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飛行船基地攻撃
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飛行船は巨大な船体を収容するため、巨大な格納庫を必要とする。
他にも大量の水素ガスを貯蔵したり、飛行船や設備の維持のための人員の宿舎など高度な支援設備を有する基地が必要となる。
「飛行船基地を破壊して使用不能にする」
この基地が無くなれば、帝国は飛行船を飛ばすことが出来ない。
それどころか駐機中の飛行船を襲撃される危険が出てくる。
虎の子の飛行船を破壊されないよう、本土奥深くへ避難させる事も考えられる。
飛行船の航続距離は帝国沿岸からようやく王国本土へ行ける程度であると撃墜した飛行船の調査で判明しており、沿岸部の基地を攻撃すれば本土爆撃を阻止できる。
忠弥の作戦は的を射ていた。
しかしサイクスは首を横に振った。
「海軍の協力を得るのですか? 大陸沿岸は広い浅瀬で、陸地ギリギリへ砲弾を送り込むことでさえ射程が足りませんし、近づくのは危険です」
本土を爆撃されたとき、王国海軍は真っ先に飛行船基地の砲撃計画を立案しようとした。だが早々に海軍は計画断念している。
一見深く見える海だが、大陸沿岸は案外浅い。
吃水が九メートルもある戦艦が航行出来る海域は狭く、そうした海域には帝国軍の機雷が敷設されている。
無理に接近しても敵艦隊の母港が近く、攻撃中に退路を断たれ、陸と敵艦に挟まれて攻撃艦隊は全滅する恐れがある。
いくら優勢を保っている王国海軍でも大きな損害を受けるわけにはいかない。
が、以上の理由により早々に攻撃計画は断念された。
「それは分かっている。船でダメなのなら飛行機を使う。飛行機なら上空から襲撃を掛けられるから浅い海など関係ない」
「ですが、帝国本土まで距離があります」
帝国と王国の間には海があり、飛行機で往復できる距離ではない。
飛行船で一方的に攻撃されている理由でもある。
「士魂号を使いますか?」
「無理だよ。爆弾を積めない」
大洋横断用に作った士魂号は、長距離飛行専用で爆弾を搭載できるようにはなっていない。
軽量化しすぎて、爆弾を取り付けただけで機体は強度不足で折れてしまうだろう。
「基地を破壊するには爆弾が必要だ。爆弾を積める地上攻撃機を使う」
「足――航続距離が短すぎます。片道も無理で海に落ちてしまいます」
燃料を満タンにして爆弾を積み込んだら、飛行船基地にたどり着く前に海に落ちてしまう。
無意味な攻撃で飛行機を失うだけだとサイクスは考えた。
だが忠弥は諦めてはいなかった
「なら簡単だ。途中まで船を使って、そこから飛行機で飛び立てばいいんだ」
忠弥の言葉にサイクスは目を丸くした。
「そんな飛行機が、いや船もあるのですか?」
「ある」
忠弥はサイクスに力強く断言した。
「準備していた船が、航空母艦がある。こいつを投入する目処が立った。攻撃計画を立てるから手伝ってくれ」
「喜んで!」
一週間後、ベルケは出撃していく飛行船部隊を見送っていた。
今後の作戦のために選抜した戦闘機パイロット共に新たな機材の訓練と研究を重ねていたが、今日ようやく終わり、出撃できる。
前線から離れているベルケが、今後は帝国の為に役に立てるはずだった。
「いよいよですね」
選抜されたエーペンシュタインが嬉しそうに言う。
前線から離れ撃墜スコアが得られなくなっていたが、冒険的な作戦に参加できることに喜びを感じていた。
「彼らのように立派な戦果を上げたいものです」
「そうだな」
事故や撃墜が出ても飛行船部隊は王国への夜間爆撃を行っていた。
彼らのように自分たちも努力しようと思っていた。
