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整備工場爆撃
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「飛行船と基地の状況はどうだ」
飛行船基地に戻ってきたベルケは被害状況を確認した。
「二つの格納庫に爆弾が命中し、中にあった飛行船と共に炎上、使用不能でしょう。あと火災で飛び火して一隻が炎上。消火中に風にながされ、風下に停泊していた飛行船に当たり炎上しました。残りは上空に待避しました」
四隻の飛行船が一度に撃破されたことにベルケは舌打ちした。
気に食わない使い方をされている兵器だが、空を飛ぶ航空機を破壊されるのは同じ空を飛ぶ者として悲しい。
「周辺の見張りをより厳重にする必要があるな」
新たな被害が出ないようにベルケは指示を下す。
艦砲射撃が行えない遠浅の海に隣接しており守るのに適した基地だと思っていた。だが航空機による攻撃が行われた、となると安心していられない。
航空機の発展はめまぐるしいが、対応するための準備、ルールや考え方が連合軍も帝国も未熟だ。
「しかし、一矢報いましたよ」
エーペンシュタインがベルケに言う。
攻撃は阻止できなかったが、海軍と協力して敵の水上機母艦を撃沈し、攻撃手段を奪い一矢報いた。
「だが、これで終わるようには思えない」
ベルケは、誇る気にはなれなかった。
世界で最も航空機に知識の深い忠弥に打撃を与えたが、何をしてくるか分からない。
絶対にここで折れることはない。
なにがしかの反撃を考えているハズだ。それがもしかしたら今日中かもしれない。
「水雷艇からの続報はないか?」
「ありませんが。母艦を撃沈されたのです。撤退するのでは?」
「反撃があるかもしれない」
「攻撃を成功させ損害を受けているのにですか?」
「作戦目標を達成するまで行動するのが作戦だ」
苦々しい表情でベルケは言った。
敵の塹壕を占領し戦線を突破するために、今日も前線で味方は敵の塹壕に向かって突撃している。
おびただしい数の死者が出ても止まらないのは作戦目標を達成していない、塹壕を占領し戦線を突破していないからだ。
目標を達成、あるいは達成不能な損害を受けるまで撤退はしない。
軍人としての能力も教育も受けていない忠弥だが、粘り強さ、もしくは諦めの悪さに関しては、側で見ているだけにベルケは何かすると確信していた。
「我が方の被害は飛行船と、格納庫だけか?」
「はい、それでも大損害ですよ。稼働する飛行船の四分の一が失われたのですよ」
「それでも攻撃するだろうな」
本土爆撃を阻止したいなら飛行船を全て撃墜するのが確実だ。
だが残った飛行船を攻撃しようと考えているとはベルケには思えなかった。
飛行船を全滅させる事が目的とは思えない。
忠弥は飛行機の将来を深く考えている。
「いつでも誰でも空を飛べるようにしたい」
と航空都市の時代に何時も言っていた。
より速く、より高く、より遠くへという目的のために退く気を開発していたが、それはほんの一部に過ぎない。
多くの人が飛行機に乗れるように量産して送り届けることを重視している。
飛行船も何隻も建造できると考えているから、全滅させても新たな飛行船が来るだけと考えるはず。
「何が目的だ」
ベルケは忠弥の言葉や行動を思い出す。
飛行機が飛べるように整備態勢を整えるのを見てきた。
「格納庫の被害は甚大か?」
「はい、使用不能です」
「整備は? エンジンの整備工場はどうなっている」
「幸い、被害はありませんでしたが」
「出撃する! 上空に出て敵の攻撃に備えろ! 目標はエンジンの整備工場だ! 整備工場の機材を避難させろ!」
「機材は全て据え付けで迅速な移動は困難です」
「兎に角、動かせる物だけでも動かせ。機体の整備は終わったか!」
ベルケは再び空に飛び上がろうとした。
「あれはなんだ!」
地上の要員が海に向かって指さした。
その先には水平線から接近する機体があった。
「飛行場基地を視認」
飛行船が炎上しているお陰で大きな煙が上っており、格好の目印だった。
上空を警戒していた戦闘機が攻撃してくるが水面すれすれのため、撃墜できない。
基地の中に入っても地面すれすれを飛行する。
だが、敵機はピッタリと張り付いていた。
攻撃の為に上昇するところを狙おうとしていた。
それは忠弥も承知だった。
炎上する飛行船に向かうと、煙の中に隠れて敵機の目を逃れ上昇する。
基地の構造はジオラマで完全に把握している。
「いまだ!」
煙に紛れて左旋回を行い敵の目を眩まして緩い急降下を行う。煙から抜け出すと、目の前に目標のエンジン整備工場があった。
「ドンピシャだ!」
照準に収めつつ、機首を少し上げる。
整備工場は下に流れて行きやがて機首のエンジンの影に隠れた。
「ここだ!」
そこで忠弥は爆弾を投下した。
最初は真っ直ぐ離れていく爆弾だったが、重力に捉えられ、放物線を描く。
それが、整備工場へのコースとピッタリと一致し、整備工場へ直撃した。
機体を水平に建て直したとき、背後で轟音が響き渡った。
「エンジン整備工場に直撃、爆発!」
後ろの昴がカメラで撮影しつつ大声で報告する。
戦果確認は作戦で重要だ。
成功したか否か判定する必要がある。敵の目の前で行うのは並大抵の事ではないがカメラに収めれば、後で分かる。
完全に破壊したか、不十分なら再攻撃しないといけない。機能停止しないと空襲が再開され新たな被害が出る。
軽く旋回させて忠弥自らも工場が炎上する様を見て、安堵する。
「よし、離脱する」
