ルーザー

烏帽子 博

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人間狩り

ルーザーからウィナー

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私は、マークと戦うことなくゲーム終了の時間をむかえた。

ゲーム終了のサイレンが鳴る

モニターが点灯してアナウンスが流れた。

「レイさん、マークさん
お疲れ様です。今回のゲームはここで終了です。
お近くのドローンの後に着いて来てください」

本部にマークと共に連れていかれる。

「おい!お前はこっちだ。」

マークは、どこかへ連れて行かれた。

「全く、ルーザー分際で、ウィナーになったレイさんのそばに居られるわけないのにね」

メイド姿の女性がそう話しかけてきた。

私は行く先々で握手を求められ、称賛された。
勝利者インタビューということで、テレビスタジオに連れていかれた。
スタジオで待っていたのは、モニターに何時も映っていたアナウンサーとあの解説者のゴンだった。

わたしは、ゴンの顔を見て
全身蚊に刺されて、痒くてのた打ち回ればいいのに と思った。

「視聴者の皆さん。
今回のゲームで見事ターゲットとして出場1回目でウィナーとなられたレイさんをスタジオにお招きしました。
レイさんは、なんとこの春15歳となって参加資格を得られたばかりです。
ゲームクリアとしては、史上最年少記録です。

レイさん おめでとうございます。
まずは一言お願いします。」

「ありがとうございます。
まずは、私と戦って亡くなられた方たちに哀悼の意を告げたいと思います。
それと、このゲームで亡くなられた全ての方のご冥福を祈りたいと思います。」

「15歳とは思えない、しっかりした方ですね。
ゲームに参加されたご感想をお願いします。」

「正直な話 恐かったです。
そこそこやれる自信は有ったんですが、毒矢を受けてみて自分の考えの甘さを痛感しました。
ジョンさんがあのときハンターを仕留めてくれなかったら、私は今こうして、ここにいるのではなく、死んでいたでしょう。」

「最初の戦闘が、明暗を分けたんですかね。
命拾いしたレイさんはウィナーとなり、助けたジョンさんは、最後に命を落としたんですよね」

「そうですね。私には運がありました。」

それでは、レイさんの活躍を中心に、今回のゲームのハイライトをおおくりします。

いくつかの戦闘シーンの後、私がケガを負ったマークに駆けつけたシーンが映し出された。

「おや?レイさんマークさんに抱きついて泣いてましたね。
これは、どうゆうことでしょう?」

「マークは兄妹のように育った人で、ゲームスタートした時は敵と思うようにしたんですが、いざ彼が死にそうだと知ったら、ああなってしまいました。」

「そうなんですか。敵味方に分かれても尚のラブロマンスが有ったんですね。
その後のレイさんがリストカットしているのはなんでしょう」

「私自身、そんなことができるスキルを自分が持ってることを知らなかったんですが、泣いた時に偶然発見できたんです。
私の血を使ったら、傷を癒せることを。」

「そうですか、それでマークさんは元気を取り戻して、ジョンさんとの戦いに行けたんですね。
やっとわかりました。
レイさんのスキルが係わってたんですね。」

「レイさん、もう1つ伺いたいんですが、レイさんの戦闘スタイルは、離れた相手に、石や牙を投げてますよね。
これもスキルでしょうか」

「多分そうだと思います」

「やはりそうですか。
しかし凄いですねぇ、2つもスキルをお持ちとは。
そんな人初めてですよ。
流石最年少記録でウィナーになる人は違いますね。」

「ありがとうございます」

「これからレイさんのウィナーとしての生活が始まるわけですが、どんなことがしたいですか。」

「正直な話ウィナーとなって何が私に出来るのか、よくわかってません。
それを知るためにも、出来ればこの世界を見て回りたいです」

「世界を見る旅ですか。面白いことを言う人ですねぇ。
大抵の人は美味しいものを腹いっぱい食べたいって言いますよ。
解説のゴンさんはどうでした?」

「とにかくルーザーではなくなるのが、嬉しかったですねぇ
ノルマをクリアしないと食事が貰えないし、そうしていただく配給食も不味いから辛かったなぁ。
今はウィナーとなれて、本当に良かったとおもってます。
ウィナーになったレイさん、今宵はレストランでの食事にご招待ですよ。
ステーキにワイン、素晴らしいと思いませんか?」

「そ そうですね。ステーキにワインって何ですか。」

「そうか それも知らないですよね。
ほっぺた落ちるほど美味しい食事ですよ。
先輩ウィナーの私が、色々と教えてあげますよ。」

「お忙しい方にご迷惑でしょうから、遠慮させて下さい。」

「えっ…………」

「ゴンさん、見事に振られちゃいましたね。
え~ ゲームで勝ち残ったレイさんには、ウィナーとしての生活に馴れるように、女性アドバイザーがしばらく着くことに成ってます。」

「ゴンさん、お気持ちだけ有難く受けとっておきますね。」

スタジオでのインタビューはそこで終了となった。

スタジオを出ると、一人の女性と引き会わされた。

「アドバイザーのシルビアよ、よろしくね、レイ」
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