その時、一機の見慣れない機体が基地上空を飛んでいるのが二人には見えた。
「水上機のようですね」
飛行機の機体から出てきている筒状の物体、水に浮かぶためのフロートを見てエーペンシュタインが言った。
「海軍が艦艇に乗せるために作り上げた機体でしょう。もうすぐ実戦配備だとか」
海の上でも使える飛行機が欲しいと海軍が航空隊に協力を依頼して作り上げた機体だった。
航空都市にいた時忠弥が研究していた機体構想を思い出したベルケがアイディアを提供してこしらえた物だ。
平らな甲板から発艦させる方法も考案したが、大砲を載せられないと海軍側が拒否して、海の上に離着水出来る水上機で案が纏まり、開発が進められていた。
エーペンシュタインも開発に関わっており、よく知っている。
「だが、形が少し違うな」
「海軍で独自に改良したのでしょう。連中も飛行機に夢中になって改造し始めましたから」
最新技術というのは関わる人間にとって、魅力的な玩具だ。
そして手を加えたいと思うのは誰にでもある。
海軍の技術者達も、技術を習得するとあれこれと手を入れ始め、色々と加えたため、元の形から大きく逸脱した機体もある。
見慣れない機体がいてもおかしくなかった。
「だろうな」
エーペンシュタインにそう答えたもののベルケは疑問に思った。
あの機体は何処かで見たことがあった。それを思い出せなかった。
「戻ってきたぞ!」
マストの見張り員が水平線から現れた機体を指さす。
乗員達は大急ぎで甲板に上がり帰ってきた機体の収容作業を準備する。
既に太陽は水平線の向こう側に沈んでおり、やがて真っ暗になってしまう。
残照が残っている内に機体を収容したかった。
その願いに応えるように水上機は艦の周りを一周するとすぐ横に着水し、収容しやすい艦の側まで近づいていった。
「お見事です」
艦橋のウィングからサイクスが大声で賞賛する。
「偵察も成功させたぞ!」
忠弥はクレーンで吊り上げられる水上機から世界初の航空母艦、若宮に初の戦果を伝えた。
他にも大量の水素ガスを貯蔵したり、飛行船や設備の維持のための人員の宿舎など高度な支援設備を有する基地が必要となる。
「飛行船基地を破壊して使用不能にする」
この基地が無くなれば、帝国は飛行船を飛ばすことが出来ない。
それどころか駐機中の飛行船を襲撃される危険が出てくる。
虎の子の飛行船を破壊されないよう、本土奥深くへ避難させる事も考えられる。
飛行船の航続距離は帝国沿岸からようやく王国本土へ行ける程度であると撃墜した飛行船の調査で判明しており、沿岸部の基地を攻撃すれば本土爆撃を阻止できる。
忠弥の作戦は的を射ていた。
しかしサイクスは首を横に振った。
「海軍の協力を得るのですか? 大陸沿岸は広い浅瀬で、陸地ギリギリへ砲弾を送り込むことでさえ射程が足りませんし、近づくのは危険です」
本土を爆撃されたとき、王国海軍は真っ先に飛行船基地の砲撃計画を立案しようとした。だが早々に海軍は計画断念している。
一見深く見える海だが、大陸沿岸は案外浅い。
吃水が九メートルもある戦艦が航行出来る海域は狭く、そうした海域には帝国軍の機雷が敷設されている。
無理に接近しても敵艦隊の母港が近く、攻撃中に退路を断たれ、陸と敵艦に挟まれて攻撃艦隊は全滅する恐れがある。
いくら優勢を保っている王国海軍でも大きな損害を受けるわけにはいかない。
が、以上の理由により早々に攻撃計画は断念された。
「それは分かっている。船でダメなのなら飛行機を使う。飛行機なら上空から襲撃を掛けられるから浅い海など関係ない」
「ですが、帝国本土まで距離があります」
帝国と王国の間には海があり、飛行機で往復できる距離ではない。
飛行船で一方的に攻撃されている理由でもある。
