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防御陣形
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「またしても成功しませんでしたな」
ベルケはペーターシュトラッサーに嫌みを言う。
「飛行船は手前で引き返し、しかも、飛行船一隻を撃墜され、爆撃できなかった」
「いや、成功の手前までいきました」
「詭弁だろう」
「むしろ連中の焦りを引き出しました」
「焦りだと?」
「体当たり以外に撃墜方法が無いと告白したような物です。次回の爆撃では九隻の飛行船を投入。完全な陣形を組み、敵戦闘機を近づけさせないようにします」
「馬鹿を言うな!」
ベルケは叫んだ。
「また体当たりされて撃墜されたらどうする」
「アレは例外でしょう。まして初めから体当たりしようと考える命知らずはいないでしょう」
「戦闘機乗りという物をお前は知らなすぎる。血の気の多い連中で体当たりも辞さないぞ」
戦闘機は三次元の空間を自由自在に飛び回るため、遠距離から狙って落とせるものではない。
そのため戦闘機は敵にできる限り接近する必要があり、時には近すぎて良くて接触、悪ければそのまま衝突して相打ちになることもある。
それ以上に戦闘機乗りというのは負けず嫌いの人間が多い。
敵を葬り去る事こそ戦闘機の存在意義であり、空に出て敵を滅ぼすことが出来ないなど存在意義が問われる。
だから、何が何でも撃墜しようと執拗に食いつくしどんな手段を用いても撃墜しようとする。
例え体当たりをしてでもだ。
「先の撃墜を例外と考えるのは危険だ」
「なに、もう行われないでしょう。このまま攻撃を続行します。危険な体当たりも敵機を近づけさせない接近しても撃墜すれば良いだけです。今度の攻撃では武装強化を行っており来れば撃墜します。もっとも接近すら出来ないでしょうが」
「だが」
「それとも代案がおありで?」
ベルケは黙り込んだ。
海を隔てた王国本土まではあまりに遠く、飛行機では爆撃は勿論、到達することさえ難しい。
「爆撃は実行します」
「許可しよう」
軍司令官である皇太子殿下は作戦を許可した
「せいぜい撃墜されないよう気をつけるように。相手は戦闘機部隊だけじゃない、忠弥さんもいるんだ」
「言われるまでもありません」
去り際にベルケは注意したがペーターシュトラッサーは鼻で笑って歯牙にもかけなかった。
こうして帝国軍の飛行船部隊九隻は、翌日王国の王都爆撃のため夜明けと共に出撃していった。
「哨戒部隊より入電。G28地点で敵飛行船多数発見」
「数は分かるか?」
「五隻以上との報告です」
「大量にやってきたわね」
楽しそうに昴は言う。
忠弥は続報で針路と速力、高度を記入し、飛行船部隊の予想進路と迎撃地点を設定する。
「出撃します。迎撃地点はC30地点。高度一〇〇〇で待機。予め定めた手はず通りにお願いします」
「了解!」
出撃命令が下り飛行場では駐機場に並んだ飛行機が一斉にエンジンを始動させ、次々と離陸していく。
忠弥もそのうちに一気に乗り込み出撃していった。
「回して!」
昴もドネイショナー――寄贈号と名付けられた新しい機体に乗り込む。
ジョンの街の人々の寄付で送られた機体だ。
寄付が集まる度にバーが上がっていくよう、可視化したのが良かったため、すぐに満額集まり、その最初の飛行機を与えられた。
昴は最初辞退しようかと思ったが、ジョンを初めとする人々が熱心にお願いしたこともあり、昴が乗り込むことになった。ちなみに二機目の購入のための募金も始まっている。
彼らはすぐさま離陸すると、迎撃予定地点に向かう。
新たに一個中隊が投入され三個中隊四二機に本部小隊の四機が加わる。
