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第三章

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魔王城から外に出ると、あたりは明るく、夜明けを迎えようとしていた。
朝焼けに照らされたフジタカ山が湖越しの優美な姿を見せている。

「こんなにキレイな景色の下に、暴発しそうな魔力エネルギーが溜まってるなんて、考えられないな。」

レイとゴローナは手を繋ぎ、獣人の里へと『転移』し、そこからは、空を飛んで西へと向かった。

ゴローナの案内で太陽が真上に来る頃には、王都アスカに到着した。
城壁門は広々と開放されていて大勢が往来していた。
門のそばで着地した二人を見て驚く人も居たが気にせず門を通過した。

「いきなり王宮に行っても門前払いだろうから、冒険者ギルドに行こう」

冒険者ギルドは、都の東西南北にそれぞれあり、レイたち東ギルドに行った。

胸元が大きく開いた美人の受付嬢の所に行き話をした。

「私たちはコーフーの町で冒険者をしていた者です。」

カウンターに二人のギルドカードをだす。

「そして、コーフーの町の消滅した原因を知ってます。
ギルドマスターに会わせて下さい。」

「SランクとAランク!
分かりました。どうぞ」

階段を登って、二階の奥の部屋に通された。

「こちらでお待ち下さい。」

少しして、ガタイのいい中年の男性が、さっきの受付嬢を伴って部屋に入って来た。

「ギルドマスターのゲイリーだ。コーフーで短期間でSランクになったレイさんだね。噂はこちらまで届いているよ。
で、コーフーの町消滅の件だね」

「はい、原因は魔族の魔道砲の暴発だと分かりました。
私は魔王と会談をしました。」

「ま 魔王と会談だと!
そんな話は信じられんな。
君は、勇者か?」

「勇者では有りません。
大賢者とは言われておりますが。
魔人国のフジタカ八湖をご存知でしょうか?
魔王の側近です。」

「その名は聞いたことが有る。」

「アスミ、シビレン、センズイの三湖魔人を交渉役に、魔王は我が国との和平を結びたいと望んでいます。
私は、その仲介役を頼まれてます。
ギルドマスターのお力をお借りして、それを実現したいと考えてます。」

「待て待て待て、俺にそんな力は無いぞ!
国政は王宮で決めてるんだぞ」

「私は王宮に知り合いは居ません。武力行使し無しで、私が王様や諸侯と話す場を作れませんか?」

「しかしなぁ、君たちをここで抹殺してしまえば、何も無かったことにできるよな」


「そうですね。でも、この国が消えてもいいんですかね。」


レイのその言葉と同時にゲイリーは苦しみ始めた。

「ゴローナ、もういい、解放してあげろ」

「ゼーハーゼーハーゼーハー 俺に何をした!」

ゴローナが口を開いた

「私でさえ、簡単にあなたの息を止めることができるのよ。
魔王が仲良くしようと言ってるのに拒む理由があるの。
そんなに滅ぼされたいの?」

ゲイリーさんは咳き込みながら
「試して悪かった。
分かった、急ぐんだろう
今から一緒に王宮に行こう」


冒険者ギルドのギルドマスターと言えば、王様にも顔がきくと思ったのは正解だった。

門を過ぎてからも公園のように広い庭を通り過ぎ、堀に囲まれた城壁のまた奥に、石造りの城が威風堂々と建っていた。

ゲイリーが近衛兵に要件を話し、応接室に通された。

「わしとて、今は挙兵の準備で忙しい時に何の用じゃゲイリー」

「大臣、この者が魔王国との仲立ちを申し出ておりますので、こちらにお連れしました。」

「何者だ、そやつは。」

「Sランク冒険者の大賢者レイとその妻のゴローナです。
二人はコーフーの町の生き残りでもあります。」

「ほう この若造がか?そんな強そうにはみえんが
わっ えっ なんだ貴様ら、やめろ!
わっ ぐっ 命だけは助け………」

「ゴローナ、止めるんだ!
失礼しました。
幻術は、お楽しみいただけましたか?大臣」

「ハァハァ な なんということだ。
自分が殺される夢を見せたと言うことか?
恐ろしい術を使う者だな。
それで、どう仲立ちをすると言うのだ。」

「先程挙兵の準備と言う話が有りましたが、それは魔王国に向けてと言うことでしょうか」

「もちろんそうだ。コーフーの町を消滅したのは、宣戦布告と我々は受け取っている。
戦はもう始まったのだ。」

「コーフーの町を消滅したのは確かに魔王国の者ですが、それは事故によるものだったのです。
私は、その事故を起こした張本人と戦い、倒しました。
ササゴ峠に登り来る魔人や魔物も殲滅しました。
その勢いのままに魔王国に、二人で乗り込みました。
しかし、そこで初めてコーフーの町を消滅させたのは事故であり。
これ以降人族への攻撃をする意思は無いと分かりました。」

「しかし、その話だけでは、振り上げた矛を収める訳にはいかんぞ。」

「はい、まずフジタカハ湖の内の3名が使者として派遣されるよう手はずしています。
また和平が整った後には、魔王自ら出向き、調印そして謝罪するとなりましょう。」

「そこまで、準備しておるのか、ならば日を改めて、王様はじめ諸侯を集めよう。その場に魔王国の代表を招き交渉をしてはどうだろうか。」

「はっ。ありがとうございます。これで無駄な血が流れずにすみます。」

「所で魔王国側とは、どのように連絡を取るのだ。」

「私には『転移』スキルが有りますので、瞬時に魔王国と行き来できます。」

「それは便利な。
奥様はご心配でしょうな。
大賢者殿ご夫妻には、交渉日までの間は迎賓館にお泊り下され。」

「心配?なんのことかにゃ?」

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