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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
邪な神託を求めて~そして封印へ その3
しおりを挟む邪な神託を求めて~そして封印へ その3
次の日、ダグラスさんに連れられて、僕とレオナは再び旧第三坑道に来ていた。
坑道内は昨日より、発掘技師や警護兵の数が多い。大きな機材を運んでいる姿も見られるし、なにかやってるみたいだ。
レオナもそのことに気づいたみたいで、興味ありげに周囲を見回していた。
「……なんか、今日は人が多いですね」
「ああ。技術部隊の機材が入ってきてな。今、組み立て中だ。おまえさんたちには、それを手伝って欲しくてな」
「あたし、そーゆーのってわからないですよ?」
きょとん、としたレオナが答えると、ダグラスさんは声を出して笑った。
「そっちは、アウィンに任せるさ。力仕事のときには、お嬢ちゃんの手を借りるかもしれねぇがな」
「ああ、そーゆーことですか」
「ところで、アウィン。おまえさん――俺の助っ人なんかじゃなく、こっちの担当になる気はねぇのか?」
ダグラスさんの質問に、僕は少し視線を逸らした。
そういう話が来るかも――とは思ってたけど。実際にそのときが来ると、用意してあった言葉が全部吹き飛んでしまった。
準備していた内容を、僕は必死で思い出した。
「あの……今ちょっと、あまり目立つことは避けたくて。できるだけ、いつも通りのことをしていたいんですよ」
「出世もしたし、軍が絡んできたり……か? ほかにもいくつか耳にはしてるが……あまり気にしなくていいと思うがな」
「すいません……」
「まあ、いいさ。どっちにしろ、必要なときは俺から声をかけさせて貰うからな」
「はい」
僕は返事をしながら、ホッと胸を撫で下ろしてた。もう少し、色々と言われると思っていたけど、あっさりと終わって良かった。
ダグラスさんの口ぶりだと、噂話は聞いているみたいだ。
複雑な心境だったけど、それを『気にするな』と言ってくれたのは――他人事な意見に思えたけど――、少しありがたかった。
それから数分で、僕たちは《箱》のある空洞に到着した。
《箱》の周囲には足場が組まれていて、発掘技師たちが土砂の除去作業をしていた。足場の外側では、象の鼻か首の長い鳥を思わせる、長い骨組みが設置されていた。
「あの長いヤツって、なんですか?」
「あれか? クレーンってヤツらしいぞ。あれで、《箱》の扉を引っ張るんだと。技術部隊が中心となって、組み上げてる最中だ。さっきも話をしたが、おまえさんにはクレーンの組み立てを手伝ってもらう」
ダグラスさんに背中を押されて、僕はクレーンというヤツのところへ向かった。
途中で斜めに折れ曲がった骨組みは、高さだけで七リン(約六メートル四〇センチ)もある。骨組みを縦断するように、ワイヤーが三本ほど走っていた。
一本は先端から垂れ下がっているけど、もう二本は骨組みの途中までしかない。
「ワイヤーなんて、なんに使うんだろう?」
「二本は骨組みを動かすためのヤツだってさ。残りの一本で物を引っ張り上げたりするらしい」
近くにいた若い発掘技師が、溜息交じりに教えてくれた。
「えっと、アウィン・コーナルだっけ。噂はかねがね。で、早速だけど。こっちの手伝いいいかな?」
「えっと……はい。クレーンってヤツの組み立てですよね」
「いや、違う違う。《箱》のほう」
あれ? 聞いていた話と違うな――そんなことを思いながら、僕は発掘技師のあとをついていった。
案内されたのは、《箱》の中だ。
燃焼炉の照明で照らされた内部は、まだ土砂がかなり残っていた。それ以外は、がらんとしていて、なにもない。
その一角ではハケを持った二人の発掘技師が、こびり付いた砂を丁寧に取り除いていた。
「ここに、なにがあるんです?」
「ちょっと見てくれよ」
発掘技師が内部の壁に手を触れると、その周囲が独りでに開いた。
円状に開いた箇所には、びっしりと魔導文字が刻まれていた。薄暗くてすべては見えないけど、封印とかに関わる構文みたいだ。
発掘技師は、魔導文字を指で触れながら、苦笑いを浮かべた。
「俺は、魔導文字はわからなくてさ。ダグラスさんが呼ぶくらいの腕っこきなんだろ? 構文の意味もそうだけど、伝導板じゃないのに魔導文字が刻まれてるって、どういうことかわかる?」
「ああ……魔導器なら、構文は伝導板に刻まれてますもん――」
最後に「ね」と言う直前、僕は気づいた。
魔力を伝える伝導板ではなく、内部の壁に魔導文字の構文が刻まれているってことは、この《箱》自体が伝導板と同じ材質かもしれない。
この仮設が正しければ、オスミリジウムを探す手間は省ける……と思う。
僕は少し興奮気味に発掘技師を振り返ったとき、レオナが僕の肩を揺らした。
「どうしたの?」
「アレ見て」
レオナの示す方向を見た僕は、ギョッとした。
両手を拘束され、護衛兵に肩を掴まれてはいるけど、アラド技術長が《箱》の内部に入ってくるところだった。
興味深そうに、アラド技術長は周囲を見回していた。
「あの、壁を閉じるにはどうすればいですか?」
「ああ、ここを触ると――」
発掘技師が魔導文字の一つに触れると、壁は元通りになった。
アラド技術長が僕らに気づいたのは、その直後だった。警護兵に拘束されたまま近づいて来たアラド技術長は、僕とレオナに睨むような目を向けてきた。
「貴様らか――こんなところで、なにをしている」
「作業の手伝いです」
「ふん――土遊びとはな。ま、貴様にはそれがお似合いだ」
喧嘩を売っているかのような、煽り文句だ。
嘲るような笑みを残してアラド技術長が去って行くと、横にいた発掘技師が腰から抜いたハンマーを僕に差し出した。
「殴りに行くなら、貸すけど」
「あ、いえ……大丈夫です」
「アウィンが行かないなら、あたしが行こうかな」
怒りに唇を尖らせたレオナが、アラド技術長を睨んでいた。レオナが殴りに行ったら、一発で死んじゃいそうだ。
それも、文字通り脳天を木っ端微塵にしそうな勢いで。
「レオナ……抑えてね」
唸り声をあげるレオナを宥めながら、僕はアラド技術長が留置所から出た理由を考えていた。
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