二個中隊は先行して広がりつつ、飛行船を探した。
「見つけた!」
海岸線から少し海に出たところで昴は王国に接近する飛行船船団を発見した。
すぐさま信号弾を打ち上げ、無線で位置を知らせる。
「九隻も一挙に投入したですって。なんて連中なの」
仮に六トンの爆弾を積んでいるとして五四トンの爆弾が降り注ぐ、逸れも防空対策の施されていない都市部にだ。
被害は大きくなってしまう。
「絶対にさせない」
周囲で索敵していた配下の戦闘機が集まり始めた。十分な数が揃い、昴は攻撃を決意した。
「攻撃開始!」
昴は戦闘を切って突撃を開始した。
飛行船の巨大な船体が照準環からはみ出しそうになる。
しかし、近づくと飛行船の各部に猛けっれた銃座から昴たちに向かって弾幕が打ち上げられた。
「うわあああっ」
さすがに昴も機体を翻して、回避した。
数があまりにも多すぎる。銃座の数も銃の数も増えている。
しかも隻数が増えている上、微妙に高度差、左右差を付けて編隊を組んでいるので、死角がない。
下手に一隻に攻撃を仕掛けようとすると他の飛行船から銃撃を受けて撃墜されてしまう。
「このおっ」
遠くから銃撃を加えるが、命中弾は少ないし、遠すぎて船体のひらひらした布を打ち抜けない。
意外かもしれないが、銃弾というのは。ひらひらしたものを打ち抜くのが苦手だ。
特に遠距離から放たれ、勢いが削がれた銃弾は撃ち抜きにくい。
それでも昴は攻撃を続ける。
「早く来てよ忠弥」
本命である忠弥達の攻撃隊が来る時間を稼ぎ、飛行船の抵抗を、銃弾を無駄打ちさせる為に攻撃を続けた。
「もう、無理よ」
しかし、速力も砲火も衰えない飛行船団への攻撃に昴もさすがに弱音を吐き始める。
そして、体当たりしか無いのではと思い始める。
忠弥ともうしないと約束したが、ジョンの事を、街の人達の事を思うと撃墜しなければという思いが強くなる。
昴は操縦桿を強く握りしめ飛行船に向かった。
ベルケはペーターシュトラッサーに嫌みを言う。
「飛行船は手前で引き返し、しかも、飛行船一隻を撃墜され、爆撃できなかった」
「いや、成功の手前までいきました」
「詭弁だろう」
「むしろ連中の焦りを引き出しました」
「焦りだと?」
「体当たり以外に撃墜方法が無いと告白したような物です。次回の爆撃では九隻の飛行船を投入。完全な陣形を組み、敵戦闘機を近づけさせないようにします」
「馬鹿を言うな!」
ベルケは叫んだ。
「また体当たりされて撃墜されたらどうする」
「アレは例外でしょう。まして初めから体当たりしようと考える命知らずはいないでしょう」
「戦闘機乗りという物をお前は知らなすぎる。血の気の多い連中で体当たりも辞さないぞ」
戦闘機は三次元の空間を自由自在に飛び回るため、遠距離から狙って落とせるものではない。
そのため戦闘機は敵にできる限り接近する必要があり、時には近すぎて良くて接触、悪ければそのまま衝突して相打ちになることもある。
それ以上に戦闘機乗りというのは負けず嫌いの人間が多い。
敵を葬り去る事こそ戦闘機の存在意義であり、空に出て敵を滅ぼすことが出来ないなど存在意義が問われる。
だから、何が何でも撃墜しようと執拗に食いつくしどんな手段を用いても撃墜しようとする。
例え体当たりをしてでもだ。
「先の撃墜を例外と考えるのは危険だ」
「なに、もう行われないでしょう。このまま攻撃を続行します。危険な体当たりも敵機を近づけさせない接近しても撃墜すれば良いだけです。今度の攻撃では武装強化を行っており来れば撃墜します。もっとも接近すら出来ないでしょうが」
「だが」
「それとも代案がおありで?」
ベルケは黙り込んだ。
海を隔てた王国本土まではあまりに遠く、飛行機では爆撃は勿論、到達することさえ難しい。
