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第二部第一章
チェニス到着
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「ここがチェニスか」
初めて訪れる自分の領地に昭弥は特に感慨無く呟いた。
貨物列車で来たため、貨物駅に一旦降り立った後、旅客駅への連絡列車に乗り継ぎ移動して今、駅のホームに立っている。
オスティアと同じ緯度にあるが海流の関係からか、より温暖であり冬である今の時期は過ごしやすい。
「さて、仕事だな」
「どうするんですか?」
付いてきたセバスチャンが尋ねた。
「領地の屋敷に行きますか?」
「何も無いのに? それに後から来る人員の仕事をすることを考えると駅の近くが良い」
駅は新設されたためチェニスの町から離れたところに建設されている。
そのため中心に近い公爵邸から離れており、仕事上は不便だ。
「宿舎には使えそうだな」
「そうでしょうけど」
「よし、とりあえず駅の事務所の一角借りてそこを臨時の事務所にしよう。で、駅近くの倉庫やホテルを適当に借りたりして鉄道支社の事務所にしよう」
「そうですね。そうしましょう」
「やけにあっさり肯定するね。反対するかと思ったのに」
「いや、このままアクスムへ単身乗り込もうとか言い出しかねないと思っていましたから」
「そこまで無鉄砲じゃないよ」
「常識があって良かったです」
「アクスムを開発するために前進基地となるこのチェニスを把握しないとね」
「やはりいつもの社長でした」
同時にセバスチャンは覚悟した。喜々として語る姿は破天荒な無茶ぶりの前兆にしか見えない。
「さてと始めるとしますか」
昭弥は宣言通り、駅事務所の一角を占拠すると列車内で書き溜めたメモの整理を始め、順に処理するよう命令した。
各地の人事の移動命令であり、王国各地で昭弥の代わりとなって建設に従事した達人、専門家だ。
昭弥が鉄道に必要な技術や知識を与えたこともあり、この世界随一の鉄道建設専門家集団となっている。
元々、河川改修などが盛んで土木技術が優れていた上、怒濤の鉄道建設により現場の数を多くこなしてきた経験豊富なベテラン集団になりつつある。
昭弥にとって彼らほど頼もしい集団はない。
さらに出鱈目とも思える地図を位置から作り直す測量集団。
新たに鉄道を新造する必要もあると思い鉄道工場から製造チームの一つを。
と同時に、チェニスの町の改造計画と、領地の経営計画を立てる。
激戦地の近くだったため、町に結構被害を受けているし、占領されていたため略奪と破壊を受けて、町が崩壊状態だ。それらの対策も一通り考える必要がある。
これから来る職員の宿泊施設として近くの軍施設を一時的に借り受けたり、鉄道会社傘下の建築会社に新たな社屋の建設を指示したりと、それらの仕事を駅員の手を借りたこともあり、一晩で終わらせた。
一日中、鉄道に乗っている間、指示書や計画書を書き上げていたにもかかわらず、徹夜をする驚異的なスタミナ、いや鉄道に対する情熱だった。
「さて、一休みするか」
夜が明けたことに気が付き、一旦手を休めるとセバスチャンが力尽きていた。
さすがに昭弥に付き合うのは、常人では難しい。盗賊の経歴があっても無理だ。
昭弥はセバスチャンに駅員から借りた毛布を掛けると、散歩がてら外に出て行った。
「さすがに人が多いな」
激戦地の近くだったこともあり、駅周辺は軍による大規模な野営地が出来ていた。
アクスムへの中継点ともなっており、駐留軍へ派遣される部隊の出発地でもあるため、活発に活動している。
「変だな。主力は既にいないはずなのに人数が多すぎないか?」
テントの数が多すぎるような気がする。それに、宿営地としては防御陣地が大規模すぎる。と言うより外敵に備えていると言うより、内側から出さないようにしているように見える。
「今すぐ出して下さい!」
一人の女性が宿営地の前で懇願していた。
「彼ら、彼女らは何ら私たちと変わりません!」
「何度も五月蠅い」
何処か、切羽詰まった迫り方を当直兵に行い、彼らを困らせていた。
「だったらあんたが買い取れよ」
「彼らは商品じゃありません」
「いや、商品だよ」
「酷い! 慈愛の心は無いのですか!」
「いちいち掛けていられるか!」
なおもすがりついてくる女性にケリを入れて離した。
「ちょ、ちょっと、待って」
状況は分からなかったが、女性が蹴られるのを見てはおけず昭弥が前に出た。
「いくら何でも蹴らなくても」
「ああ、こいつは毎日やって来て同じ事をやっているんだよ。いい加減、やめて貰いたいんだが口で言っても聞かないんで、身体で分からせるしか無いようだ。中の連中と同じで」
「? どういう事ですか?」
「ああ、後ろの奴隷共さ」
「!」
昭弥は驚いた。
ここにいたのは、先の戦いで捕虜になったアクスム軍の兵士達。殆どが獣人であり、奴隷として売れる。
「どうして」
「どうしてって、奴隷として売れば金になるからな。報奨金が増えるのは嬉しいしな」
兵士が戦うのは大義名分と勝算の他に報償がいる。それも現実的な。
略奪が多いのは、少しでも自分の取り分を増やすためであり、苦労が多い割りに給料が少ない事もある。
