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第一部第四章
鉄道大臣就任
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「解りましたアクスム別働隊、北方貴族反乱軍、アクスム本隊、周、エフタルの順に攻撃すれば良いのですね」
昭弥は、地図を見て考えた。
「解りました。直ぐにダイヤ編成を考えましょう。あと、列車を自由に動かしたいので、予算、物資、人員などを最優先でお願いします。必要最低限に収めますので軍備の方には問題無いはず」
「軍備はどれくらい動員すれば良いのだ?」
「最大限ですね。予備役と自警団を全て招集して良いでしょう」
「全てだと!」
ハレックは驚きの声を上げた。
「本気で言っているのかね?」
「ええ。だって総兵力が足りないんでしょう? だったら増やすしかないでしょう。敵に勝つには兵力が勝っていることが最大の条件ですから」
「集めて運用できるのかね?」
「計算上ですが、短期間、二ヶ月程度なら王都の物資、鉄道会社で扱っている食品や物資だけでも一〇〇万の兵隊を養えるはずです。不足分は王国全土から鉄道で集めます」
「わかりました! それだけ言って貰えれば、集めましょう。王都には籠城と帝国からの援軍の為に大規模な備蓄倉庫が建設されています。そこからも物資を出して支えることにしましょう」
ハレックと昭弥はユリアを見た。同意を求めるためだ
「よろしいでしょう」
ユリアはあっさりと許可を出した。
「直ちに出撃の用意を。私も出撃します」
「ダメです」
自らの出撃宣言をマイヤーに止められた。
「どうしてです?」
「王都において軍の招集、布告の発布など女王にしか出来ない事が山ほどあります」
「ですが私が出なければ」
「女王が居なければ、出来ないことが沢山有ります。宰相をはじめ大臣の空席を埋めなくてはなりませんから書かなければならない書類は山ほど有ります」
「それなら昭弥を宰相に任命します」
「え、私ですか? 無理ですよ」
昭弥は直ぐに否定した。
「これから鉄道のダイヤ編成や物資、人員の手配が必要なんです。とても宰相を務めるのは無理です」
「鉄道会社を起こし王国を豊かにした昭弥が無理と」
「能力的なものではなく仕事量の問題です」
鉄道関連だけで膨大な量になる。そして昭弥以外に鉄道関係の指示、それも政治レベルで出来る人間など王国にはいない。
右を見ながら左を注意しろと言うようなものだ。影分身が出来る人間で無ければ不可能だ。
「ならば鉄道だけでも絶大な権限を与えましょう。今から鉄道大臣です」
「え? 鉄道大臣って? ありましたか?」
「今作りました。王国の鉄道に関するありとあらゆる権限を与えます」
「それは嬉しいのですが、いいんですか?」
現在の昭弥の地位は王国鉄道会社社長だ。株式は王国が持っているとはいえ、経営者であり民間人だ。一方鉄道大臣は行政のトップクラスの公人、規制する側だ。それを両方兼務するのは経産大臣を東電の社長が在職したまま就任するようなものだ。
「女王である私が決めました。何か問題でも?」
「いいえ、ありませんね」
だがここは現代日本では無く異世界。それも中世の慣習を色濃く残している世界であり、公私の区別さえ怪しい所だ。経営とその監視などという概念さえないだろう。
だが、この場合、兼任は非常に有用だ。
特に監視者の許諾を必要としないため迅速に子とをするめる事が出来る。問題があるとすれば昭弥が間違うと、全て間違うことである。だが残念なことに昭弥以上の鉄道知識と経験を持つ人間は王国はおろか、この世界にはいない。なので他の人が監視者なっても居ても置物か足手まとい、邪魔者にしかならない。
「では鉄道は良いとして宰相ですが。仕方ありません。宰相は私が兼任しましょう」
「陛下がですか」
全員が驚いた。
「空白を埋めるだけです。皆にも手伝って貰います。エリザベス、官房長官に任命します。私を手伝って下さい」
「御意のままに」
エリザベスは、深々と礼をした。臆するところが無い。
ラザフォード伯爵家公女の能力か、普段から傍らで、重要書類を取り扱っているからだろうか。
「では前線での指揮官はハレック中将に」
「いえ、私はこの王都にて動員の仕事がありますので」
部隊を編成し兵装し兵站し教導するのは多大な労力が必要であり、無数の指示と書類が必要である。支持を安全な後方地帯で無いと無理だ。
動員に時間がかかった場合前線への兵力供給が遅れるため、王都から離れるわけにはいかない。
「では、誰が前線指揮官となるのですか。各方面の指揮官に任せるのですか」
「それは無謀です」
ハレックが拒絶した。
