兄になった妹

翔太と美咲

**登場人物:**
- **兄**：**翔太（しょうた）** – 26歳、真面目で几帳面な性格。都内の大手企業で働く社会人。
- **妹**：**美咲（みさき）** – 20歳、活発で明るい性格。都内の女子大学に通う大学生。

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ある日の朝、兄の翔太と妹の美咲は、これまでにない奇妙な出来事に直面していた。目を覚ますと、なんとお互いの体が入れ替わっていたのだ。

「え、ちょっと待って、どういうこと…？」  
美咲の声で話す翔太は鏡を見つめ、目の前に立っている自分が実際は妹だという事実に呆然としていた。

一方、翔太の体に入ってしまった美咲も同じく混乱していた。兄の落ち着いた顔つきで驚きの表情を浮かべる彼女は、半ばパニックに陥っていた。

「兄貴、これ…どうすんの？」  
美咲の声が翔太の口から出た。

「わからない…でも、今日会社行かなきゃならないし、お前は大学だろ？」  
翔太は少し冷静を取り戻し、現実に向き合おうとする。

「じゃあ、入れ替わったままお互いの日常を乗り切るしかないのか…」

こうして2人は仕方なく、お互いの生活をこなすことに決めた。

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#### **美咲（翔太の体）: 兄の会社で…**

美咲は兄のスーツを着込み、翔太の体で会社に向かった。電車の中では、まるで周りの人々が自分を「ビジネスマン」として認識していることが信じられず、ひそかにドキドキしていた。

「やばい、これは社会人のリアルか…」  
会社に到着すると、翔太の同僚たちが次々と挨拶してくる。美咲は慌てながらも「兄ならどうするか」と必死に考え、落ち着いたトーンで返事をする。

「おはようございます、翔太さん。今日の会議の資料は確認されましたか？」  
上司の声に内心は焦りながらも、冷静を装って美咲は頷いた。

「ええ、もちろんです。すぐに確認します。」

デスクに座り、兄のパソコンを開くが、何がどこにあるのか全くわからない。兄が普段どんな仕事をしているのか想像すらできない美咲は、内心パニックになりながらも、周りに気づかれないよう努力する。

昼休みには、同僚たちに誘われてランチへ行くことに。緊張しながらも、兄の同僚たちと自然に会話を合わせる美咲だが、ふとした瞬間に「かわいい子いるな…」などと考えそうになる自分に気づき、慌てて意識を戻した。

「兄貴の体でそんなこと考えちゃダメだってば！」と心の中で自分を叱りながら、無事に会社の一日を乗り切ることができた。

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#### **翔太（美咲の体）: 妹の大学で…**

一方、翔太は美咲の体で彼女の大学に向かった。妹のカジュアルな服装に身を包み、長い髪をまとめながら、女子大学に足を踏み入れる。

「まさか、俺が妹の友達と会うことになるとは…」  
翔太は緊張しつつ、友達に会ったときに妹らしく振る舞わなければならないプレッシャーを感じていた。

キャンパスに入ると、美咲の友人たちが集まってきた。  
「美咲～、おはよ！昨日の課題終わった？」  
「あ、ああ、うん…多分…」  
翔太はぎこちなく返答し、なんとかごまかそうとする。美咲の友達たちは気づく様子もなく、次々と会話を進める。

授業中、翔太は美咲のノートを開いたものの、内容がさっぱりわからなかった。さらに、周りの女子たちが話している内容や雰囲気に圧倒され、完全に浮いている感覚を味わう。翔太は心の中で「俺の妹、こんな大変なことやってたのか…」と感心しながら、なんとか乗り切ろうとする。

しかし、昼休みに美咲の友達から「一緒にカフェ行こうよ！」と誘われたときが、彼にとって最大の試練だった。

「え、カフェ？」  
女子同士の会話にまったく慣れていない翔太は、カフェでのトークにどう参加すればいいのか皆目見当がつかない。しかも、友達たちが次々と恋愛話やファッションの話題を持ち出すたびに、どう対応すればいいか悩んでしまう。

「そういえば、昨日のイケメンいたじゃん！美咲も目をつけてたよね？」  
友達に突然そんなことを言われ、翔太は驚いて咳き込んだ。どう答えればいいのか焦りながら、何とか話題をそらそうと必死になる。

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### **再会と気づき**

その日の夜、2人は帰宅後にようやく再会した。お互いの体で過ごした1日の出来事を報告し合いながら、思わず大笑いしてしまった。

「会社、めちゃくちゃ大変だったんだけど！兄貴ってこんなこと毎日やってるの？！」  
美咲は疲れ切った様子でソファに倒れ込む。

「お前の大学もすごいぞ…女子たちの会話についていくのがこんなに難しいとは思わなかった…」  
翔太もため息をつきながら椅子に座り込む。

こうしてお互いの立場に立ったことで、2人はそれぞれの生活や苦労を初めて理解することができた。そして、何よりも「自分にしかできない役割」があることに気づかされた。

「早く元に戻りたいけど…ちょっとだけ、面白かったかもな。」  
翔太がそう言うと、美咲も笑いながら頷いた。

「うん、でも二度とこんなことは勘弁してほしいけどね！」

その夜、2人は再び元の体に戻ることを心から願った。

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### 終わり