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夏妃でプールデビュー
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翔太は、水着を身に着けたまま更衣室の中を落ち着きなく歩き回っていた。どうしてこんな状況に陥ったのか、頭の中で必死に考えてみるが、何の手がかりもない。ただ気づいたら、夏妃の体に入れ替わっていた。こんなことはありえない。けれど、現実に自分の目の前で起きている。
「こんな姿で…プールに行くなんて、無理だ!」
鏡の前で改めて自分の姿を見つめる。細く引き締まった夏妃の体は、女子用の競泳水着にぴったり収まっていた。男子とは違うカーブを描く腰や、露出した肩や背中が、さらに翔太の気持ちを混乱させる。「これが…今の俺なのか?」と信じられない思いで、鏡を何度も確認した。
「でも、行かないわけにはいかない…か。」
今日は水泳部の練習日。夏妃はキャプテンだから、彼女が姿を見せないとみんなが不審に思うだろう。それに、部員たちが彼女に期待しているのはわかっていた。翔太は自分の体に戻りたい一心だったが、まずはこの場をやり過ごすしかなかった。
「くそ…やるしかないのか…!」
そう言いながら、翔太はドアをゆっくりと開け、更衣室を出た。プールの方から聞こえる水音と、女子たちの笑い声が耳に飛び込んでくる。視線を下に向け、心臓が早鐘を打つ中、プールサイドへと足を進めた。
「夏妃、遅いじゃん!準備運動はもう始めてるよ!」
元気な声が翔太を呼び止めた。顔を上げると、同じ水泳部の女子たちが夏妃に向かって手を振っている。翔太はなんとか笑顔を作ろうとしたが、うまくいかない。胸の内で鼓動が響くたびに、冷や汗がにじむ。
「ご、ごめん。ちょっと…時間かかっちゃって。」
何とか声を振り絞ると、意外にも自分が聞いたことのない、夏妃の澄んだ声が口をついて出てきた。これには、翔太自身が驚いた。彼女の声で話している自分に違和感がありすぎて、どうにも慣れそうにない。
「全然いいよ!早く準備運動しよう!」
他の部員たちが笑顔で誘ってくる。仕方なく、翔太は彼女たちの輪に入ることにした。準備運動は普段通りだ。ストレッチをして、腕を回し、ジャンプをする――ただし、すべてが普段の自分とは違う感覚で行われる。夏妃の体は柔らかく、しなやかで、動きが滑らかすぎて、自分が操っている感じがしなかった。
「これ、やっぱり変だよな…」
体の違和感に戸惑いながらも、どうにか準備運動を終え、いよいよ泳ぐ時間がやってきた。プールの水面が、キラキラと輝いている。翔太はその冷たそうな水を見つめながら、深く息を吸い込んだ。どう泳げばいいのか、夏妃の体ならどれくらいの力を入れればいいのか、全くわからない。
「大丈夫、大丈夫、ただの水泳だ。何度もやったことがあるんだから…」
自分に言い聞かせるようにして、翔太はプールの縁に立ち、指先で水を軽く触れた。予想以上に冷たく、肌に感じる感覚が敏感で、思わず震えが走る。
「行くよ、夏妃!」
その声に押されるように、翔太はついにプールへと飛び込んだ。
水中に潜る瞬間、翔太は一瞬の浮遊感を感じた。水が全身を包み込み、普段とは違う、より繊細な感覚が全身に広がっていく。だが、それは悪くない感覚だった。夏妃の体は水の中で驚くほど軽く、自由に動ける。
「すごい…この体、めちゃくちゃ泳ぎやすい…!」
翔太は驚きと共に、自分がまるで水と一体化したかのようにスムーズに進む感覚を味わった。どんどんリズムをつかんでいき、息継ぎもうまくできる。水泳の技術はそのまま自分のもののように感じられるが、それでも何かが違う。
「これが…夏妃の力か…?」
翔太は水中で自分の腕を見つめ、驚きを感じた。そして、次第に泳ぐことそのものに集中していく。女子水泳部の一員として、ただただ目の前の水を切り裂いて進むだけだった。
