夫の妊娠

廣瀬純七

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再出発

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ついに待ち望んだ日が訪れ、浩太(由香の体)は赤ちゃんを無事に出産した。長い妊娠期間、そして出産の大仕事を終えた後、二人は本来の自分の体に戻れると思い、安堵の表情を浮かべていた。前の出産の経験からして「これで元通りだ」と信じていたのだ。

しかし、数日が過ぎても、浩太と由香の体は元に戻る気配がなかった。

「…もしかして、もう元に戻れないのかな?」と、病室のベッドに座りながら不安げに呟いたのは、妻の体に入ったままの浩太だった。

「うーん…でも今回はもう赤ちゃんも生まれたし、元に戻るはずだと思ってたんだけど…」と、夫の体に入ったままの由香が言いながらため息をつく。二人は医師に相談しても「どうにも説明がつかない現象」と言われるばかりで、確かな答えを得ることができなかった。

そのまま数週間が経ち、入れ替わったままの生活がさらに続く中で、二人は少しずつ「もう、このままの姿で生きていくしかないのかもしれない」と受け入れざるを得なくなっていった。

ある日の夜、赤ちゃんをあやしながら、浩太(由香の体)がふと笑顔でこう言った。

「考えてみると、最初は戸惑いばかりだったけど、だんだんこの体にも慣れてきたよな。赤ちゃんも一緒にいるし、由香の体で父親になるのも悪くないかも」

「私もよ。浩太の体で赤ちゃんを抱っこすると、何だかすごく安心感がある。父親になった気分も、悪くないかもね」由香(浩太の体)は赤ちゃんを抱きしめながら微笑み、二人の顔には覚悟と落ち着きがにじんでいた。

そうして、互いに入れ替わったままで新たな人生を歩むことを決めた二人は、それぞれの新しい役割を受け入れていった。浩太は母親としての育児に奮闘し、由香は父親として家族を支える役割を担うようになった。そして、どちらかが少し疲れたときは、いつでも支え合うようにして日々の困難を乗り越えていった。

赤ちゃんが成長するにつれて、彼らは入れ替わったままの親としての役割に完全に順応し、家族としての新しい形を築き上げていった。体が入れ替わっても、絆が深まり続けているのを感じながら、これからの人生もまた一緒に歩んでいくことを心から確信したのだった。
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