奴隷は特に高値で売れるしこれだけの人数なら、膨大な価値、財産となる。
彼らが厳重に囲うのも昭弥には分かった。
初めて訪れる自分の領地に昭弥は特に感慨無く呟いた。
貨物列車で来たため、貨物駅に一旦降り立った後、旅客駅への連絡列車に乗り継ぎ移動して今、駅のホームに立っている。
オスティアと同じ緯度にあるが海流の関係からか、より温暖であり冬である今の時期は過ごしやすい。
「さて、仕事だな」
「どうするんですか?」
付いてきたセバスチャンが尋ねた。
「領地の屋敷に行きますか?」
「何も無いのに? それに後から来る人員の仕事をすることを考えると駅の近くが良い」
駅は新設されたためチェニスの町から離れたところに建設されている。
そのため中心に近い公爵邸から離れており、仕事上は不便だ。
「宿舎には使えそうだな」
「そうでしょうけど」
「よし、とりあえず駅の事務所の一角借りてそこを臨時の事務所にしよう。で、駅近くの倉庫やホテルを適当に借りたりして鉄道支社の事務所にしよう」
「そうですね。そうしましょう」
「やけにあっさり肯定するね。反対するかと思ったのに」
「いや、このままアクスムへ単身乗り込もうとか言い出しかねないと思っていましたから」
「そこまで無鉄砲じゃないよ」
「常識があって良かったです」
「アクスムを開発するために前進基地となるこのチェニスを把握しないとね」
「やはりいつもの社長でした」
同時にセバスチャンは覚悟した。喜々として語る姿は破天荒な無茶ぶりの前兆にしか見えない。
「さてと始めるとしますか」
昭弥は宣言通り、駅事務所の一角を占拠すると列車内で書き溜めたメモの整理を始め、順に処理するよう命令した。
各地の人事の移動命令であり、王国各地で昭弥の代わりとなって建設に従事した達人、専門家だ。
昭弥が鉄道に必要な技術や知識を与えたこともあり、この世界随一の鉄道建設専門家集団となっている。
元々、河川改修などが盛んで土木技術が優れていた上、怒濤の鉄道建設により現場の数を多くこなしてきた経験豊富なベテラン集団になりつつある。
昭弥にとって彼らほど頼もしい集団はない。
さらに出鱈目とも思える地図を位置から作り直す測量集団。
新たに鉄道を新造する必要もあると思い鉄道工場から製造チームの一つを。
と同時に、チェニスの町の改造計画と、領地の経営計画を立てる。
激戦地の近くだったため、町に結構被害を受けているし、占領されていたため略奪と破壊を受けて、町が崩壊状態だ。それらの対策も一通り考える必要がある。
これから来る職員の宿泊施設として近くの軍施設を一時的に借り受けたり、鉄道会社傘下の建築会社に新たな社屋の建設を指示したりと、それらの仕事を駅員の手を借りたこともあり、一晩で終わらせた。
一日中、鉄道に乗っている間、指示書や計画書を書き上げていたにもかかわらず、徹夜をする驚異的なスタミナ、いや鉄道に対する情熱だった。
「さて、一休みするか」
夜が明けたことに気が付き、一旦手を休めるとセバスチャンが力尽きていた。
さすがに昭弥に付き合うのは、常人では難しい。盗賊の経歴があっても無理だ。
昭弥はセバスチャンに駅員から借りた毛布を掛けると、散歩がてら外に出て行った。
「さすがに人が多いな」
激戦地の近くだったこともあり、駅周辺は軍による大規模な野営地が出来ていた。
アクスムへの中継点ともなっており、駐留軍へ派遣される部隊の出発地でもあるため、活発に活動している。
「変だな。主力は既にいないはずなのに人数が多すぎないか?」
テントの数が多すぎるような気がする。それに、宿営地としては防御陣地が大規模すぎる。と言うより外敵に備えていると言うより、内側から出さないようにしているように見える。
「今すぐ出して下さい!」
一人の女性が宿営地の前で懇願していた。
「彼ら、彼女らは何ら私たちと変わりません!」
「何度も五月蠅い」
何処か、切羽詰まった迫り方を当直兵に行い、彼らを困らせていた。
「だったらあんたが買い取れよ」
「彼らは商品じゃありません」
「いや、商品だよ」
「酷い! 慈愛の心は無いのですか!」
「いちいち掛けていられるか!」
なおもすがりついてくる女性にケリを入れて離した。
「ちょ、ちょっと、待って」
状況は分からなかったが、女性が蹴られるのを見てはおけず昭弥が前に出た。
「いくら何でも蹴らなくても」
「ああ、こいつは毎日やって来て同じ事をやっているんだよ。いい加減、やめて貰いたいんだが口で言っても聞かないんで、身体で分からせるしか無いようだ。中の連中と同じで」
「? どういう事ですか?」
「ああ、後ろの奴隷共さ」
「!」
昭弥は驚いた。
ここにいたのは、先の戦いで捕虜になったアクスム軍の兵士達。殆どが獣人であり、奴隷として売れる。
「どうして」
「どうしてって、奴隷として売れば金になるからな。報奨金が増えるのは嬉しいしな」
兵士が戦うのは大義名分と勝算の他に報償がいる。それも現実的な。
略奪が多いのは、少しでも自分の取り分を増やすためであり、苦労が多い割りに給料が少ない事もある。
奴隷は特に高値で売れるしこれだけの人数なら、膨大な価値、財産となる。
彼らが厳重に囲うのも昭弥には分かった。
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