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第二部 第二章
帝国鉄道の改善1
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「どういう事なのだ!」
報告を聞いた皇帝は担当者を詰問した。
帝国鉄道の利用者に王国鉄道から移ってくる利用者が殆どいない。
「は、はい。どうしても単線ですと通せる列車の数に限りが。複線である王国鉄道と比べて著しく少ない本数しか走らせる事しか出来ません」
帝国鉄道は基本単線で、一日ごとに上りと下りが入れ替わる事になっている。
そのため輸送出来る量が単純計算で複線の半分程度しかない。
「ならば複線にすれば良いでは無いか」
「は、はい。只今工事をしております」
「突貫工事でやれ! 一月以内に完成させろ。金はいくら掛かっても構わぬ。ありとあらゆる場所から資材を集め完成させろ!」
「はいっっっっ」
皇帝の強い指示に担当者は謁見の間から飛び出ていった。
「何としても奪い取らなければ」
フロリアヌスが強く執着するのは、オスティアからセント・ベルナルドへのコースは香辛料を得るために使われる主要ルートであり、ルテティア王国の富の源泉であるからだ。
このルートを通じて香辛料が行かないようにすれば近いうちにルテティアは財政難となり、崩壊するだろう。
あとは帝国が接収し直轄地にしてしまう。そして、ユリアを自分の支配下に置こうと考えていた。
だからこそ、帝国オスティア線の成功が不可欠だった。
一月後、帝国オスティア線の複線化が完成した。
これで毎日上下に列車を走らせることが出来、計算上では二倍の本数を走らせる事が出来る。
「これで王国鉄道のシェアを奪ってやる」
皇帝は報告を聞いて自信満々に呟いた。
一週間後、王国鉄道の社長室でセバスチャンが、現状を伝えた。
「現在、王国鉄道から帝国鉄道へ利用を変更した方は僅かです。以上、報告を終わります。けど、どうして増えないんですか?」
「馬車と蒸気機関とが混在しているかからね」
帝国鉄道は馬が引く馬車鉄道と蒸気機関車の混在している。
そのため速度の遅い馬車鉄道が先を走っていると、後続はより早い速度を出せる機関車でも馬車に合わせる必要があった。
「王国鉄道は高速運転を目的としていたからね。都市部以外で馬車鉄道を利用する気は無いよ」
一方、王国鉄道の方ははじめから蒸気機関車のみで馬車鉄道は少なくとも幹線路線で走らせてはいなかった。スピードの異なる列車が、輸送力の低下をもたらすことを昭弥は知っていたからだ。
「他にも原因があるけど、理解出来るかな」
「どうしてなのだ!」
報告を受けた皇帝は再び担当者を詰問した。
「はい、蒸気機関車と馬車が混在しているため、どうしても馬の速度に合わせなければならないので」
「ならば機関車のみに限定すれば良かろう」
「しかし、馬車鉄道の利用者も多く。利用禁止とするのは問題が」
「王国の連中は機関車のみで十分利益を上げているでは無いか。機関車のみにしろ」
皇帝の命令により直ちに布告がなされ、オスティア線の利用は蒸気機関車のみとなった。
確かに速度は上がったが、利用者は微増だった。
「以上、報告を終わります」
定例となってきた帝国鉄道の現状報告をセバスチャンは行った。
「どうして利用者が増えないんですか?」
「使えるのがマラーター商人ぐらいだからだよ」
昭弥はセバスチャンに説明した。
「蒸気機関車は高いからね。それを所有して運用するにはよほどの大金持ちしか無理だ。そんな金があって使いたがるのは、マラーターの商人ぐらいだよ」
「王国の商人が使うのでは?」
「ウチ、王国鉄道があるのに使う訳がないよ」
「どうしてですか?」
「簡単に言うと購入すると経費になるよね。あと運転するにも経費が掛かるよね。自分の売り込む商品にそれらの経費が加わると値段が上がるよね。けど、王国鉄道はどうかな。鉄道の貨物列車に乗せれば自分で列車を所有するより遥かに安い値段で運んでくれるんだ。その分商品の値段を安くしたり、他の事業に投入することが出来る」
一方、帝国鉄道は上下分離方式であり、自前で機関車や貨車を用意する必要があった。
言わば街道の延長で、帝国が街道を作って、そこを人が歩いたり、商人が馬車を走らせる。その程度で良いと考えられていた。
「手軽さ、便利さが違うんだ。こっちの方に人も物も集まるよ。というより、この程度の事に気が付いて欲しいよ」
「まったく、アホですね」
「こちらからシェアを奪うと言っているんだから、本当に奪って欲しいよ」
セバスチャンはからかうように昭弥は本気で皇帝を非難した。
「どういう事なのだ!」
報告を受けた皇帝は激昂した。
「王国鉄道からシェアを奪えてないではないか!」
「は、はい」
詰問された担当者は、恐る恐る話した。
「機関車と貨車を所有するのはどうしても大商人以外では難しいようで、利用しようという所が少ないので」
「貧乏人達から金が取れるのか」
「ですが、行商人や中規模小規模の商店は多く居ます。大商人ほどでなくともそれなりの資産を持っておりますし、彼らが多く利用すればそれだけ収入が増えます」
「ふん、おもねりおって……。ならば我々も直接運用すれば良いでは無いか」
「し、しかし帝国鉄道では列車を運用したことなど無く」