各個撃破は、強力な一軍による機動と打撃が必要である。各方面に指揮官が必要だが彼らは防御と決戦後の残敵掃討が主な役目であり、主力軍の指揮とは切り離すべきだ。
一時的に増援を送って、決戦が終わったら増援を引き離す方法もだめだ。
命令しても、自軍の戦力が低下するのを嫌って、なんだかんだと理由を付けたりサボタージュを行って、部隊を帰そうとしない。
後で処罰をしても良いが、部隊の移動に貴重な時間を浪費されては問題だ。
だから主力を纏める軍と司令官が必要となる。
「誰かいないの!」
叫んだとき、正面の扉が開いた。
「ジョン・ラザフォード伯爵、只今女王陛下のために援軍を引き連れて参陣いたしました」
いきなりの登場に全員が彼の方向を見て、あっけにとられ、ユリアの傍らにいたエリザベスがこめかみを押さえても、ラザフォード伯爵は意に介さず、女王の前に来ると優雅に一礼した。
「このたびの反乱、諸外国の侵攻。王国の一大事と判断し、独断で王都に参りました。処罰は覚悟の上。ですがその前に王国守護の大任を全うさせて下さい」
あまりにも芝居かかった台詞に全員が唖然とし、エリザベスは恥ずかしさのあまり、顔を埋めていた。
ただ、礼を受けたユリアだけは違った。
「ラザフォード伯爵、よくいらして下さいました。このたびの独断は不問といたします。王国を護らんと言う言葉は本当ですか?」
「二言はございません!」
「では、王国軍主力軍の司令官となり、敵を撃滅しなさい。撃滅すべき敵に関してはこちらで順番を決めてあります。戦場への移動手段も用意します。あなたはただ、戦場において敵を撃滅することに専念して下さい」
「はっ、勅命しかと承りました。直ちに部隊を指揮して、敵を撃滅してご覧にいれましょう」
二人だけの世界に誰もついて行けず、主力軍司令官の人事が決まってしまった。
「大丈夫なんですか?」
昭弥が隣にいたハレックに尋ねた。
「まあ、大丈夫でしょう。ラザフォード伯爵は昔から戦上手という評判ですし戦功もありますから」
「どういうことです?」
「遠征軍に参加していましたし、女王陛下就任の時の反乱では、真っ先に戦場に斬り込み陛下の到着まで戦線を保ち続けました。そして敵の壊滅後は残敵掃討の指揮を見事に取られて武名を上げました。望めばさらなる地位に就けたのに自分はただの武人と言って領地に引きこもっておりました。そんな伯爵を陛下は信用しており、息女エリザベス殿をメイドにするほどです」
なるほど、股肱の臣と言うわけか、と昭弥は納得した。
ただ、あのノリにはユリアの幼なじみであり、娘であるエリザベスには付いていけないようだで頭を抱えていた。
昭弥は、地図を見て考えた。
「解りました。直ぐにダイヤ編成を考えましょう。あと、列車を自由に動かしたいので、予算、物資、人員などを最優先でお願いします。必要最低限に収めますので軍備の方には問題無いはず」
「軍備はどれくらい動員すれば良いのだ?」
「最大限ですね。予備役と自警団を全て招集して良いでしょう」
「全てだと!」
ハレックは驚きの声を上げた。
「本気で言っているのかね?」
「ええ。だって総兵力が足りないんでしょう? だったら増やすしかないでしょう。敵に勝つには兵力が勝っていることが最大の条件ですから」
「集めて運用できるのかね?」
「計算上ですが、短期間、二ヶ月程度なら王都の物資、鉄道会社で扱っている食品や物資だけでも一〇〇万の兵隊を養えるはずです。不足分は王国全土から鉄道で集めます」
「わかりました! それだけ言って貰えれば、集めましょう。王都には籠城と帝国からの援軍の為に大規模な備蓄倉庫が建設されています。そこからも物資を出して支えることにしましょう」
ハレックと昭弥はユリアを見た。同意を求めるためだ
「よろしいでしょう」
ユリアはあっさりと許可を出した。
「直ちに出撃の用意を。私も出撃します」
「ダメです」
自らの出撃宣言をマイヤーに止められた。
「どうしてです?」
「王都において軍の招集、布告の発布など女王にしか出来ない事が山ほどあります」
「ですが私が出なければ」
「女王が居なければ、出来ないことが沢山有ります。宰相をはじめ大臣の空席を埋めなくてはなりませんから書かなければならない書類は山ほど有ります」
「それなら昭弥を宰相に任命します」
「え、私ですか? 無理ですよ」
昭弥は直ぐに否定した。
「これから鉄道のダイヤ編成や物資、人員の手配が必要なんです。とても宰相を務めるのは無理です」
「鉄道会社を起こし王国を豊かにした昭弥が無理と」
「能力的なものではなく仕事量の問題です」
鉄道関連だけで膨大な量になる。そして昭弥以外に鉄道関係の指示、それも政治レベルで出来る人間など王国にはいない。
右を見ながら左を注意しろと言うようなものだ。影分身が出来る人間で無ければ不可能だ。