「爆撃は実行します」
「許可しよう」
軍司令官である皇太子殿下は作戦を許可した
「せいぜい撃墜されないよう気をつけるように。相手は戦闘機部隊だけじゃない、忠弥さんもいるんだ」
「言われるまでもありません」
去り際にベルケは注意したがペーターシュトラッサーは鼻で笑って歯牙にもかけなかった。
こうして帝国軍の飛行船部隊九隻は、翌日王国の王都爆撃のため夜明けと共に出撃していった。
「哨戒部隊より入電。G28地点で敵飛行船多数発見」
「数は分かるか?」
「五隻以上との報告です」
「大量にやってきたわね」
楽しそうに昴は言う。
忠弥は続報で針路と速力、高度を記入し、飛行船部隊の予想進路と迎撃地点を設定する。
「出撃します。迎撃地点はC30地点。高度一〇〇〇で待機。予め定めた手はず通りにお願いします」
「了解!」
出撃命令が下り飛行場では駐機場に並んだ飛行機が一斉にエンジンを始動させ、次々と離陸していく。
忠弥もそのうちに一気に乗り込み出撃していった。
「回して!」
昴もドネイショナー――寄贈号と名付けられた新しい機体に乗り込む。
ジョンの街の人々の寄付で送られた機体だ。
寄付が集まる度にバーが上がっていくよう、可視化したのが良かったため、すぐに満額集まり、その最初の飛行機を与えられた。
昴は最初辞退しようかと思ったが、ジョンを初めとする人々が熱心にお願いしたこともあり、昴が乗り込むことになった。ちなみに二機目の購入のための募金も始まっている。
彼らはすぐさま離陸すると、迎撃予定地点に向かう。
新たに一個中隊が投入され三個中隊四二機に本部小隊の四機が加わる。
二個中隊は先行して広がりつつ、飛行船を探した。
「見つけた!」
海岸線から少し海に出たところで昴は王国に接近する飛行船船団を発見した。
すぐさま信号弾を打ち上げ、無線で位置を知らせる。
「九隻も一挙に投入したですって。なんて連中なの」
仮に六トンの爆弾を積んでいるとして五四トンの爆弾が降り注ぐ、逸れも防空対策の施されていない都市部にだ。
被害は大きくなってしまう。
「絶対にさせない」
周囲で索敵していた配下の戦闘機が集まり始めた。十分な数が揃い、昴は攻撃を決意した。
「攻撃開始!」
昴は戦闘を切って突撃を開始した。
飛行船の巨大な船体が照準環からはみ出しそうになる。
しかし、近づくと飛行船の各部に猛けっれた銃座から昴たちに向かって弾幕が打ち上げられた。
「うわあああっ」
さすがに昴も機体を翻して、回避した。
数があまりにも多すぎる。銃座の数も銃の数も増えている。
しかも隻数が増えている上、微妙に高度差、左右差を付けて編隊を組んでいるので、死角がない。
下手に一隻に攻撃を仕掛けようとすると他の飛行船から銃撃を受けて撃墜されてしまう。
「このおっ」
遠くから銃撃を加えるが、命中弾は少ないし、遠すぎて船体のひらひらした布を打ち抜けない。
意外かもしれないが、銃弾というのは。ひらひらしたものを打ち抜くのが苦手だ。
特に遠距離から放たれ、勢いが削がれた銃弾は撃ち抜きにくい。
それでも昴は攻撃を続ける。
「早く来てよ忠弥」
本命である忠弥達の攻撃隊が来る時間を稼ぎ、飛行船の抵抗を、銃弾を無駄打ちさせる為に攻撃を続けた。
「もう、無理よ」
しかし、速力も砲火も衰えない飛行船団への攻撃に昴もさすがに弱音を吐き始める。
そして、体当たりしか無いのではと思い始める。
忠弥ともうしないと約束したが、ジョンの事を、街の人達の事を思うと撃墜しなければという思いが強くなる。
昴は操縦桿を強く握りしめ飛行船に向かった。
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