「機関車と貨車と客車を用意して繋げて走らせるだけであろう。兎に角用意して走らせろ!」
「は、ははああああっ」
報告を聞いた皇帝は担当者を詰問した。
帝国鉄道の利用者に王国鉄道から移ってくる利用者が殆どいない。
「は、はい。どうしても単線ですと通せる列車の数に限りが。複線である王国鉄道と比べて著しく少ない本数しか走らせる事しか出来ません」
帝国鉄道は基本単線で、一日ごとに上りと下りが入れ替わる事になっている。
そのため輸送出来る量が単純計算で複線の半分程度しかない。
「ならば複線にすれば良いでは無いか」
「は、はい。只今工事をしております」
「突貫工事でやれ! 一月以内に完成させろ。金はいくら掛かっても構わぬ。ありとあらゆる場所から資材を集め完成させろ!」
「はいっっっっ」
皇帝の強い指示に担当者は謁見の間から飛び出ていった。
「何としても奪い取らなければ」
フロリアヌスが強く執着するのは、オスティアからセント・ベルナルドへのコースは香辛料を得るために使われる主要ルートであり、ルテティア王国の富の源泉であるからだ。
このルートを通じて香辛料が行かないようにすれば近いうちにルテティアは財政難となり、崩壊するだろう。
あとは帝国が接収し直轄地にしてしまう。そして、ユリアを自分の支配下に置こうと考えていた。
だからこそ、帝国オスティア線の成功が不可欠だった。
一月後、帝国オスティア線の複線化が完成した。
これで毎日上下に列車を走らせることが出来、計算上では二倍の本数を走らせる事が出来る。
「これで王国鉄道のシェアを奪ってやる」
皇帝は報告を聞いて自信満々に呟いた。
一週間後、王国鉄道の社長室でセバスチャンが、現状を伝えた。
「現在、王国鉄道から帝国鉄道へ利用を変更した方は僅かです。以上、報告を終わります。けど、どうして増えないんですか?」
「馬車と蒸気機関とが混在しているかからね」
帝国鉄道は馬が引く馬車鉄道と蒸気機関車の混在している。
そのため速度の遅い馬車鉄道が先を走っていると、後続はより早い速度を出せる機関車でも馬車に合わせる必要があった。
「王国鉄道は高速運転を目的としていたからね。都市部以外で馬車鉄道を利用する気は無いよ」
一方、王国鉄道の方ははじめから蒸気機関車のみで馬車鉄道は少なくとも幹線路線で走らせてはいなかった。スピードの異なる列車が、輸送力の低下をもたらすことを昭弥は知っていたからだ。
「他にも原因があるけど、理解出来るかな」
「どうしてなのだ!」
報告を受けた皇帝は再び担当者を詰問した。
「はい、蒸気機関車と馬車が混在しているため、どうしても馬の速度に合わせなければならないので」
「ならば機関車のみに限定すれば良かろう」
「しかし、馬車鉄道の利用者も多く。利用禁止とするのは問題が」
「王国の連中は機関車のみで十分利益を上げているでは無いか。機関車のみにしろ」
皇帝の命令により直ちに布告がなされ、オスティア線の利用は蒸気機関車のみとなった。
確かに速度は上がったが、利用者は微増だった。
「以上、報告を終わります」
定例となってきた帝国鉄道の現状報告をセバスチャンは行った。
「どうして利用者が増えないんですか?」
「使えるのがマラーター商人ぐらいだからだよ」
昭弥はセバスチャンに説明した。
「蒸気機関車は高いからね。それを所有して運用するにはよほどの大金持ちしか無理だ。そんな金があって使いたがるのは、マラーターの商人ぐらいだよ」
「王国の商人が使うのでは?」
「ウチ、王国鉄道があるのに使う訳がないよ」
「どうしてですか?」
「簡単に言うと購入すると経費になるよね。あと運転するにも経費が掛かるよね。自分の売り込む商品にそれらの経費が加わると値段が上がるよね。けど、王国鉄道はどうかな。鉄道の貨物列車に乗せれば自分で列車を所有するより遥かに安い値段で運んでくれるんだ。その分商品の値段を安くしたり、他の事業に投入することが出来る」
一方、帝国鉄道は上下分離方式であり、自前で機関車や貨車を用意する必要があった。
言わば街道の延長で、帝国が街道を作って、そこを人が歩いたり、商人が馬車を走らせる。その程度で良いと考えられていた。
「手軽さ、便利さが違うんだ。こっちの方に人も物も集まるよ。というより、この程度の事に気が付いて欲しいよ」
「まったく、アホですね」
「こちらからシェアを奪うと言っているんだから、本当に奪って欲しいよ」
セバスチャンはからかうように昭弥は本気で皇帝を非難した。
「どういう事なのだ!」
報告を受けた皇帝は激昂した。
「王国鉄道からシェアを奪えてないではないか!」
「は、はい」
詰問された担当者は、恐る恐る話した。
「機関車と貨車を所有するのはどうしても大商人以外では難しいようで、利用しようという所が少ないので」
「貧乏人達から金が取れるのか」
「ですが、行商人や中規模小規模の商店は多く居ます。大商人ほどでなくともそれなりの資産を持っておりますし、彼らが多く利用すればそれだけ収入が増えます」
「ふん、おもねりおって……。ならば我々も直接運用すれば良いでは無いか」
「し、しかし帝国鉄道では列車を運用したことなど無く」
「機関車と貨車と客車を用意して繋げて走らせるだけであろう。兎に角用意して走らせろ!」
「は、ははああああっ」
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