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街に出る二人
しおりを挟む「よし、準備完了!」
拓也になった沙織が鏡の前でガッツポーズをして言った。
「……本当に大丈夫なのか?」
沙織の姿をした拓也は、まだ違和感が抜けないのか、少し落ち着かない様子だった。
「大丈夫、大丈夫! せっかく入れ替わったんだから、ちゃんと私が拓也になりきってみせるわ! だから、拓也もちゃんと私になりきってね!」
「……まあ、やるしかないか」
拓也はため息をつきながらも、覚悟を決めたようにうなずいた。
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二人は家を出て、いつも通りの街へ向かった。
拓也になった沙織は、大股で堂々と歩きながら「よし、男らしく振る舞うぞ!」と意気込んでいた。一方、沙織になった拓也は、いつものように歩こうとしたが、ヒールの靴に慣れず、ぎこちない足取りになっていた。
「ちょっと、歩き方がぎこちないわよ!」
「そりゃそうだろ! 俺、ヒールなんか履いたことないんだから!」
沙織が少し笑いながら、「私が履き慣れた靴を貸せばよかったかもね」と言うと、拓也は「そうだよ、お前のスニーカー履けばよかったんだよ!」と真面目に返した。
「……あ! 確かに!」
「気づくの遅い!」
二人は顔を見合わせて笑った。
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街に出ると、沙織(拓也)は普段の拓也のように堂々とした態度で歩いていたが、拓也(沙織)はどうしても女性らしいしぐさがぎこちなくなってしまう。
「……どうしても、手をポケットに入れたくなる……」
「ダメ! 女の子がそんな格好しちゃダメ!」
「そう言うけど、腕を組んで歩くのってなんか落ち着かないんだよな……」
「じゃあ、こうすれば?」
沙織(拓也)はニコッと笑いながら、拓也(沙織)の腕をそっと組んだ。
「お、おい!?」
「こうすれば女の子らしいでしょ? カップルっぽいし!」
「いや、まあ……そうだけど……」
拓也(沙織)は顔を赤くしながらも、沙織(拓也)の腕を借りる形で歩き始めた。
「ふふ、なんか新鮮で楽しいね!」
「俺は複雑な気分だけどな……」
そんな風にお互いをからかいながら、二人は街を歩き続けた——。
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