「ならば鉄道だけでも絶大な権限を与えましょう。今から鉄道大臣です」
「え? 鉄道大臣って? ありましたか?」
「今作りました。王国の鉄道に関するありとあらゆる権限を与えます」
「それは嬉しいのですが、いいんですか?」
現在の昭弥の地位は王国鉄道会社社長だ。株式は王国が持っているとはいえ、経営者であり民間人だ。一方鉄道大臣は行政のトップクラスの公人、規制する側だ。それを両方兼務するのは経産大臣を東電の社長が在職したまま就任するようなものだ。
「女王である私が決めました。何か問題でも?」
「いいえ、ありませんね」
だがここは現代日本では無く異世界。それも中世の慣習を色濃く残している世界であり、公私の区別さえ怪しい所だ。経営とその監視などという概念さえないだろう。
だが、この場合、兼任は非常に有用だ。
特に監視者の許諾を必要としないため迅速に子とをするめる事が出来る。問題があるとすれば昭弥が間違うと、全て間違うことである。だが残念なことに昭弥以上の鉄道知識と経験を持つ人間は王国はおろか、この世界にはいない。なので他の人が監視者なっても居ても置物か足手まとい、邪魔者にしかならない。
「では鉄道は良いとして宰相ですが。仕方ありません。宰相は私が兼任しましょう」
「陛下がですか」
全員が驚いた。
「空白を埋めるだけです。皆にも手伝って貰います。エリザベス、官房長官に任命します。私を手伝って下さい」
「御意のままに」
エリザベスは、深々と礼をした。臆するところが無い。
ラザフォード伯爵家公女の能力か、普段から傍らで、重要書類を取り扱っているからだろうか。
「では前線での指揮官はハレック中将に」
「いえ、私はこの王都にて動員の仕事がありますので」
部隊を編成し兵装し兵站し教導するのは多大な労力が必要であり、無数の指示と書類が必要である。支持を安全な後方地帯で無いと無理だ。
動員に時間がかかった場合前線への兵力供給が遅れるため、王都から離れるわけにはいかない。
「では、誰が前線指揮官となるのですか。各方面の指揮官に任せるのですか」
「それは無謀です」
ハレックが拒絶した。
各個撃破は、強力な一軍による機動と打撃が必要である。各方面に指揮官が必要だが彼らは防御と決戦後の残敵掃討が主な役目であり、主力軍の指揮とは切り離すべきだ。
一時的に増援を送って、決戦が終わったら増援を引き離す方法もだめだ。
命令しても、自軍の戦力が低下するのを嫌って、なんだかんだと理由を付けたりサボタージュを行って、部隊を帰そうとしない。
後で処罰をしても良いが、部隊の移動に貴重な時間を浪費されては問題だ。
だから主力を纏める軍と司令官が必要となる。
「誰かいないの!」
叫んだとき、正面の扉が開いた。
「ジョン・ラザフォード伯爵、只今女王陛下のために援軍を引き連れて参陣いたしました」
いきなりの登場に全員が彼の方向を見て、あっけにとられ、ユリアの傍らにいたエリザベスがこめかみを押さえても、ラザフォード伯爵は意に介さず、女王の前に来ると優雅に一礼した。
「このたびの反乱、諸外国の侵攻。王国の一大事と判断し、独断で王都に参りました。処罰は覚悟の上。ですがその前に王国守護の大任を全うさせて下さい」
あまりにも芝居かかった台詞に全員が唖然とし、エリザベスは恥ずかしさのあまり、顔を埋めていた。
ただ、礼を受けたユリアだけは違った。
「ラザフォード伯爵、よくいらして下さいました。このたびの独断は不問といたします。王国を護らんと言う言葉は本当ですか?」
「二言はございません!」
「では、王国軍主力軍の司令官となり、敵を撃滅しなさい。撃滅すべき敵に関してはこちらで順番を決めてあります。戦場への移動手段も用意します。あなたはただ、戦場において敵を撃滅することに専念して下さい」
「はっ、勅命しかと承りました。直ちに部隊を指揮して、敵を撃滅してご覧にいれましょう」
二人だけの世界に誰もついて行けず、主力軍司令官の人事が決まってしまった。
「大丈夫なんですか?」
昭弥が隣にいたハレックに尋ねた。
「まあ、大丈夫でしょう。ラザフォード伯爵は昔から戦上手という評判ですし戦功もありますから」
「どういうことです?」
「遠征軍に参加していましたし、女王陛下就任の時の反乱では、真っ先に戦場に斬り込み陛下の到着まで戦線を保ち続けました。そして敵の壊滅後は残敵掃討の指揮を見事に取られて武名を上げました。望めばさらなる地位に就けたのに自分はただの武人と言って領地に引きこもっておりました。そんな伯爵を陛下は信用しており、息女エリザベス殿をメイドにするほどです」
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