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3章
26・頼みたいことがありました!
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「安心してください。私は人に魔導をかけません」
「あ、いえ。これは僕の独り言です。紛らわしくて失礼しました。奥さまがあのカミラさえ懐かせてしまったので、驚いているだけです」
バートは時折笑い声の起こる部屋の先を見つめて、穏やかに微笑んでいる。
(今日のバートはポリーの様にはしゃいでいるわけではありませんが、とても嬉しそうに見えます……あ、そうでした)
エレファナは先ほどから聞きそびれていたが、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「今日はポリーだけでなく、たくさん手伝ってくださったカミラさんも疲れていると思います。このあとポリーと一緒に、お食事を取ってもらえるのでしょうか? お昼寝のスペースは……」
「お昼寝はエレファナさまが必要でしたら準備致しますが、母さんやカミラの心配はいりませんよ。それにカミラには僕の方からも食堂の利用を申し出たのですが、時間が惜しいから要らないと断られまして……このように持ち運びの場合、食事は普段から帰って取るようでしたね」
「えっ! カミラさんは、こんなにたくさんの品を持ち帰るまで、お昼ごはんを食べないのですか? お腹が空かない体質なのでしょうか?」
「空くはずですが……滞在する時間を短縮するためにそうしているようですね。ただあいつは人と接することに苦手意識を持っているので、それも関係あると思います」
「そうなのですか? ポリーと仲良くしていました。私にもたくさん親切にしてくれました」
「はい、エレファナさまのおかげで、あのカミラが母さんと打ち解けているようで驚きました。ただ他の方に対しては気兼ねするかもしれませんし、人と食事を取らないのが普段からの習慣になっているようですから。今回も深い意味はなく、いつも通りにしているだけだと思いますよ」
「そうですか……」
(カミラさんは空腹のまま、あの荷物を運ぶのですよね。馬車のお馬さんもたくさんの荷物を載せて来るだけで重かったはずですが、帰り道だって大変だと思います……あっ)
「バート、実は頼みたいことがありました!」
「? 一体なんでしょうか」
エレファナの話を聞いて、バートはなにかに気づいたような顔をしたが、そのときは聞くこともせずいそいそと館を出て行く。
エレファナはその間、まだ食べていない最後の味と向き合った。
(こちらは……サンドイッチのデザートでしょうか!?)
エレファナが手に持ったその真っ白なパンには、ふわふわの純白クリームが挟まれていた。
その中にはカットされた苺やキウイ、ミカンが惜しげもなくしきつめられ、鮮やかな断面を覗かせている。
(大ぶりの果物が色々入っていて豪華ですし、それぞれがつやつやしておいしそうに見えます。食べられる宝石のようです!)
その味も見た目の期待を裏切ることはない。
クリームの甘いなめらかさと、包まれている果肉の自然な酸味が口の中で合わさり、食べるたびにそれぞれ贅沢な味を堪能させてくれる。
そしてどれもが、バートの淹れてくれた口当たりの良いミルクティーとよく合った。
(おいしいものを食べて、お腹がいっぱいです……)
エレファナは幸せな心地で窓の外を眺めていると、頼まれたものを用意したバートが足早に城から戻ってくる姿が見える。
*
「あ、いえ。これは僕の独り言です。紛らわしくて失礼しました。奥さまがあのカミラさえ懐かせてしまったので、驚いているだけです」
バートは時折笑い声の起こる部屋の先を見つめて、穏やかに微笑んでいる。
(今日のバートはポリーの様にはしゃいでいるわけではありませんが、とても嬉しそうに見えます……あ、そうでした)
エレファナは先ほどから聞きそびれていたが、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「今日はポリーだけでなく、たくさん手伝ってくださったカミラさんも疲れていると思います。このあとポリーと一緒に、お食事を取ってもらえるのでしょうか? お昼寝のスペースは……」
「お昼寝はエレファナさまが必要でしたら準備致しますが、母さんやカミラの心配はいりませんよ。それにカミラには僕の方からも食堂の利用を申し出たのですが、時間が惜しいから要らないと断られまして……このように持ち運びの場合、食事は普段から帰って取るようでしたね」
「えっ! カミラさんは、こんなにたくさんの品を持ち帰るまで、お昼ごはんを食べないのですか? お腹が空かない体質なのでしょうか?」
「空くはずですが……滞在する時間を短縮するためにそうしているようですね。ただあいつは人と接することに苦手意識を持っているので、それも関係あると思います」
「そうなのですか? ポリーと仲良くしていました。私にもたくさん親切にしてくれました」
「はい、エレファナさまのおかげで、あのカミラが母さんと打ち解けているようで驚きました。ただ他の方に対しては気兼ねするかもしれませんし、人と食事を取らないのが普段からの習慣になっているようですから。今回も深い意味はなく、いつも通りにしているだけだと思いますよ」
「そうですか……」
(カミラさんは空腹のまま、あの荷物を運ぶのですよね。馬車のお馬さんもたくさんの荷物を載せて来るだけで重かったはずですが、帰り道だって大変だと思います……あっ)
「バート、実は頼みたいことがありました!」
「? 一体なんでしょうか」
エレファナの話を聞いて、バートはなにかに気づいたような顔をしたが、そのときは聞くこともせずいそいそと館を出て行く。
エレファナはその間、まだ食べていない最後の味と向き合った。
(こちらは……サンドイッチのデザートでしょうか!?)
エレファナが手に持ったその真っ白なパンには、ふわふわの純白クリームが挟まれていた。
その中にはカットされた苺やキウイ、ミカンが惜しげもなくしきつめられ、鮮やかな断面を覗かせている。
(大ぶりの果物が色々入っていて豪華ですし、それぞれがつやつやしておいしそうに見えます。食べられる宝石のようです!)
その味も見た目の期待を裏切ることはない。
クリームの甘いなめらかさと、包まれている果肉の自然な酸味が口の中で合わさり、食べるたびにそれぞれ贅沢な味を堪能させてくれる。
そしてどれもが、バートの淹れてくれた口当たりの良いミルクティーとよく合った。
(おいしいものを食べて、お腹がいっぱいです……)
エレファナは幸せな心地で窓の外を眺めていると、頼まれたものを用意したバートが足早に城から戻ってくる姿が見える。
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