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不思議な冬休み
しおりを挟む冬休みに入ると、美咲はまた健太を呼び出した。場所はいつもの神社。冷たい冬の風が吹き、二人の頬を赤く染めていた。
「健太、冬休みの間だけまた体を入れ替わらない?」
突然の提案に、健太は眉をひそめた。
「またかよ! この前も大変だったのに、なんでわざわざ入れ替わるんだよ。」
「だって、冬休みって特別じゃん! お正月もあるし、せっかくだから普段できないことを体を入れ替えてやりたいんだよ。」
美咲の目は輝いていて、その勢いに健太はまたしても押し切られる形になった。
「はあ…お前、本当に思いつきだけで言ってないか?」
「大丈夫大丈夫! 絶対楽しいから!」
美咲は笑顔を見せると、健太の手を引いて神社の社の前に立った。
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### お正月の準備
入れ替わりが成功すると、健太(美咲)は美咲の家に連れて行かれた。そこには、美咲の母親が準備していたという立派な晴れ着が用意されていた。
「じゃーん! 健太にはこれを着てもらいます!」
美咲(健太)は晴れ着を指差しながら言った。
「え、これ俺が着るのか!? いや、絶対無理だろ…」
健太(美咲)は真っ赤な顔をして拒否しようとしたが、美咲(健太)は容赦なく服を差し出した。
「大丈夫、私の体なら絶対似合うって! それに、晴れ着なんて滅多に着られないんだから、いい経験になるでしょ?」
仕方なく健太(美咲)は晴れ着に着替えることになった。慣れない帯や重たい着物に四苦八苦しながらも、美咲(健太)の手伝いを受け、なんとか着付けが完成した。
「ほら、鏡見てみてよ!」
美咲(健太)が鏡を差し出すと、そこには凛とした晴れ着姿の自分――いや、美咲の体が映っていた。
「……本当に、似合ってるな。」
健太(美咲)は照れ臭そうにしながら呟いた。
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### 初詣
お正月当日、健太(美咲)は晴れ着を着て、美咲(健太)と一緒に初詣に出かけた。神社には大勢の参拝客が訪れており、二人は人混みの中を進んだ。
「健太、足元気をつけてね! 晴れ着だと動きづらいから。」
「分かってるけど、これ本当に歩きにくいな…」
健太(美咲)は普段慣れていない服装に戸惑いながらも、ふと周囲の視線を感じた。晴れ着姿の自分が注目を集めていることに気づき、ますます落ち着かなくなった。
「なんか、すごい見られてる気がするんだけど…」
「そりゃそうでしょ。美咲の体にその晴れ着、めちゃくちゃ似合ってるもん!」
美咲(健太)はにやにやしながら言った。
神社で二人はお賽銭を入れ、それぞれ手を合わせた。健太(美咲)は心の中で静かに願った。
(こんな変なことばっかり起きるけど、来年も平和でありますように…)
一方、美咲(健太)は目を閉じながらニヤリと笑った。
(来年も健太を巻き込んで、もっと楽しいことをいっぱいやろうっと!)
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### 屋台でのひととき
参拝を終えた後、二人は屋台を見て回った。焼きそばやたこ焼き、綿菓子など、どれも美味しそうなものばかりだ。
「晴れ着でも食べやすいものにしようよ。」
美咲(健太)はたい焼きを選び、健太(美咲)にも渡した。
「こういうの、たまにはいいよな。」
健太(美咲)はたい焼きをかじりながら、冬の冷たい空気に温かい甘さが染み渡るのを感じた。
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### 元に戻る夜
冬休みが終わる前夜、二人はまた神社を訪れ、元の体に戻るお願いをした。
「なあ、正直な話、どうだった?」
元に戻った健太が聞くと、美咲は笑顔で答えた。
「楽しかった! 健太の晴れ着姿、最高だったよ!」
「俺はもう当分入れ替わりたくないけどな…」
健太はうんざりしたように言ったが、どこか楽しそうでもあった。
こうしてまた、二人の不思議で特別な冬休みが幕を閉じたのだった。
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