「士魂号を使いますか?」
「無理だよ。爆弾を積めない」
大洋横断用に作った士魂号は、長距離飛行専用で爆弾を搭載できるようにはなっていない。
軽量化しすぎて、爆弾を取り付けただけで機体は強度不足で折れてしまうだろう。
「基地を破壊するには爆弾が必要だ。爆弾を積める地上攻撃機を使う」
「足――航続距離が短すぎます。片道も無理で海に落ちてしまいます」
燃料を満タンにして爆弾を積み込んだら、飛行船基地にたどり着く前に海に落ちてしまう。
無意味な攻撃で飛行機を失うだけだとサイクスは考えた。
だが忠弥は諦めてはいなかった
「なら簡単だ。途中まで船を使って、そこから飛行機で飛び立てばいいんだ」
忠弥の言葉にサイクスは目を丸くした。
「そんな飛行機が、いや船もあるのですか?」
「ある」
忠弥はサイクスに力強く断言した。
「準備していた船が、航空母艦がある。こいつを投入する目処が立った。攻撃計画を立てるから手伝ってくれ」
「喜んで!」
一週間後、ベルケは出撃していく飛行船部隊を見送っていた。
今後の作戦のために選抜した戦闘機パイロット共に新たな機材の訓練と研究を重ねていたが、今日ようやく終わり、出撃できる。
前線から離れているベルケが、今後は帝国の為に役に立てるはずだった。
「いよいよですね」
選抜されたエーペンシュタインが嬉しそうに言う。
前線から離れ撃墜スコアが得られなくなっていたが、冒険的な作戦に参加できることに喜びを感じていた。
「彼らのように立派な戦果を上げたいものです」
「そうだな」
事故や撃墜が出ても飛行船部隊は王国への夜間爆撃を行っていた。
彼らのように自分たちも努力しようと思っていた。
その時、一機の見慣れない機体が基地上空を飛んでいるのが二人には見えた。
「水上機のようですね」
飛行機の機体から出てきている筒状の物体、水に浮かぶためのフロートを見てエーペンシュタインが言った。
「海軍が艦艇に乗せるために作り上げた機体でしょう。もうすぐ実戦配備だとか」
海の上でも使える飛行機が欲しいと海軍が航空隊に協力を依頼して作り上げた機体だった。
航空都市にいた時忠弥が研究していた機体構想を思い出したベルケがアイディアを提供してこしらえた物だ。
平らな甲板から発艦させる方法も考案したが、大砲を載せられないと海軍側が拒否して、海の上に離着水出来る水上機で案が纏まり、開発が進められていた。
エーペンシュタインも開発に関わっており、よく知っている。
「だが、形が少し違うな」
「海軍で独自に改良したのでしょう。連中も飛行機に夢中になって改造し始めましたから」
最新技術というのは関わる人間にとって、魅力的な玩具だ。
そして手を加えたいと思うのは誰にでもある。
海軍の技術者達も、技術を習得するとあれこれと手を入れ始め、色々と加えたため、元の形から大きく逸脱した機体もある。
見慣れない機体がいてもおかしくなかった。
「だろうな」
エーペンシュタインにそう答えたもののベルケは疑問に思った。
あの機体は何処かで見たことがあった。それを思い出せなかった。
「戻ってきたぞ!」
マストの見張り員が水平線から現れた機体を指さす。
乗員達は大急ぎで甲板に上がり帰ってきた機体の収容作業を準備する。
既に太陽は水平線の向こう側に沈んでおり、やがて真っ暗になってしまう。
残照が残っている内に機体を収容したかった。
その願いに応えるように水上機は艦の周りを一周するとすぐ横に着水し、収容しやすい艦の側まで近づいていった。
「お見事です」
艦橋のウィングからサイクスが大声で賞賛する。
「偵察も成功させたぞ!」
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