少女が現れた。
 ストレートの黒髪を真っ直ぐに垂らし、前髪は眉の辺りで切り揃えられていた。巫女装束に身を包み、あどけない顔は一〇歳前後に見える。

 少女は優也の顔を覗き込みながら、窘めるように告げた。


「まだ抵抗あるの? いい加減に慣れなさいよね」


「簡単に言うけどさあ……人の目は気になるでしょう、やっぱり。黄龍ちゃん、普段は元のバイクに戻すって出来ないの?」


「何度も言ってるけど、無理。無理なものは、無理。何度言われても、無理。申し訳ないって気持ちもないし、諦めなさいな」


 黄龍と呼ばれた少女の言葉は、容赦や遠慮がなかった。
 優也ががっくりと項垂れたとき、信号が青に変わった。後続車のクラクションで我に返った優也は、バイクを走らせた。
 交差点を二つほど通り過ぎたところで、ヘルメットに増設された無線機に、通信が入った。聞きなじみのある女性の声が、スピーカーから聞こえてきた。


『砂城さん、C学区にて第一種緊急配備発令しました。地図はスマホに転送しました。今、お姫ちゃんが対処中です』


「な――友羽那ちゃん一人!? なんで、俺が行くまで待たせなかったんですか!」


『みんな出払ってて、仕方なかったんですよぉ。被害者が出たら拙いですし……』


「ああ、もう! わかりました、すぐ向かいます!!」


 優也はバイクをUターンさせると、ホルダーに固定させていたスマホで地図を表示させた。地元なだけに、行き先さえわかれば地図は見なくて済む。
 C学区に向かう途中、黄龍が優也の肩からスマホの上へと移動した。

「先に明堂の影になっておきなさいよ。魑魅魍魎どもに、正体を知られたい?」


「それは困るなぁ……了解」


 優也は人気のなさそうな裏道に入ると、バイクを停めてからスマホをジャケットのポケットに入れた。
 バイクのスイッチを操作すると、黄龍へコマンドを告げた。


「四神システム作動――モード明堂の影」


「りょうかい」


 黄龍の姿がバイクの中に溶け込むと、ハンドガードが動き初めて、まるで籠手のように優也の前腕に装着された。その途端、ハンドガードから黒い液体のようなものが吹き出して、優也の全身を包み込む。
 数秒と経たずして、ハンドガードがある前腕を除いて、優也の全身は真っ黒なアーマーに覆われていた。
 繋ぎ目のないアーマーは、胸部だけ少し厚みがある。頭部はのっぺらぼうのように目鼻口はもとより、頭髪や耳までも黒い革のようなものに覆われていた。
 こんな状態でも視界や聴力に問題はないのか、優也はバイクのアクセルを吹かせた。


   *


 私鉄のI山駅から、西に二キロ程度も離れると、民家の数はめっきりと減る。田んぼや木々に覆われた場所が多くなり、人通りもかなり少なくなる。
 県道からも離れたその場所で、自転車を漕いでいる男子高校生が家路を急いでいた。
 街灯はほとんどなく、LEDライトの灯りを頼りに進む男子高校生は、突然に蝙蝠の大軍に襲われた。


「うわっ!!」


 突然のことに腕で顔を庇うが、それで身体が護れるはずもない。噛みつかれはしなかったものの、全身に蝙蝠の体当たりを喰らって、男子高校生は自転車から転げ落ちた。
 痛みに呻き声をあげながら、薄目を開けた男子高校生は、蝙蝠たちが一カ所に集まるのを見た。蝙蝠の大群は男子高校生の見ている前で、黒い靄のようなものに覆われ始めた。
 靄が消えたとき、そこには上質なスーツに身を包んだ紳士風の男が立っていた。
 年の頃は、二〇代後半――三〇代にはなっていないだろう。欧米人らしい風体で、黒に近い焦げ茶色の髪をオールバックにして、赤い瞳には喜悦の色が浮かんでいた。


「大丈夫――ですか? 出血などしてはいませんか?」


 ゆっくりと近づく男に本能的な恐怖を感じた男子高校生が、這いつくばりながら、遠ざかろうと手足を動かした。
 そんな男子高校生を見て、笑みを浮かべた男が、口元から剣呑なまでに伸びた犬歯を露わにさせた。


