ボディスワップ

廣瀬純七

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夫の妊娠



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「そろそろ赤ちゃんがほしいね。」夕食後、リビングでくつろいでいた陽介は、妻の美奈子にそう言った。結婚して3年が経ち、二人は本格的に妊活を始めたばかりだった。二人とも子どもが欲しいという思いは強く、妊活には前向きだったが、まだ結果は出ていなかった。

「うん、でも焦らずに行こうね。」美奈子は微笑んで答えたが、内心では少し焦りを感じていた。周囲の友人たちが次々と妊娠・出産していく中で、自分たちだけが取り残されているような気がしていたのだ。

そんなある日、二人は地元の温泉に行くことにした。自然に囲まれたこの温泉は、心身をリフレッシュするにはぴったりの場所だった。温泉宿にチェックインし、部屋に荷物を置くと、早速二人は露天風呂へと向かった。

「この温泉、すごくいい効能があるらしいよ。特に夫婦に幸運をもたらすとか。」美奈子が言うと、陽介は半信半疑ながらも楽しそうに笑った。

「じゃあ、何か良いことが起きるかもな。」

二人は湯船に浸かり、リラックスした時間を過ごしていた。温かい湯が体を包み込み、日々の疲れが解けていくようだった。しばらくして、陽介がふと感じたのは、体の下半身に奇妙な違和感だった。

「ん?何か変な感じがするな…」

「え?どうしたの?」美奈子も自分の体に少しの違和感を覚えた。

「いや、なんか…下半身が変な感じなんだ。お前はどう?」

「私も…ちょっと…」

二人は顔を見合わせたが、その瞬間、お互いの視線は下半身に注がれた。そして驚愕の表情が浮かんだ。

「えっ!?これ…俺のじゃない!」

「私も…嘘でしょ!?」

なんと、二人の下半身だけが入れ替わっていたのだ。陽介の上半身には美奈子の女性の下半身が、そして美奈子の上半身には陽介の男性の下半身が繋がっていた。

「どうなってるんだ、これ…!」陽介はパニック状態に陥り、湯から飛び出そうとしたが、美奈子が必死に彼を落ち着かせた。

「待って、冷静になって!一体何が起きたのか分からないけど、きっと何かの効果かもしれないわ。」

「効果って…こんなの普通じゃないだろ!」

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それから、二人は急いで宿のスタッフに助けを求めたが、誰もその現象の説明ができる者はいなかった。途方に暮れながらも、元に戻る方法が見つからないまま、二人はその夜を過ごすことになった。

「なんか、不思議な感じだよな…お前の下半身がここにあるなんて。」陽介はベッドの上で、自分の新しい体に戸惑いを隠せなかった。一方の美奈子も、自分の下半身が無くなったかのような感覚に混乱していた。

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時間が経つにつれ、二人は新しい体に慣れていったが、数週間後、さらに驚くべき出来事が起きた。陽介が、突然吐き気を感じ、体調がすぐれない日が続いたのだ。

「最近、調子が悪いんだよな…食べ物の匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなるし。」

「まさか…」美奈子は陽介の症状に何かピンと来るものがあった。彼女はすぐに妊娠検査薬を買ってきた。

「ちょっと試してみて…」

陽介は戸惑いながらも、妊娠検査薬を使用した。結果は――陽性。

「嘘だろ…俺が妊娠してるのか…?」

二人は驚きながらも、現実を受け入れるしかなかった。陽介の体、正確には美奈子の下半身が彼の体に宿っている今、陽介が妊娠したのだ。

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それからの生活は、全く予想外のものとなった。陽介は妊娠生活を送ることになり、徐々にお腹が大きくなっていく様子に戸惑いつつも、新しい命の成長を感じることに喜びを見出していた。

「お腹がどんどん大きくなっていく…これ、俺が本当に産むのか?」

「そうよ。私も手伝うから、安心してね。」美奈子はサポート役に徹し、食事管理や体調を気遣いながら、妊娠生活をサポートした。二人は不思議な状況にありながらも、協力し合いながら前向きに過ごしていった。

妊娠後期になると、陽介はお腹が重くなり、動くのが大変になった。美奈子は「私の体でごめんね」と申し訳なさそうに言ったが、陽介は「いや、こんな経験は普通じゃできないし、何だか不思議だけど幸せだよ」と微笑んでいた。

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そしてついに、出産の日が訪れた。

「大丈夫、深呼吸して!」美奈子は隣で陽介を励ました。陣痛の痛みと戦いながら、陽介は必死にいきんだ。

「うあああ…こんな痛みがあるなんて…!」

「もう少しよ、頑張って!」美奈子が必死に声をかける中、医師たちがサポートし、赤ちゃんの泣き声が部屋中に響いた。

「生まれた…!」陽介は息を切らしながら赤ちゃんを見つめ、涙を浮かべた。

「可愛いね…」美奈子も目に涙を浮かべ、二人は赤ちゃんを抱きしめた。

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その後、二人の体は再び温泉に浸かることで元に戻った。陽介は男性の体に、美奈子は女性の体に戻ったが、二人が経験した不思議な出来事は一生忘れられないものとなった。

「なんだか不思議だったけど、俺たちにとっては最高の奇跡だったな。」

「うん、私たちで命を迎えられて本当に幸せ。」

新しい家族と共に、二人はこれからの未来に向かって歩み出した。

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### 終
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