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聖夜祭休戦7
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「いや、エーペンシュタインならなんとか出来るかもしれません」
「本当か!」
ベルケが呟くと、碧子は顔を上げてせまった。
「是非ともお会いしたい! どうにかしてくれないか」
「落ち着いてください殿下」
積極的な碧子を忠弥は珍しく止めた。そしてベルケに尋ねる。
「大貴族なのか? 彼は?」
いまいち敵の皇太子に会うための筋道が見えない。
「爵位は伯爵で資産家です。その時に何回か会っています。皇太子殿下のお気に入りになったのは先のヴォージュ要塞攻略戦で軍司令官であられる殿下に偵察報告のため司令部へ出頭し御前で偵察報告を行ったことです。要塞の航空偵察に成功し最初の攻撃を成功に導いたのはエーペンシュタインの成果です」
その話を聞いて忠弥は苦笑した。
帝国軍の偵察が成功して大砲を潰されたという報告を幾度か受けていたからだ。
「その後も何度か顔を合わせています。その時、皇太子殿下がエーペンシュタインを気に入っております。彼の口利きがあればあるいは」
「エーペンシュタインとやら、皇太子殿下とお会いできるか」
「え、ええ、出来るかと」
真摯にまっすぐ見つめてくる碧子の必死な表情をみてエーペンシュタインは拒否することは出来ず曖昧な肯定をしてしまった。
「よかった皇太子殿下と会う機会が出来た」
そして、講和の道筋が見えて喜ぶ碧子の姿を見ると、出来ないと言えなくなってしまった。
「すぐ行くのじゃ! 忠弥飛行機を用意いたせ」
「は、はい」
碧子に言われて忠弥は飛行機の準備を進めた。
目の前のエーペンシュタインが要塞の偵察成功をさせ要塞戦は一時危機に陥り忠弥達も苦戦した。
だが、その成果で皇太子殿下とのパイプが出来て、今講和のために赴こうとしている事に運命の皮肉を感じる忠弥だった。
三十分後、忠弥達は飛行機に乗って中間地帯を越えた。
「……今更ですが危険すぎませんか?」
忠弥は後席に載っている碧子に尋ねた。
エーペンシュタインが先に戻り、皇太子から極秘に会談することを承諾するという暗号通信――パーティーの準備完了という予め決めておいた符号が届いたので向かっている。
だが、極秘のため、密かに拘束される可能性も高い。
今更ながらこれから行う行為は危険だと思っている。
「忠弥達は常に前線にいてその身を危険に曝した。上官である妾も危険に身をさらさねばならぬだろう」
「十分、守って貰っているんですけど」
創設ほやほやの空軍が既存の陸海軍の過剰な干渉を受けずに済んでいるのは皇族である碧子が司令官を務めているからだ。
碧子がいなければ特に苦戦の続く陸軍の下働きで消耗し消耗していただろう。
他国はもっと酷く、統合空軍が出来たのも、連合軍の空軍戦力統合運用の他に、飛行機を碌に知らずこき使う自軍の上層部に腹を立てたテストやサイクスの逃げ込み先という理由もある。
「ここで碧子に死なれては後々大変です」
「戦争が続くの方が大変なのじゃ。何とか無事に戦いを終わらせる事こそ重要であろう。多くの皇国臣民の数が失われることこそ悲劇じゃ。戦争が終わる可能性があるのなら妾の命など惜しくはない」
「ご立派な志で」
あっけにとられつつも忠弥はこれ以上、碧子を止めはしなかった。
理解は出来なかったが碧子の皇国を思う気持ちはよう分かった。
確かに戦争が終わればこれ以上、戦士は
それは自分の飛行機に対する情熱と同様のものだったので手助けしたいと思ったからだ。
その時、ベルケが忠弥の機体の前に出て来てバンク――機体を左右に振った。
目的の飛行場に近づいたことを知らせた。
テントの中に入ってきたのは髪を横に流して整えた貴公子然とした男性だった。
目は大きく整えられた口ひげをしているため、日本の歴史教科書で見た近衛文麿のような印象を忠弥は持った。
「初めましてハイデルベルク帝国皇太子、帝国第五軍司令官ヴィルムヘルムです」
現皇帝の次男で兄の暗殺に伴い、皇太子に即位したばかりだ。現在は従軍中で軍の一つ第五軍を任されていた。
しかしヴォージュ要塞攻略を攻撃したため、大損害を出しているとの事で意気消沈気味だった。。
「皇国内親王、皇国空軍司令官の碧子じゃ」
一方の碧子は堂々としたものだった。
「本日は講和出来ないかと話し合いに来たのじゃ」
「残念ながら私は皇太子であり軍の司令官です。講和を決定するような立場にございません。全ての大権は陛下にあります」
「何とかならぬのか」
「失礼ながら殿下」
脇に控えていた相原が口を挟む。
「殿下は皇国の全てを決める権限がございますか」
「それは、おもうさま、いや陛下の大権じゃ」
「そういうことです。事を決める、講和を決めることは出来ません」
外交交渉は政府の権限であり、委任状を渡された外交官が交渉に臨む。
国同士の取り決めである条約は互いが守る、国のあり方を規定することになりかねないため国権の一部にあたりより慎重だ。