だが、翔太の心の奥には、次に控える更なる試練――プールから上がった後の視線や言葉、そして自分の体の異変に、再び直面しなければならないという不安が、静かに渦巻いていた。
「こんな姿で…プールに行くなんて、無理だ!」
鏡の前で改めて自分の姿を見つめる。細く引き締まった夏妃の体は、女子用の競泳水着にぴったり収まっていた。男子とは違うカーブを描く腰や、露出した肩や背中が、さらに翔太の気持ちを混乱させる。「これが…今の俺なのか?」と信じられない思いで、鏡を何度も確認した。
「でも、行かないわけにはいかない…か。」
今日は水泳部の練習日。夏妃はキャプテンだから、彼女が姿を見せないとみんなが不審に思うだろう。それに、部員たちが彼女に期待しているのはわかっていた。翔太は自分の体に戻りたい一心だったが、まずはこの場をやり過ごすしかなかった。
「くそ…やるしかないのか…!」
そう言いながら、翔太はドアをゆっくりと開け、更衣室を出た。プールの方から聞こえる水音と、女子たちの笑い声が耳に飛び込んでくる。視線を下に向け、心臓が早鐘を打つ中、プールサイドへと足を進めた。
「夏妃、遅いじゃん!準備運動はもう始めてるよ!」
元気な声が翔太を呼び止めた。顔を上げると、同じ水泳部の女子たちが夏妃に向かって手を振っている。翔太はなんとか笑顔を作ろうとしたが、うまくいかない。胸の内で鼓動が響くたびに、冷や汗がにじむ。
「ご、ごめん。ちょっと…時間かかっちゃって。」
何とか声を振り絞ると、意外にも自分が聞いたことのない、夏妃の澄んだ声が口をついて出てきた。これには、翔太自身が驚いた。彼女の声で話している自分に違和感がありすぎて、どうにも慣れそうにない。
「全然いいよ!早く準備運動しよう!」
他の部員たちが笑顔で誘ってくる。仕方なく、翔太は彼女たちの輪に入ることにした。準備運動は普段通りだ。ストレッチをして、腕を回し、ジャンプをする――ただし、すべてが普段の自分とは違う感覚で行われる。夏妃の体は柔らかく、しなやかで、動きが滑らかすぎて、自分が操っている感じがしなかった。
「これ、やっぱり変だよな…」
体の違和感に戸惑いながらも、どうにか準備運動を終え、いよいよ泳ぐ時間がやってきた。プールの水面が、キラキラと輝いている。翔太はその冷たそうな水を見つめながら、深く息を吸い込んだ。どう泳げばいいのか、夏妃の体ならどれくらいの力を入れればいいのか、全くわからない。
「大丈夫、大丈夫、ただの水泳だ。何度もやったことがあるんだから…」
自分に言い聞かせるようにして、翔太はプールの縁に立ち、指先で水を軽く触れた。予想以上に冷たく、肌に感じる感覚が敏感で、思わず震えが走る。
「行くよ、夏妃!」
その声に押されるように、翔太はついにプールへと飛び込んだ。
水中に潜る瞬間、翔太は一瞬の浮遊感を感じた。水が全身を包み込み、普段とは違う、より繊細な感覚が全身に広がっていく。だが、それは悪くない感覚だった。夏妃の体は水の中で驚くほど軽く、自由に動ける。
「すごい…この体、めちゃくちゃ泳ぎやすい…!」
翔太は驚きと共に、自分がまるで水と一体化したかのようにスムーズに進む感覚を味わった。どんどんリズムをつかんでいき、息継ぎもうまくできる。水泳の技術はそのまま自分のもののように感じられるが、それでも何かが違う。
「これが…夏妃の力か…?」
翔太は水中で自分の腕を見つめ、驚きを感じた。そして、次第に泳ぐことそのものに集中していく。女子水泳部の一員として、ただただ目の前の水を切り裂いて進むだけだった。
だが、翔太の心の奥には、次に控える更なる試練――プールから上がった後の視線や言葉、そして自分の体の異変に、再び直面しなければならないという不安が、静かに渦巻いていた。
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