49 / 57
消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
邪な神託を求めて~そして封印へ その1
しおりを挟む邪な神託を求めて~そして封印へ その1
アラド技術長はアーハムにある留置所の個室で、ブツブツとなにかを呟いていた。
唯一の出入り口であるドアから一番遠い、左側の隅で膝を抱えて座っていた。ほとんど寝ていないのか、目の下には濃い隈ができ、虚ろな視線は虚空をジッと見つめていた。
「……我が神、我がすがるのは汝のみ……救い給え、我を救い給え、神よ。そのためなら、我はすべてを捧げよう」
すぐ右側の壁の天井近くには、外の光を取り入れるための、鉄格子付きの小窓がある。
差し込む光を畏れるように、アラド技術長は身体を縮ませた。光から避けた目が、どこから入り込んだのか、小さな蜘蛛を捕らえた。
黒っぽい身体の蜘蛛には、白い斑点がある。その蜘蛛に手を差し伸べたアラド技術長は、歓喜の顔を浮かべた。
「ああ……我が神」
*
僕はジョージ大尉やダグラスさんに呼ばれて、旧第三坑道に来ていた。
魔神を封印していた《箱》が見つかったことは聞いていたけど、発掘された現場を見るのは初めてだった。
燃焼炉による照明で照らされた《箱》を見上げたレオナは、気の重そうな溜息を吐いた。
「……あれ、使い物になるのかな?」
見つかった《箱》は土砂で汚れていたけど、それは大したことじゃない。発掘技師にとっては、こんな汚れは日常茶飯事だ。除去をする技術は、ほとんど誰でも持っている。
問題なのは、両開きになっていた扉がひしゃげていたことだ。右側の扉に至っては、蝶番から外れそうになっていた。
魔神アイホーントが扉をこじ開けた影響か、それとも瓦礫に埋まったときになったのか――どちらにせよ、このままでは封印に使えない。
「あの蝶番とか、どうやって直せばいいんだろう……」
「そこは、これから検討だな。とりあえず、安全を確保しながら土砂の除去と足場の組み上げをせにゃならん」
そう説明するダグラスさんの声も、やや力がない。これだけ大きな魔導器を直したことがある技師なんて、この街では誰も居ないに違いない。
応援してくれ、と言われても……僕には手に余る案件だ。
だけどダグラスさんは、期待を込めた目で僕らを見た。
「あの大きな鎧なら、なんとかできないか?」
「簡単に言わないで下さい。あれ、指があるのは左腕だけなんですよ? 右腕には指どころか手がないんですから」
レオナの返答に、ダグラスさんは慌てて手を振った。
「いや、細かい作業までお願いしようとは思ってねぇ。扉を支えたり、ちょいと位置を正してくれるだけでもいいんだが……」
「それにしたって、大きさが違いすぎます。あたしだけじゃ、きっと無理ですよ、あれ」
「そっか……無理か」
ダグラスさんは、腕を組むと考え込んでしまった。
あの扉をなんとかしないと、魔神の再封印は無理――それは、僕でも理解できた。技師なりに、普段通りのやり方でいくなら力学を活用するんだけど。
ダグラスさんがここまで困ってるということは、今回に至っては、手持ちの機材では難しいのかもしれない。
僕は少し考えてから、ダグラスさんに訊いてみた。
「あの、技術部隊……の力を借りても無理なんですか?」
「ああ……奴らはなぁ。責任者が不在になって、指揮系統が無茶無茶だ。あのなんとか技術長っていうヤツに、おんぶに抱っこし過ぎたな、ありゃ」
「そうですか……なら、あの技術長に訊けば」
「個人的には、反対だな」
ジョージ大尉は《箱》を見上げてから、首を振った。
あの《箱》の惨状について、責任を感じているみたいだ。ジョージ大尉の作戦によって、瓦礫に埋もれたらしいから、それは当然なんだろうけど。
当人もそれを理解しているみたいで、「この件について、わたしには口を挟む権利はほとんどなくてね」と自嘲気味に肩を竦めたりしていた。
ダグラスさんは、そのあたりの文句を言いたそうにしながらも、グッと堪えた顔をした。
「機材だけでも借りる段取りをして頂けると、助かるんですがね。そうすれば、このお嬢ちゃんの手を借りながら、なんとかできるかもしれねぇわけですし。ああなったものを、なんとかしようって話ですから。少しは力になって頂けませんか?」
ダグラスさんの意見を聞いていたジョージ大尉は、口の中にある苦虫を躊躇いながら噛みつぶした――そんな顔で頷いた。
「……わかった。一度、話をしてみよう」
これで一歩前進したかな……そんな期待を抱きつつ、僕とレオナは《箱》の発掘作業を手伝うことにした。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる