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彼女の体
しおりを挟む光が収まり、意識が戻ったとき、俺はまったく別の感覚に包まれていた。
手を見下ろすと、小さくて華奢な指。体に意識を向けると、驚くほど軽く、柔らかい感覚。視界に入るのは、先ほどまで目の前に座っていた彼女が着ていた服――つまり、俺の新しい体だ。
「これが…彼女の体?」
驚きと戸惑いの声が出る。いや、聞こえる声も自分のものじゃない。高くて少し甘い響きの声。
その瞬間、目の前の鏡に映る自分――いや、彼女の顔に、思わず息をのんだ。
一方で、反対側にいる「俺」は――俺の元の体――が大きなため息をついていた。
「うわ…本当に入れ替わったんだ。」
低くて少しこもった声が、かつての自分から発せられるのを聞いて、複雑な感情が胸をよぎった。
「すごい、これ、本当にリアルだね。」
彼女が俺の体を動かしているのを見ると、不思議と滑稽で笑えてくる。俺の動きがこんなふうに他人に見えるのか、と少し恥ずかしくなる。
「えっと…まず自己紹介から始めようか?」
俺は気まずさを隠すように彼女に問いかけた。
「そうだね。私は優花、普段はこんな遊びをするタイプじゃないけど、ちょっと興味があって申し込んでみたの。」
優花――そう名乗った彼女は俺の体で肩をすくめて見せた。
「俺は直人。こっちは俺も同じだよ。こういう体験ってどんなもんかって、好奇心でさ。」
しばらくはお互いの身体の感覚に慣れる時間だった。手を動かしてみたり、歩いてみたり。俺が彼女の細い足でよろけると、優花は俺の体で笑いをこらえきれなかった。
「ちょっと、バランス悪すぎない?」
「仕方ないだろ!こんな華奢な体で動いたことないんだから。」
笑い声が響く中、二人の緊張も少しずつ解けていった。
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「じゃあ、どうする?せっかく入れ替わったんだし、何かやってみたいこととかない?」
優花が俺の声で提案してきた。
「やってみたいこと…?」
少し考えたが、せっかく異性の体を体験しているのだから、普段ではあり得ないことを試してみたくなった。
「じゃあ、女性の買い物とか体験してみたいかも。」
優花は少し驚いた顔をしたが、「面白そうだね!」と笑った。
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その後、二人は街に出て、男女の体を入れ替えたまま様々な体験をしていく。普段なら気にしないようなこと――異性の視線、服のフィット感、靴の履き心地――がすべて新鮮に感じられる。そしてその中で、お互いの生活や価値観への理解が深まっていく。
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