「逃げてはいけませんよ。あなたは――わたくしの空腹を満たして貰わねば」


 男――吸血鬼は男子高校生に飛びかかろうとしたが、正面から来るヘッドライトの光に手で目を庇った。
 やってきたのは、一台のオートバイだ。正面に一つだけあるヘッドライトが、吸血鬼と男子高校生を照らし出した。
 運転していた細身の影が、忽然とオートバイから消えた。無人となったオートバイは、慣性によって真っ直ぐ吸血鬼へと突っ込んだ。


「――っ!?」


 吸血鬼は横へ身体を滑らし、オートバイの突進を躱した。
 道から飛び出したオートバイへ視線を向けた吸血鬼に、細い影が突っ込んでいった。振り向いた吸血鬼の横をすれ違った瞬間、鈍く光を反射する白刃が閃いた。
 細身の影が素早く身体を半転させた直後――吸血鬼の両腕が、肘から切断された。鮮血を迸りながら両腕が地面から落ちると、男子高校生が悲鳴をあげた。


「うわあああああああっ!!」


「君は逃げなさいっ!!」


 細身の影から発せられた、まだ若い女の声に、男子高校生は僅かに理性を戻しながら、しかし倒れたままの自転車や荷物を置き去りに、走り去っていった。
 刀を真一文字に構える細身の影に、両腕を斬り落とされた吸血鬼は、しかし余裕の笑みを浮かべた。


「貴様、人ではないようだな――ああ、そうか。御柱の姫、御堂友羽那だな」


 笑みを浮かべたままの吸血鬼が残った腕に力を込めると、切断面から血が噴き出し、そのまま腕の形となった。
 ほんの三秒足らずで腕を再生した吸血鬼が身構えたとき、新たなバイクの排気音が聞こえてきた。
 二つのヘッドライトを見て、細身の影――友羽那は口元に笑みを浮かべた。


「やっときた」


 優也の駆るモトクロスバイクは、甲高いブレーキ音をたてながら、ブレーキ友羽那の背後で停車した。


「友羽那ちゃん、大丈夫?」


「もう、遅いよ?」


「ごめん――それより、あいつが?」


「そうよ。第一種国際手配のA級不死者、吸血鬼グレモンドよ」


「ほお……わたくしのことをよく御存知で。本国からの通報があったようですね。ですが――たった二人で、わたくしを斃せるとは思わないことです」


 嘲るような嗤い声をあげる吸血鬼――グレモンドに、優也はバイクに差し込んだキーを更に押し込んだ。


「そいつはどうかな――黄龍ちゃん、変化、四神」


「――承知。鎧化モードへ移行」


 先ほどとは異なる口調で、黄龍は承諾の意を伝えた。
 その次の瞬間――モトクロス型のバイクは光の渦となって解け、優也の身体を包み込んだ。光の粒子は優也の身体に吸い込まれる様に張り付き、鎧の様な形状へと変化していった。

 脚は黄土色の脛当てと脹ら脛に装甲がついた。腰には青色のTの字の装甲があり、左右の腰には黄土色の亀の甲羅に似た楕円形のパーツとなった。
 腹部には動きの邪魔にならない程度の青色の装甲があり、胸部は両肩に突起のある赤色の鎧を身につけていた。
 両腕はハンドガードの籠手はそのままに、二の腕にも白い装甲がついていた。
 そして頭部には東洋の龍を模した、黄色いヘルメット。左右に二対の角もある。

 今や五色の鎧に身を包んだ優也に、グレモンドは始めて身構えた。


「貴様――何者だ」


「シジン」






 優也――いや、シジンは短く答えると、グレモンドへと駆けた。
 幾重にも繰り出す拳を手で弾いたグレモンドは、徐々に警戒を解いていった。


「ふ――この程度ですか。たわいない」


「そうかな? 水気――黒蛇!」


 シジンの声に呼応して、左右の腰にある楕円形のパーツから、黒い蛇が現れた。楕円軽から胴体を伸ばすと、それぞれにグレモンドの両腕に絡みついた。


「なんだと――だが、この程度っ!!」


 グレモンドは力任せに黒蛇を引きちぎると、シジンから距離を離した。


「ああ、黒蛇さんが――」


「慌てるな。あれは水気によって造られた虚像だと、何度も申しておるだろう」


 いつの間にか、シジンの右肩に黄龍が姿を見せていた。しかし、あの幼げな表情は鳴りを潜め、今は冷徹な顔つきになっていた。
 黄龍はグレモンドを見据えたまま、シジンに告げた。


