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昼休み
しおりを挟む昼休み。
会社の屋上にあるベンチに腰を下ろし、隆司の姿の美咲はスマホを開いた。
画面には午前中の会議中に交わした大量のLINEメッセージがずらりと並んでいる。
「……うわぁ、こうして見るとほんと必死だったな、私」
自分が連打したメッセージの数々――
> SPAって何!? 温泉じゃないよね!?
> 冗長化って冗談が長いこと!?
改めて目にすると顔から火が出そうだ。思わず頭を抱えていると、スマホが震えた。
画面には美咲の姿をした隆司からの着信。すぐに通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『おい美咲! なんだよこのメッセージの嵐! 会議中に笑い堪えるのどれだけ大変だったと思ってるんだ!』
「ちょっと! 私だって必死だったのよ! あんな暗号みたいな単語ばっかり飛び交って!」
『“冗長化=冗談が長い”ってなんだよ! 場所によっちゃ吹き出すぞ!』
「だって本当にそう聞こえたんだもの!」
二人は同時にため息をつき、次の瞬間、吹き出して笑った。
『でもさ……こうやってLINEでやり取りしてると、なんか高校時代にノート回してたみたいだよな』
「ふふっ、確かに。私たち、授業中もよくこそこそお喋りしてたもんね」
スマホ越しに聞こえる隆司の笑い声は、見た目は自分の声なのに、今は妙に頼もしく感じられた。
「ねえ、隆司……もし私が間違ったこと言っちゃったら、ちゃんとフォローしてね?」
『もちろん。逆にそっちはちゃんと“美咲”を演じてくれよな。俺も学校のママ友にバレないように頑張ってるんだから』
「ママ友の方が絶対ハードル高いわよ!」
『会議で“冗談が長いこと?”って言い出すよりはマシだ!』
「むぅ~~!」
昼休みの空に二人の笑い声が重なった。
入れ替わった不便さも、こうして分かち合えばなんだか楽しく思えてくる。
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