忠弥は機体を巡らし、海に向かった。
しかしそこに立ちはだかったのは、ベルケだった。
飛行船基地に戻ってきたベルケは被害状況を確認した。
「二つの格納庫に爆弾が命中し、中にあった飛行船と共に炎上、使用不能でしょう。あと火災で飛び火して一隻が炎上。消火中に風にながされ、風下に停泊していた飛行船に当たり炎上しました。残りは上空に待避しました」
四隻の飛行船が一度に撃破されたことにベルケは舌打ちした。
気に食わない使い方をされている兵器だが、空を飛ぶ航空機を破壊されるのは同じ空を飛ぶ者として悲しい。
「周辺の見張りをより厳重にする必要があるな」
新たな被害が出ないようにベルケは指示を下す。
艦砲射撃が行えない遠浅の海に隣接しており守るのに適した基地だと思っていた。だが航空機による攻撃が行われた、となると安心していられない。
航空機の発展はめまぐるしいが、対応するための準備、ルールや考え方が連合軍も帝国も未熟だ。
「しかし、一矢報いましたよ」
エーペンシュタインがベルケに言う。
攻撃は阻止できなかったが、海軍と協力して敵の水上機母艦を撃沈し、攻撃手段を奪い一矢報いた。
「だが、これで終わるようには思えない」
ベルケは、誇る気にはなれなかった。
世界で最も航空機に知識の深い忠弥に打撃を与えたが、何をしてくるか分からない。
絶対にここで折れることはない。
なにがしかの反撃を考えているハズだ。それがもしかしたら今日中かもしれない。
「水雷艇からの続報はないか?」
「ありませんが。母艦を撃沈されたのです。撤退するのでは?」
「反撃があるかもしれない」
「攻撃を成功させ損害を受けているのにですか?」
「作戦目標を達成するまで行動するのが作戦だ」
苦々しい表情でベルケは言った。
敵の塹壕を占領し戦線を突破するために、今日も前線で味方は敵の塹壕に向かって突撃している。
おびただしい数の死者が出ても止まらないのは作戦目標を達成していない、塹壕を占領し戦線を突破していないからだ。
目標を達成、あるいは達成不能な損害を受けるまで撤退はしない。
軍人としての能力も教育も受けていない忠弥だが、粘り強さ、もしくは諦めの悪さに関しては、側で見ているだけにベルケは何かすると確信していた。
「我が方の被害は飛行船と、格納庫だけか?」
「はい、それでも大損害ですよ。稼働する飛行船の四分の一が失われたのですよ」
「それでも攻撃するだろうな」
本土爆撃を阻止したいなら飛行船を全て撃墜するのが確実だ。
だが残った飛行船を攻撃しようと考えているとはベルケには思えなかった。
飛行船を全滅させる事が目的とは思えない。
忠弥は飛行機の将来を深く考えている。
「いつでも誰でも空を飛べるようにしたい」
と航空都市の時代に何時も言っていた。
より速く、より高く、より遠くへという目的のために退く気を開発していたが、それはほんの一部に過ぎない。
多くの人が飛行機に乗れるように量産して送り届けることを重視している。
飛行船も何隻も建造できると考えているから、全滅させても新たな飛行船が来るだけと考えるはず。
「何が目的だ」
ベルケは忠弥の言葉や行動を思い出す。
飛行機が飛べるように整備態勢を整えるのを見てきた。
「格納庫の被害は甚大か?」
「はい、使用不能です」
「整備は? エンジンの整備工場はどうなっている」
「幸い、被害はありませんでしたが」
「出撃する! 上空に出て敵の攻撃に備えろ! 目標はエンジンの整備工場だ! 整備工場の機材を避難させろ!」
「機材は全て据え付けで迅速な移動は困難です」
「兎に角、動かせる物だけでも動かせ。機体の整備は終わったか!」
ベルケは再び空に飛び上がろうとした。
「あれはなんだ!」
地上の要員が海に向かって指さした。
その先には水平線から接近する機体があった。
「飛行場基地を視認」
飛行船が炎上しているお陰で大きな煙が上っており、格好の目印だった。
上空を警戒していた戦闘機が攻撃してくるが水面すれすれのため、撃墜できない。
基地の中に入っても地面すれすれを飛行する。
だが、敵機はピッタリと張り付いていた。
攻撃の為に上昇するところを狙おうとしていた。
それは忠弥も承知だった。
炎上する飛行船に向かうと、煙の中に隠れて敵機の目を逃れ上昇する。
基地の構造はジオラマで完全に把握している。
「いまだ!」
煙に紛れて左旋回を行い敵の目を眩まして緩い急降下を行う。煙から抜け出すと、目の前に目標のエンジン整備工場があった。
「ドンピシャだ!」
照準に収めつつ、機首を少し上げる。
整備工場は下に流れて行きやがて機首のエンジンの影に隠れた。
「ここだ!」
そこで忠弥は爆弾を投下した。
最初は真っ直ぐ離れていく爆弾だったが、重力に捉えられ、放物線を描く。
それが、整備工場へのコースとピッタリと一致し、整備工場へ直撃した。
機体を水平に建て直したとき、背後で轟音が響き渡った。
「エンジン整備工場に直撃、爆発!」
後ろの昴がカメラで撮影しつつ大声で報告する。
戦果確認は作戦で重要だ。
成功したか否か判定する必要がある。敵の目の前で行うのは並大抵の事ではないがカメラに収めれば、後で分かる。
完全に破壊したか、不十分なら再攻撃しないといけない。機能停止しないと空襲が再開され新たな被害が出る。
軽く旋回させて忠弥自らも工場が炎上する様を見て、安堵する。
「よし、離脱する」
忠弥は機体を巡らし、海に向かった。
しかしそこに立ちはだかったのは、ベルケだった。
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