「お主の力なら、あの程度を斃すのは容易いはず。妾の助言無しに勝ってみせよ」


「――気楽に言うけど」


 シジンはグレモンドに詰め寄るが、足技を絡めた体術に、なかなか攻め手を打てなかった。


「弱い――やはり、弱いですねぇ」


「舐めるなよ――今の俺は、強いぜ? 火気――朱雀炎!」


 右の手首にある陰陽球から、火炎放射を思わせる炎が放たれた。
 グレモンドは左腕を焼かれながらも、背中から生やした蝙蝠の翼で宙に飛んで、炎から逃れた。


「小癪な――しかし、ここなら――なに!?」


 背中の突起から、炎の翼を拭き上げて追ってくるシジンの姿に、グレモンドは驚きの声をあげた。


「逃がすか! 水気――黒蛇!」


 再び現れた黒蛇が、グレモンドの脚に絡みついた。シジンは続けて、「木気――青龍尾」と、背中から長く青い龍の尾を伸ばし、グレモンドを地面に叩き落とした。
 地面に落下したグレモンドを追って急降下したシジンは、拳を握り閉めた。

「金気――白虎牙!!」


 今は籠手となっていた部分にあるパーツが伸び、三つの巨大な爪となった。
 シジンは両手の爪を振りかぶって、起き上がる途中だったグレモンドの胴に、両腕の爪を突き立てた。
 しかし計六本の爪を受けたグレモンドは、平然としていた。


「ははは――最後の詰めが甘かったですね。先ほどやり合ったときに、わかってはいたのですよ。こんな金属の爪では、わたくしは斃せない」


「舐めるなって言ったぜ? 金気は、金属も司る。鉄や銅――そして」


 シジンが喋っている間に、グレモンドの顔に苦悶の色が見えていた。爪が食い込んだ胴体からは煙があがりはじめ、身体が痙攣し始めていた。


「これは――」


「教えてやるよ。俺の爪は今、おまえの嫌いな、銀だ」


 シジンが告げた直後、グレモンドは胴体から灰へと変わっていき、最後に残った人骨までもが、遅れて霧散した。


 グレモンドが完全に消滅するのを見届けたシジンは、変身を解いた。
 光となって解けた鎧はモトクロスバイクとなり、シジンは優也へと戻った。


「あー……疲れた」


「優也くん。お疲れ様。それじゃあ、支部に帰ろっか」


 友羽那から労いの言葉を貰った優也は、微笑みながらも首を左右に振った。


「いや……ごめん、今日は家に帰るよ」


「あ、駄目なの。あたしのバイクが、田んぼに落ちちゃって。回収は明日かなーって感じだし」


「あー……なるほど」


 顔を上げて田んぼを見た優也は、立ち上がりながら盛大な溜息をついた。
 そんな優也に、友羽那は少し不機嫌に腕を絡めた。


「なによ。あたしと帰るのイヤ? 明日はバイト休みでしょ? なら、いいじゃない」


「バイトは休みだけど……そうじゃなくてさ。支部長さん、怖くない? なんか俺、嫌われてる気がするんだけど」


「そりゃあねぇ。神社省特務室の最重要機密である、第一種指定機密祭具甲種、四神駆鎧の存在を知っただけじゃなく、ほぼ私物化しちゃってるんだもんね。嫌われて当然じゃない?」


 すっかり元の口調に戻った黄龍に、優也は喚いた。


「だから、あれは事故だって言ってるじゃん!」


「――優也くん、どうしたの? あ、もしかして黄龍って子がいるとか」


 優也以外には見えていない黄龍とのやりとりに、友羽那は目をぱちくりとさせた。
 優也は溜息交じりに「大正解」と答えると、バイクに跨がった。


「それじゃあ、行こうか。そういえば、ヘルメットはどうしたの?」


「あ、ちょっと待ってね」


 落ちていたヘルメットを拾うと、友羽那は優也の後ろに乗った。身体を抱きしめるように固定した友羽那に、優也は顔を真っ赤にさせながら、微笑んだ。


「それじゃあ、行こうか」


 排気音をたてながら、優也と友羽那を乗せたバイクは、I山市の中央部へと走り去っていった。



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 マーベル作品を見ると、ヒーロー物を書きたくなる病気持ちです。わたなべです。

 せっかく一日だけとれた有休を使って、気分転換と称して一日、これを書いてました。
 気が済んだので、明日からは魔剣士を続けます。

 今作が初めての方……そちらのほうも、よろしければ読んでやって下さい。


 それでは、また宜しくお願いします!!
   
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