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リアルなバーチャルな世界
しおりを挟む次のデートを明日に控えた夜、結衣は寮のお風呂に入っていた。
湯船に浸かりながら、明日の水族館デートのことを考える。健一とどんな話をするのか、どんな景色を見るのか――そんなことを思うだけで、少し胸が高鳴っていた。
そのとき、浴場の入り口から親しげな声が聞こえた。
「結衣~、また一緒になったわね!」
「玲奈先輩!」
玲奈が湯船にゆっくりと浸かる。
「明日、デートでしょ? ちゃんと準備はできた?」
「う、うん……多分。」
「ふふっ、なんだかもうすっかり女の子の会話ね。」
玲奈はからかうように笑いながら、結衣の肩を軽く叩いた。
「でもね、結衣。ひとつ大事なことを言っておかないと。」
「え?」
玲奈の表情が少し真剣になった。
「このバーチャルの世界って、リアルとほぼ同じように作られているでしょ?」
「うん……それはもう実感してるよ。」
「だからね、リアルと同じように妊娠もするのよ。」
「……えっ?」
一瞬、結衣の思考が止まった。
「バーチャルの世界なのに……妊娠?」
「そう。もちろん、システム上のことだからリアルで影響があるわけじゃないけど、バーチャルの世界の自分としてはちゃんと妊娠のプロセスを体験することになるのよ。」
「そ、そんな……。」
心臓がバクバクと鳴るのを感じた。
バーチャルの世界に来てから、自分の体がリアルと変わらないことは何度も実感してきた。でも、妊娠まで再現されるなんて考えもしなかった。
「安心して。普通に過ごしていれば、そんな簡単に妊娠することはないわよ?」
「そ、そうですよね……?」
「でも、結衣ももう女の子としてここで生活してるんだから、一応気をつけてね?」
玲奈は意味深な笑みを浮かべながら、肩までお湯に沈んだ。
結衣はなんとなく落ち着かない気持ちのまま、視線を湯船の表面に落とした。
(……バーチャルなのに、こんなことまであるなんて。)
「ま、健一くんがどういう存在なのかはわからないけど、結衣がこの世界で何を選ぶのかは結衣自身が決めることよ。」
玲奈の言葉が妙に重く感じられた。
結衣は明日のデートのことを思いながら、そっと息を吐いた。
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