消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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おまけ

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 おまけ ~ 新しい発掘現場

 採掘都市であるアーハムは、これまでにない活気に満ちていた。
 アーハムの外れに、新たな遺跡が発見されたんだ。そこには過去に埋もれたらしい建築物が残っていて、見たこともない装備や、遺物が見つかった。
 担当を割り振られた発掘技師たちは、こぞって遺跡となった建物内を捜索していた。
 かく言う俺――アウィン・コーナルも、ここ数日は遺跡担当だ。
 しかし……地底というのは、魔物にとって暮らしやすい環境なんだろうか。この遺跡群に脚を踏み入れてから、魔物の襲撃が増えていた。


「撃てぇっ!!」


 護衛兵たちが一斉に、銃撃を開始した。六人の護衛兵が構える銃型の魔道器から赤や青の光条が、何本も魔物の身体に命中した。
 しかし、その魔物――トロールは平然と前へと進んでいた。常人の二倍はあろう身長に、丸太のような手足、ブクブクと太った胴体――腕に比べて短い腕。並みの人間ならその太い腕だけで殺せる威力があるが、特筆すべきはその治癒力だ。
 少々の傷なら、瞬く間に回復してしまう。だけど、俺たちの前にいるトロールの脅威は、それだけじゃなかった。
 金属製と思しき鎧で、トロールは全身を覆っていたんだ。それに加えて、手には巨大なハンマーを持っていた。平らな両口を持つ円筒形の頭部は所々、赤く光るラインが刻まれてる。
 間違いなく、魔導器の武器だ。


「近づかせるな!」


 護衛兵の隊長は皆に指示を出すが、魔導器による銃撃は、鎧によって完全に防がれていた。
 進行が止まらないまま、トロールは防衛線に迫ってきた。このままいけば、白兵戦になってしまう。
 あの防御力と治癒力に加え、ハンマーによる打撃。まともにぶつかれば、護衛兵の死傷者は二〇は下らないだろう。
 俺は覚悟を決めると、護衛兵たちの前へと出た。


「まともにぶつからないで! 鎧の隙間を銃撃して下さい!」


 俺はトロールの前に出ると、籠手――リーンアームドをした左腕を顔の前へと出した。
 トロールは銃撃を受けながら、俺へとハンマーを振り下ろした。勢いを増すハンマーの頭部が俺へと迫る。
 だけど、衝撃は俺を襲っておこなかった。
 リーンアームドから発せられた半球状の障壁が、ハンマーの一撃を阻んだんだ。
 破壊力と障壁の防御力がせめぎ合う中、護衛兵たちの銃撃が再開した。だけど、なかなか鎧の隙間に命中しない。
 俺は障壁の中から、護衛兵たちに叫んだ。


「銃撃は鎧の隙間に!」


「無茶を言うな! そんな簡単に命中できるか!」


 近くの護衛兵が叫び返してきた。鎧の隙間は、指先ほどの隙間しかない。しかも動きによっては、閉じてしまう。
 このままでは斃せない――そう思っていたとき、後方から護衛兵の魔導器よりも太い光条がトロールの鎧を貫いた。
 赤と黒を基調としたアーマーを身につけた、銀髪の少女、レオナシア――レオナの仕業だ。


「アウィン!」


「レオナ!」


 レオナの右腕のユニットから、白く光る熱線が放たれていた。
 お互いに名を呼び合う中、右肩を貫かれたトロールは、ハンマーを落としながら叫び声をあげた。


「今よ!」


 レオナを含めて再開された銃撃に、トロールの鎧が徐々に剥がされていく。光線や熱線に身体を貫かれながら、トロールはまだ戦う意志を失っていなかった。
 その回復力で傷を癒やしながら、トロールは拳を打ち付けてきた。


「くっ!」


「この――っ!」


 トロールの拳を障壁で受け止める俺の真上を、レオナが跳び越えていった。
 右腕のユニットから光の刃を発声させたレオナが、トロールに斬りかかった。


「剣圧最大――雷撃波」


 光の刀身が、雷のように迸った。
 その一撃で、トロールの胴体が両断された。


「アウィン、大丈夫?」


「うん。ありがとう」


 発掘中に別行動をしていたんだけど、戦闘に気付いて駆けつけてくれたみたいだ。
 防御用の障壁――結界を解いた俺は、レオナに駆け寄った。


「おかげで助かったよ。なにか御礼しなきゃね」


「御礼? へぇ……なにをしてくれるの?」


「え? まだ考えてないけど……どうして?」


 普段は言わないような質問に、俺は戸惑うしかない。だけど、レオナに対してだったら、大抵のことはやってあげたい――という気持ちもある。


「俺にできることなら、なんでもするけど」


「……なんでも? なんでもって言った?」


 レオナが、予想以上に食いついてきた。その悪戯っ子のような眼差し――ではなく、まるで獲物を狙うかのような、飢えた狼を思わせる眼差しに、俺は怯んでしまった。


「……えっと、なにをさせたいの、かな?」


「今、考え中。今日の夜までに、考えて行くから。覚悟してね」


 ……覚悟。

 なんだろう。ある種の恐怖を感じるんですけど、この覚悟。
 色々と不安になってきた俺は、レオナの様子を伺うように、恐る恐る声をかけた。


「なにをさせるつもりなの? ねえ、少しは考えてるんでしょ?」


「まだ考え中だから、ひーみーつー」


「ちょ――ねえ。少しでもいいから、教えてよ!」


 その後――発掘で、かなり珍しいものを幾つも掘り出したんだけど……レオナからの覚悟が気になって、それどころではなくなってしまった。
 なんていうか。

 ……帰るのが、ちょっと怖い。

 自分の家に戻るのが怖いなんて、生まれて初めてだ。言い知れぬ恐怖を覚えながら、俺は夜までのあいだ、戦々恐々とするしかなかった。


                                    完

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

……「屑スキル~」のプロットを作成中、ふと思ったんです。

「最近、銃撃戦を書いてない」と。

というわけで、気分転換を兼ねて久しぶりに書いてみたんですが……あまり銃撃戦になってない(汗

ちなみに最後の「なんでもする」ですが、中の人の頭の中では、レオナの魔導器部分の身体のフルメンテをやって貰ったあと、二人でまったりとお茶を飲んで過ごしましたとさ。

R指定ではないので、こんなものでしょうと。

「屑スキル~」のほうは、現在、章分けに入りました。もうしばらく、お待ち下さい……。


少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

また、宜しくお願いします!
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