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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
技術長の高慢と欺瞞の渦 その2
しおりを挟む技術長の高慢と欺瞞の渦 その2
翌日、僕とレオナは指定された時間に護衛兵の詰め所を訪れた。
警備の護衛兵に案内されて執務室に入ると、ジョージ大尉は安堵の表情を隠そうともせずに、僕たちに笑顔を見せた。
「朝からすまない。実は、魔神を封印していた《箱》の発掘が、ようやく終わってね。軍の本体から技術部隊が来たんだが……君たちと話がしたいと言ってきた」
ここでレオナがなにかを言いかけたが、それ――もしかしたら内容も――を予測していたのか、ジョージ大尉は素早く手で発言を制した。
「言いたいことは、わかる。だが、ここは堪えてくれたまえ。あとできれば……冷静な対応を頼む」
「……それは大尉のために、ですか?」
不機嫌なレオナの問いに、ジョージ大尉は苦笑した。
「わたしのために我慢してくれるというなら、これ以上なく嬉しいがな。どちらかと言えば、君たちの面倒を減らすためだ。正直、魔神との戦いを見た者としては、君たちを敵に回したくない。
だが、あれを見ていない軍の関係者は、お構いなしの要求をしてくるだろう」
「そういう相手、ということなんですか?」
イヤな予感を覚えたみたいで、少し唇を歪めたレオナの問いに、ジョージ大尉は笑いを噛み殺しながら答えた。
「それ以上に技術部隊の中で、わたしがもっとも嫌いな技術主任が来ている。向こうもわたしのことを嫌っているから、援護には期待しないでくれ」
笑って済ませる内容じゃ無い気がする……僕は話を聞きながら、気が重くなっていた。軍人の間のパワーゲームに巻き込まれないといいけど。
そんな気持ちを上手く隠せただろうか……僕はふと思いついたことを訊いてみた。
「あの……どのくらい嫌いあってるんです?」
「そうだね……二人で戦場に出たら、お互いに相手を背後から誤射しようと努力する程度だな」
どこまで冗談かわからないことを言うジョージ大尉に、僕は困惑していた。だけど――。
「ガチだ、この人……」
半目になったレオナの呟きを聞いて、僕の身体に緊張が走った。
その技術主任が、どんな人かはわからない。だけどイヤな予感だけは、僕にも過ぎっていたんだ。
そのあと、僕とレオナはジョージ大尉の案内で、元は第三坑道だった窪地へと来た。新たに設置された金属製の階段が、窪地の底まで続いていた。
軍の兵士に混じって、白衣を着た人たちの往来が目立っていた。発掘技師だけじゃなくて、街の護衛兵もいないみたいだ。
ジョージ大尉が小さく手を挙げると、階段の前にいた兵士たちが敬礼を送って来た。彼らのあいだを通って階段を降りた僕たちは、窪みの底にある坑道の中に入った。
魔神を封印していた《箱》の発掘は、今まで通りに坑道を掘りながら行われたみたいだ。
ジョージ大尉の説明では、封印できるときが来るまで露出させないため、ということだった。これは、街が襲撃されてから決まったみたいだ。
燃焼炉による照明に照らされた坑道を進んだ先は、かなり大きな空間になっていた。あの《箱》を発掘したのなら、納得だ。
《箱》の前で周囲に指示を送っていた壮年の男性が、僕らに気づいて振り返った。その目がジョージ大尉を見て、不機嫌そうに細められた。
「ふん。誰かと思えば……左遷された中佐殿か」
「失礼。今は大尉だ……アラド技術長殿」
「降格とは、貴様にはお似合いだな、ジョージた、い、い、殿。それで、そっちが例の魔導器か。良い実験材料になりそうだ」
興味ありげな視線を向けてきたアラド技術長に、レオナだけじゃなく僕も嫌悪感を抱いた。レオナに至っては、両手を固く握り締めている。
「失礼ながら、あたしは実験なんかに協力しません」
「ほお、人間に反抗するとは、調整が足りんようだな。所詮、こんな街の技師では無理な話か。貴様、この魔導器を我が技術部隊に明け渡せこれは命れ――」
「断ります。レオナは道具じゃない」
アラド技術長の言葉を遮りながら、僕は申し出を断った。
「そんなことを言うために呼んだのなら、僕らは帰ります」
「貴様――」
「やめろ、アラド技術長。彼らは、たった二人で魔神を斃した、ある意味では英雄だ。彼らへの強権は、わたしが許さない」
「この……ジョージ、大尉の分際で!」
「階級は下かもしれんが、この街での責任者は、わたしだ。指示には従って頂こう」
「言葉だけは、相も変わらず達者なことだ。我々は、人類の存亡をかけた戦いをしているのだぞ!? 個人の意見や感情など、考えている場合ではない」
「……それでは、冷静な意見を言わせて貰いますけれど。あなたで、あたしの身体を理解できるおつもりですか? 徒労に終わるだけでしょうから、協力しないと申したまでです。技術本部と言いますが、なにかを造り出したりしたんですか?」
「馬鹿にするな! これを見ろ」
アラド技術長は、腰のホルスターから拳銃型の魔導器を抜くと、近くにある岩に銃口を向けた。
撃ち出された魔力弾は、岩の表面に拳大の窪みを作った。
「これは、わたしが設計、技術本部で試作をしたものだ。通常の拳銃型の魔導器に比べて、約二倍の威力がある。技術本部では、《神々の拳》と呼ばれているものだ」
やけに自信満々のアラド技術長が、誇らしげに言ってきた。
レオナは数秒ほど無言だったが、僕の肩を突きながら、「見せてあげれば?」と言ってきた。
……あまり、気は進まないけどなぁ。
僕は腰のホルスターから改造した拳銃型の魔導器を抜くと、レオナに差し出した。
「いいけど、レオナが撃ってくれる?」
「まあ、いいけど……」
レオナは拳銃型の魔導器を受け取ると、アラド技術長と同じ岩へと狙いを定めた。
引き金を引き絞ると、アラド技術長の拳銃より二回りは大きな魔力弾が撃ち出され、岩の表面を大きく砕いた。
「な――」
唖然とするアラド技術長に、レオナは少し得意げな顔をした。
「アウィンよりも技術で劣るようでは、先ほどの言葉も疑わしいですね。もっとも、アウィンよりも優秀な技術者なんて、そうはいませんけど。なんならこの街で、数十年ほど修行なされては如何ですか?
あと、こちらも暇ではないので、本題をお願いしたんですが。あの《箱》についてでようか?」
「う……っく! そ、そうだ!! 材質など、分かる範囲で協力しろ!!」
そう言い放つと、アラド技術長はあとのことを部下に任せて、どこかへ行ってしまった。
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