講和および休戦条約は特にだ。
「そうなのか……」
相原の言葉に碧子は肩を落とした。
「本当か!」
ベルケが呟くと、碧子は顔を上げてせまった。
「是非ともお会いしたい! どうにかしてくれないか」
「落ち着いてください殿下」
積極的な碧子を忠弥は珍しく止めた。そしてベルケに尋ねる。
「大貴族なのか? 彼は?」
いまいち敵の皇太子に会うための筋道が見えない。
「爵位は伯爵で資産家です。その時に何回か会っています。皇太子殿下のお気に入りになったのは先のヴォージュ要塞攻略戦で軍司令官であられる殿下に偵察報告のため司令部へ出頭し御前で偵察報告を行ったことです。要塞の航空偵察に成功し最初の攻撃を成功に導いたのはエーペンシュタインの成果です」
その話を聞いて忠弥は苦笑した。
帝国軍の偵察が成功して大砲を潰されたという報告を幾度か受けていたからだ。
「その後も何度か顔を合わせています。その時、皇太子殿下がエーペンシュタインを気に入っております。彼の口利きがあればあるいは」
「エーペンシュタインとやら、皇太子殿下とお会いできるか」
「え、ええ、出来るかと」
真摯にまっすぐ見つめてくる碧子の必死な表情をみてエーペンシュタインは拒否することは出来ず曖昧な肯定をしてしまった。
「よかった皇太子殿下と会う機会が出来た」
そして、講和の道筋が見えて喜ぶ碧子の姿を見ると、出来ないと言えなくなってしまった。
「すぐ行くのじゃ! 忠弥飛行機を用意いたせ」
「は、はい」
碧子に言われて忠弥は飛行機の準備を進めた。
目の前のエーペンシュタインが要塞の偵察成功をさせ要塞戦は一時危機に陥り忠弥達も苦戦した。
だが、その成果で皇太子殿下とのパイプが出来て、今講和のために赴こうとしている事に運命の皮肉を感じる忠弥だった。
三十分後、忠弥達は飛行機に乗って中間地帯を越えた。
「……今更ですが危険すぎませんか?」
忠弥は後席に載っている碧子に尋ねた。
エーペンシュタインが先に戻り、皇太子から極秘に会談することを承諾するという暗号通信――パーティーの準備完了という予め決めておいた符号が届いたので向かっている。
だが、極秘のため、密かに拘束される可能性も高い。
今更ながらこれから行う行為は危険だと思っている。
「忠弥達は常に前線にいてその身を危険に曝した。上官である妾も危険に身をさらさねばならぬだろう」
「十分、守って貰っているんですけど」
創設ほやほやの空軍が既存の陸海軍の過剰な干渉を受けずに済んでいるのは皇族である碧子が司令官を務めているからだ。
碧子がいなければ特に苦戦の続く陸軍の下働きで消耗し消耗していただろう。
他国はもっと酷く、統合空軍が出来たのも、連合軍の空軍戦力統合運用の他に、飛行機を碌に知らずこき使う自軍の上層部に腹を立てたテストやサイクスの逃げ込み先という理由もある。
「ここで碧子に死なれては後々大変です」
「戦争が続くの方が大変なのじゃ。何とか無事に戦いを終わらせる事こそ重要であろう。多くの皇国臣民の数が失われることこそ悲劇じゃ。戦争が終わる可能性があるのなら妾の命など惜しくはない」
「ご立派な志で」
あっけにとられつつも忠弥はこれ以上、碧子を止めはしなかった。
理解は出来なかったが碧子の皇国を思う気持ちはよう分かった。
確かに戦争が終わればこれ以上、戦士は
それは自分の飛行機に対する情熱と同様のものだったので手助けしたいと思ったからだ。
その時、ベルケが忠弥の機体の前に出て来てバンク――機体を左右に振った。
目的の飛行場に近づいたことを知らせた。
テントの中に入ってきたのは髪を横に流して整えた貴公子然とした男性だった。
目は大きく整えられた口ひげをしているため、日本の歴史教科書で見た近衛文麿のような印象を忠弥は持った。
「初めましてハイデルベルク帝国皇太子、帝国第五軍司令官ヴィルムヘルムです」
現皇帝の次男で兄の暗殺に伴い、皇太子に即位したばかりだ。現在は従軍中で軍の一つ第五軍を任されていた。
しかしヴォージュ要塞攻略を攻撃したため、大損害を出しているとの事で意気消沈気味だった。。
「皇国内親王、皇国空軍司令官の碧子じゃ」
一方の碧子は堂々としたものだった。
「本日は講和出来ないかと話し合いに来たのじゃ」
「残念ながら私は皇太子であり軍の司令官です。講和を決定するような立場にございません。全ての大権は陛下にあります」
「何とかならぬのか」
「失礼ながら殿下」
脇に控えていた相原が口を挟む。
「殿下は皇国の全てを決める権限がございますか」
「それは、おもうさま、いや陛下の大権じゃ」
「そういうことです。事を決める、講和を決めることは出来ません」
外交交渉は政府の権限であり、委任状を渡された外交官が交渉に臨む。
国同士の取り決めである条約は互いが守る、国のあり方を規定することになりかねないため国権の一部にあたりより慎重だ。
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